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IoTの浸透がセンシング技術の役割を拡大させる?

掲載日:2023/10/10

IoTの浸透がセンシング技術の役割を拡大させる?

身の回りにある家電やIT機器には、何かしらのセンサーが搭載されていることが多い。このセンサーから定量的なデータを収集する技術「センシング」に、近年注目が集まっている。今後さらにIoTが浸透すれば、収集できる情報の量が飛躍的に増加すると考えられているからだ。そこで、センシング技術が担う役割について見ていこう。

センシングに期待される役割とは?

センサーからあらゆる情報を計測し、それを数値化する技術を「センシング」と呼ぶ。そもそもセンサーとは検知器のことであり、マイクで音声を増幅させたり、エアコンで室温を一定に保てたりするのはセンサーが機能しているからだ。

これらのセンサーから情報を収集するセンシングは次の2種類に分類できる。

「スマートセンシング」では衝撃や温度、光量などの情報を収集でき、製造や医療など、幅広い業界で活用されている。また「リモートセンシング」では人工衛星や航空機などにセンサーを搭載して情報を得ることもあり、自然災害や環境問題に関連する予測などに役立てられている。

このようにデータの収集・計測に有用なセンシング技術だが、近年はその注目度が増している。その理由として挙げられるのがIoTの浸透だ。IoTの浸透によってセンシング技術への期待が高まり、これからの社会を変える可能性を持つとされている。

国内のIoT普及状況をチェック

2021年に総務省が発表した「情報通信白書」によると、IoT機器は国内でも右肩上がりで普及している。現在主に活用されているのはスマホやPCといった通信分野であるものの、今後は医療や産業、コンシューマー(スマート家電などのIoT機器)などの分野でもさらなる普及が予想される。数年後、IoTは我々の生活において当たり前の存在として溶け込んでいることだろう。

多くのIoT機器は、センシングによって計測した情報をネットワークで共有する機能を有している。この情報は外部からのモニタリングはもちろん、長期的な蓄積による分析も可能だ。各家庭あるいは各事業所にIoT機器を設置することで、収集できるビッグデータの量は以前に比べ飛躍的に増加し、分析結果の精度が向上することが見込まれる。

日本政府が実現を目指している社会「Society 5.0」では、このIoTによる情報収集と分析が課題解決やイノベーションの加速に大きく貢献することが期待されているため、センシングは近い将来、今日よりも遥かに大きな役割を担うこととなるだろう。

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「IoT×センシング技術」の活用事例と今後の展望

「IoT×センシング技術」の組み合わせは既に広まっており、その効果に注目が集まっている。例えば農業分野では、センシングによって農作物の状態や気象状況などの情報を収集し、市場の動向と照らし合わせながら収穫の時期選定や品質管理を補助するサービスが提供されている。ドローンによる農地の撮影、そしてAIによる作物の画像分析によって、人間が担当していた業務を自動化できるほか、将来的に農業分野の人手不足を解消する手助けになることも期待されている。

また、近年注目されている「スマートファクトリー」においては、各生産プロセスの状況をIoT機器がリアルタイムに監視し、異常を察知した場合はその対処法をAIが判断するといった管理方法が可能になる。これまで製造業では、機器それぞれが異なるシステムで稼働している場合、個別にデータを収集する必要があるためビッグデータ分析の弊害となってしまうことがあった。しかしIoTとの接続を前提に作られるスマートファクトリーであれば、このような心配が不要になる。

医療分野においては、センシングによって人間の体(Bodies)から情報を収集する「IoB」という考え方が浸透し始めている。これはスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを装着、または体内に小型のIoBデバイスを埋め込むことで肉体の情報を収集するものだ。将来的には脳や神経系に直接IoBデバイスを接続し、意識や感覚のレベルまで情報を収集できるようになると考えられている。

ただ、IoBはIoTに比べてより精密かつ重要な情報の計測が可能になるものの、人間の行動や生活にまつわるデータを取り扱うことになるため、情報漏えいなどのトラブルに対し今まで以上に注意する必要がある。特に身体の補助を担う機器でトラブルが発生した場合は、生命そのものへの悪影響になりかねない。例えば、IoBによって管理されるペースメーカーがサイバーテロの被害に遭うことは、利用者にとってまさに生命が脅かされる状況だと言っても過言ではないだろう。

IoTの浸透に伴って情報の活用方法が拡大したのと同時に、センシング技術への期待も高まっている。考え得るトラブルに注意を払いながら、センシング技術を活用した新たな価値の創出に期待したい。