金融業

変化の兆しあり! 「キャッシュレス決済」の展望

掲載日:2023/10/31

変化の兆しあり! 「キャッシュレス決済」の展望

交通系ICカード「Suica(スイカ)」と「PASMO(パスモ)」の一時販売中止が発表されてから数カ月が経った。販売中止の原因には半導体不足が挙げられ、いまだ再開のめどは立っていない。一方で、最近は生体認証を活用した「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」立ち上げが発表されるなど、キャッシュレス決済領域に大きな動きが出てきている。キャッシュレス決済は今後、どうなっていくのだろうか。

交通系ICカード販売一時中止の現状と原因

2023年10月現在、交通系ICカード「Suica(スイカ)」と「PASMO(パスモ)」の販売が一時中止されている。どちらも、同年6月からは無記名式の発売が、同年8月からは本人情報が登録された記名式の販売中止が発表された。背景には、インバウンド需要などによるカード需要の拡大、そして半導体不足がある。カード需要が増えている一方で、半導体不足によりカードのIC調達が困難な状況にあるのだ。

なお、発売中止期間は「当面の間」。今後のカードの製造計画については現時点で不透明だとされており(2023年7月末時点)、販売再開のめどは立っていない。

半導体不足の原因と影響

ICカード不足の主な原因は「半導体不足」だ。近年は、パンデミックの拡大や通信システムの5G移行、AIの普及などを背景に半導体の需要が拡大し、供給が追い付いていない状況だ。今後もデジタル技術の浸透に伴い、半導体市場は右肩上がりで成長することが予測される。

半導体不足の影響は企業と人々の生活にも直撃する。例えば、大手スマホメーカーでは過去に半導体不足が原因で部品の調達が滞り、出荷台数が減少している。当然消費者にも、供給待ちや価格高騰などの影響があった。こうした影響を踏まえ、世界中で半導体の取り合いをしているのが現状だ。

半導体不足対策として、日本では海外の半導体企業を誘致したり、日本を代表する8社が出資して新たに半導体メーカーを設立したりしている。

生体認証を活用した「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」

2023年8月、大手鉄道会社・大手総合電機メーカーから、半導体不足の影響を受けやすいスマホや交通系ICカードなどを使用せず、決済ができる仕組み「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」の立ち上げが発表された。

デジタルアイデンティティが用いられることで、例えばSNSや検索エンジンなどのアカウントから異なるサービス・アプリへログインを行う「ソーシャルログイン」が可能になった。

「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」では、そんなデジタルアイデンティティへ指静脈や顔などの生体認証を通じて安全にアクセスし、手軽な決済・ポイント付与・本人確認などの体験を実現する。

例えば酒類を購入する際、セルフレジで端末に指や顔をかざすだけで、年齢確認・クレジットカード決済・ポイントカードの掲示・商品キャンペーンの応募を完了できる。その際、スマホや財布を出す必要はないのでスムーズに行うことができる。

プロジェクトの第一弾として、2023年度中に同プラットフォームに対応したセルフレジの導入が予定されている。

「キャッシュレス決済」のこれから

「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」では、指や顔などを端末にかざすだけで、決済や本人確認ができる。クレジットカードを財布から出す必要も、バーコード決済をするためにスマホをポケットから出す必要もない。消費者としてはより手軽なキャッシュレス決済が可能になるのだ。導入企業・導入店舗側としても、決済やポイントカードの確認、年齢確認などの手間が短縮されるというメリットがある。

同プラットフォーム以外にも、大手飲料メーカーでは2023年5月より、顔認証により自動販売機で飲み物の購入ができる「顔認証決済サービス」を展開。そのほか、スマホを取り出して決済方法を選ぶ手間を節約したいZ世代の間では、指輪型の1秒決済や顔認証決済が広まっているという報道もある。クレジットカードやICカード・バーコード決済といったキャッシュレス決済の潮流は、変わりつつあるのかもしれない。

最新情報のアップデートとニーズに応じた提案の必要性

「キャッシュレス決済」をキーワードにニュースを検索すると、毎日のようにニュースが配信されていることが分かる。多くの企業・消費者がキャッシュレス決済について関心を寄せているのだ。

そして現在、「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」や「顔認証決済サービス」など、キャッシュレス決済領域は変化の予兆を感じさせる。日々発信される情報をアップデートし、変化する製品需要に合わせた提案をしていくことが大切だ。