ワークスタイル改革

ビジネスチャットはどう進化する?

掲載日:2023/09/19

ビジネスチャットはどう進化する?

リモートワークが普及した今、必需品となったのがビジネスチャットツールである。メールや電話といった従来のコミュニケーションツールがあるにもかかわらず、それらに代わるソリューションとして定着した理由とは何か。そして今後、ビジネスチャットはどのように成長していくのか、その予測についても解説する。

コロナ禍で明らかになったビジネスチャットのメリット

株式会社矢野経済研究所が2023年3月に発表した調査によると、ビジネスチャットツールの市場規模は右肩上がりに成長しており、2022年度は前年度比22.6%増の約300億円規模への到達が予測されている。このように高成長が見込まれる背景には、コロナ禍で働き方が変化した影響が大きい。

同調査では、コロナ禍初期はテレワークの浸透とともに社内メール利用が伸びたものの、やりとりの煩雑さや即時性に欠ける点などがネックとなり、結果的にビジネスチャットへの移行が進んだと分析している。

しかし、ビジネスチャットを導入するメリットはこれだけではない。さまざまな魅力があり、導入による効果への期待は高まるばかりだ。

セキュリティの向上

ビジネスチャットの多くは、アクセスログの閲覧やIPアドレス制限などの機能を備えており、一般的なチャットツールやSNSと比較して高いセキュリティを有している。また、アドレスさえ分かれば外部から誰でも連絡できるメールとは異なり、参加メンバーを制限するなどしてクローズドな環境で運用できるため、サイバー攻撃を予防する意味でも効果が大きい。

タスクとデータの一元管理

一般的にビジネスチャットにはタスク管理機能が備わっている。チャットに登録した内容をTo Doリストやカレンダーへ反映でき、ビジネスチャット内でタスクを管理可能である。わざわざ別のアプリを開く必要がない点や、チェックの抜け漏れを防ぐという点でも利便性が高いのだ。

また、送受信したデータをビジネスチャット内のデータフォルダに記録する機能を持つものもあり、スムーズにデータを見返すことができる。ほかのアプリやPC内のフォルダにデータが分散している場合を除けば、ビジネスチャットで一元管理が可能なため非常に便利だ。

特化型ビジネスチャット活用のおすすめ

ほとんどのビジネスチャットは、テキストメッセージの送受信や音声通話などの標準的な機能を一通り備えている。大抵のコミュニケーションはこれらの機能でこなせるが、より利便性や操作感を向上させたい場合は、業種や用途に応じた「特化型」のビジネスチャットを選ぶことをおすすめしたい。

例えば、とある建設業向けビジネスチャットには、図面閲覧アプリや仕上検査支援アプリと連携可能な機能が搭載されている。これらのアプリで管理するデータが更新された場合、自動的にビジネスチャットへ通知される仕組みになっているため、大人数の従業員へタイムリーに、手間をかけず情報共有することが可能だ。施工工程の変更が行われた場合、口頭や書面でのやりとりは非常に面倒なうえ、リソースの無駄遣いである。そこで特化型のビジネスチャットを利用すれば工数を減らし、作業モチベーションの確保も期待できるのだ。

また、日本語のタイピングが難しい従業員が多く在籍している企業の場合は、操作をシンプルにして誰でも利用しやすくしたビジネスチャットの導入をおすすめしたい。例えば、とあるビジネスチャットは音声を自動認識して文字起こしする機能を備えており、テキストに限らずともコミュニケーションを補助してくれる。同ツールは利用者の顔を認識することで音声通話を自動開始する機能なども備えており、ビジネスチャットに慣れていないユーザーの利用に特化している。

ビジネスチャットはどう進化する?

コロナ禍がきっかけで市場規模が拡大したように、今後も社会情勢に応じてビジネスチャットの用途に変化があることが考えられる。果たして今後、ビジネスチャットにはどのような役割を期待するべきなのだろうか。

厚生労働省が発表した『働き方の未来2035』という報告書によると、2035年には日本での高齢化率が33.4%まで上昇すると推測されている。これに伴う労働力の減少に備えるため、多くの企業がDXへの対応を迫られるだろう。労働力不足への対応としてAIの発展が期待されている。

将来的に、ビジネスチャットにおいてAIは重要な補助機能として活用されるだろう。人間が手動でテキストを入力せずに、AIが状況を分析して自動的に報連相を行う時代が来る。既に一部のビジネスチャットにはAIが会話の情報を精査し補助する機能が搭載されている。

今すぐにコミュニケーションのほとんどをAIに代行してもらうのは困難でも、その一部を補助してもらうことは十分に有効な手段である。ぜひ、未来のビジネスチャット活用に向けた準備を進めてほしい。