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DX推進に必須! 「デジタルスキル標準」

掲載日:2023/09/26

DX推進に必須! 「デジタルスキル標準」

経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2022年12月に発表した「デジタルスキル標準」。生成AIの登場や進化でDXに必要な知識が変化してきていることから、2023年8月に改訂された。そこで、改めて「デジタルスキル標準」の内容を確認し、今回改訂された部分を見てみよう。

「デジタルスキル標準」とは

データやITが発達し、産業構造は大きく変わった。しかし、多くの日本企業がDXの取り組みに後れをとっている状況だ。その要因の一つには、DXやITの専門知識を持つ人材が不足していることが挙げられる。

DX推進人材のデジタルスキルを標準化するためにまとめられたのが「デジタルスキル標準」だ。これは、非ITのビジネスパーソンが身に付けるべきDXの基本的な知識をまとめた「DXリテラシー標準」と、専門性を持った人材の育成・採用の指針である「DX推進スキル標準」の2種類からなる。

「DXリテラシー標準」の概要

あらゆる業種の全ての職種・部署の人材が身に付けるべきDXの知識。一人一人がDXを自分事として捉えて変革に向けて行動できるようになることを目的とする。従来の社会人の常識に加えてDXの知識を持つことは、これからのビジネスにとって不可欠になるだろう。

「DXリテラシー標準」は、DXに参画した成果を仕事のみならず生活にも役立て、人生100年時代を生き抜くために不可欠なマインド・スタンスや知識、スキルを指す学びの指針となっている。

マインド・スタンスとは、社会が変化し続ける中で、新しい価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動を定義するものだ。また「DXリテラシー標準」のために不可欠な知識やスキルは、「Why=DXの背景」「What=DXで活用されるデータ・技術」「How=データ・技術の利活用」の3つに大別される。

「DX指針スキル標準」の概要

DXを推進する人材として、「ビジネスアーキテクト」「デザイナー」「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」の5つの人材類型が定義された。さまざまな場面で2つ以上の類型が協働すると想定され、他類型との積極的な関わりや手助けが重要とされている。

各類型で設定されている役割は以下のとおりである。

ビジネスアーキテクト

新しい事業や製品・サービスの目的を見出す「新規事業開発」、既存事業などを見直す「既存事業の高度化」、社内業務における問題解決の目的を定義し、実現する「社内業務の高度化・効率化」の3つの役割を担っている。目的実現のため関係者間の協働関係をリードする人材だ。

デザイナー

社会やユーザーの課題、行動から製品・サービスのコンセプトを作成し、継続的に実現する仕組みのデザインを行う「サービスデザイナー」、製品・サービスの機能的な外観などのデザインを行う「UX/UIデザイナー」、ブランドイメージを具現化する「グラフィックデザイナー」の3つの役割を担っている。

データサイエンティスト

事業戦略に沿うデータの活用戦略などを担う「データビジネスストラテジスト」、顧客価値を拡大するための有意義な知見を導出する「データサイエンスプロフェッショナル」、効果的なデータ分析環境の設計・実装などを実現する「データエンジニア」の3つの役割を担っている。

ソフトウェアエンジニア

クライアントサイドのインターフェイスの機能に責任をもつ「フロントエンドエンジニア」、主にサーバーサイドの機能実現に責任をもつ「バックエンドエンジニア」、ソフトウェア開発・運用環境最適化などに責任をもつ「クラウドエンジニア/SRE」、現実世界(物理領域)のデジタル化を担う「フィジカルコンピューティングエンジニア」の4つの役割を担っている。

サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティリスクを評価し、対策を行う「サイバーセキュリティマネージャー」、サイバーセキュリティリスク対策の導入・保守・運用を行う「サイバーセキュリティエンジニア」の2つの役割を担っている。

2023年8月の改訂について

生成AIの急速な普及のため、「DXリテラシー標準」に関して、必要な改訂が行われた。生成AIのツールを用いるための指示(プロンプト)の手法や、活用事例、データに関する取り扱いなどが追加されている。

デジタルスキル標準を実行するには

大手の家具・インテリア用品店は、2025年までに社員の8割に「ITパスポート」を取得させることを発表した。既存の試験や資格などを用いることは、全ての従業員がデジタルスキル標準に沿った知識を得るために有効な一つの手だろう。

また、IPAは、無料でデジタルスキルを学べるサイト「マナビDX」を運用している。
https://manabi-dx.ipa.go.jp/
このサイトを用いて、従業員に学習を促す方法も考えられる。

「DXリテラシー標準」は、あらゆる業種の企業・団体の従業員が身に付けるべきだが、「DX推進スキル標準」は企業規模や事業内容によっては対応が難しい。ベンダーはそこを補えるように、専門性の高いスタッフを育成・雇用する必要があるのではないだろうか。