IoT・AI

サービスロボット市場の拡大は何を変えるのか?

掲載日:2023/09/19

サービスロボット市場の拡大は何を変えるのか?

一世を風靡(ふうび)した人型ロボット「ペッパーくん」こと『Pepper』が登場したのが2014年。このころから、世界中のサービス業界でロボット活用が拡大し始めた。それから約10年たった現在、サービスロボットはどのように活用されているのか、また今後は我々のビジネスや生活にどのような影響をもたらすのだろうか。

サービスロボット活用の場

業務用ロボットは主に2種類に分類される。1つは、工場や製造業、建設現場などで用いられる産業ロボット、そしてもう1つがサービスロボットだ。従来、人間が行っていた作業をロボットが担うことで、人間の負担軽減や人材不足解消などの効果が期待されている。

サービスロボットで目立つのは『Pepper』のようなコミュニケーションロボットや、ファミリーレストランなどで導入が進む配膳ロボットだが、ほかにもあらゆるサービス業でロボットが活躍している。

ロボットというと人間型のものや自走するものが思い浮かぶが、厚生労働省によると、ロボットの定義は以下のようになっている。

以下3つの要素技術を有する、知能化した機械システム。
情報を感知(センサー系)
判断し(知能・制御系)
動作する(駆動系)

介護・医療

超高齢社会の到来で、介護職の不足は深刻な問題となっている。そこで、ロボットの導入は介護者の代理や支援と、高齢者の生活支援の両側面での活用が期待されている。

介護ロボットには、移乗支援のために介護者が装着するパワーアシストスーツや自動排せつ処理装置、高齢者が移動するのを支援する歩行アシストカート、認知症の高齢者の徘徊を防ぐ見守りセンサーなどがある。

同様に人手不足が叫ばれている医療機関でも、ロボットによる支援が実現している。

内視鏡手術や放射線治療などの手術を支援するロボットや注射剤を準備してトレイにセットする「払出」を行うロボット、処方薬の選択、秤量、配分、分割、分包などの調剤作業を自動で行う自動調剤ロボットなどが既に開発・使用されている。自立支援、介助支援ロボットの市場は需要が急激に膨らみ、2020年から2035年にかけて市場規模は10倍になると見込まれている。

商業施設・飲食店

大型ショッピングモールや空港ではコンシェルジュの役割を務めるコミュニケーションロボットが活躍し、遠隔操作ロボットが巡回警備を行っているほか、在庫商品を管理する場でもロボットが導入されている。さらに飲食店では自動配膳ロボットが活躍中だ。

RaaSとは?

サービス業でのロボット活用は爆発的に増大していくだろう。とはいえロボットの販売価格はまだまだ高く、大企業ならともかく中小企業や小規模団体での導入は難しい。

そこで登場したのが、ロボットを製造・販売する企業がロボットを貸し出すサブスクリプションサービス「RaaS(ロボティクス・アズ・ア・サービス)」だ。RaaSにより導入ハードルが高かったロボットがクラウドテクノロジーと連携され、必要な機能のみ最小限のコストで使用可能になった。

RaaSは、そのサービス形態から「ロボットのシェアリングエコノミー」とも呼ばれている。ロボット本体を期間ベースでリースする契約や、使用した機能や時間単位で料金を払う従量課金制のサービスなどがある。いずれの方法も導入コストがかからず、中小企業でも利用可能だ。そのためRaaS市場もまた、右肩上がりの成長を遂げるだろうと予測されている。

コロナ禍でのロボット活用

感染症などの予防策として有効だと考えられるのが人との接触を減らすことである。コロナ禍では、清掃や除菌作業を行う巡回型ロボットが活用された。地域によっては無人配送ロボットが導入され、介護・医療現場でも検温ロボットによる無人受付や自動PCR検査など、さまざまな場面でロボットの活用が広まっている。

新型コロナウイルスは再び感染拡大する可能性が残っており、さらにほかの感染症が流行する場合もある。そのような状況に直面しても今回の知見は大きく生かされることだろう。

急速に拡大する市場

株式会社富士経済のプレスリリースによると、サービスロボットの世界市場は約2兆3,447億円。この先2030年には4兆1,850億円、2022年比の178.5%にまで拡大するという予測だ(2023年2月17日時点)。

2022年に需要が大きく拡大した反動を受け、一時的に縮小するだろうという見解もあるが、その後は各業界の人材不足から再び拡大が見込まれている。医療・介護・建設・インフラ・農業・物流・搬送などの業界では特にこの傾向が顕著だ。該当の業種に対して、ロボットの導入を薦めるのが当たり前になる日はそう遠くないかもしれない。