中小企業

新規事業へのチャレンジに悩む中小企業へ
「ものづくり補助金」解説!

掲載日:2023/11/14

新規事業へのチャレンジに悩む中小企業へ
      「ものづくり補助金」解説!

自社のさらなる発展を目指して新規事業展開を検討したいが、金額面でハードルを感じている……。そのような悩みを持つ企業にとって、救いとなる補助金をご存じだろうか。本記事では、チャレンジする中小企業や小規模事業者必見の補助金「ものづくり補助金」を解説する。

中小企業をめぐる現状

独立行政法人中小企業基盤整備機構の発表によると、国内全企業のうち実に99.7%の企業が中小企業であるという。日本は中小企業によって支えられていると言っても過言ではない、というのが現状だ。しかし、中小企業の多くが資金調達に苦労しているのも、また事実である。

2019年に帝国データバンクが発表した調査によると、中小企業を中心とした事業者のうち約66%が「過去1年以内に借入れ実績あり」、約24%が「過去1年以内に借入れ実績はないが現在借入れ残高あり」と回答した。

なお、2022年に中小企業庁が開催した「第1回中小企業政策審議会金融小委員会」の資料によると、既に借り入れのある中小企業のうち約85%が成長資金の調達方法を「金融機関からの借入れ」と回答している。多くの中小企業が借り入れを必要としていること、そしてそれだけでは十分な資金調達が困難なことが分かるだろう。

注目したいものづくり補助金

そこで注目したいのが、ものづくり補助金の活用である。中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施するこの補助金は、中小企業を対象に、経営革新を目的とした設備投資などに必要な経費を一部支援するものだ。具体的には、機械装置やシステム構築にかかる費用、運搬費など業務における幅広い経費が補助される。なお、名称だけを聞くと製造業に限った補助金のように思えるが、実際はサービス業や飲食業など多様な業種が支援の対象となる。

ものづくり補助金には申し込む事業者の状況に応じて複数の申請枠が設定されており、それぞれ補助上限額や補助率も異なる。申し込む際は事業の内容に沿った最適な申請枠を選ぶことが重要だ。どのような種類の申請枠があるのか。主な内容について紹介しよう。

通常枠

通常枠は、「革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援」する申請枠とされている。補助金額は最大1,250万円、補助率は1/2と設定されている。ただし、小規模事業者や再生事業者等の場合は補助率が2/3に増額される。

回復型賃上げ・雇用拡大枠

「業況が厳しい事業者が賃上げ・雇用拡大に取り組むための革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援」するとされているのが、回復型賃上げ・雇用拡大枠だ。補助金額は最大1,250万円、補助率は2/3と設定されている。

なお申請要件として、前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下であることや、補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、給与支給総額の増加率が1.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金プラス30円以上の水準の増加目標を達成することなどが設定されている。

デジタル枠

デジタル枠は、「DXに資する革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援」すると設定されている申請枠だ。補助金額は最大1,250万円、補助率は2/3である。

申請要件として、DXに資する革新的な製品・サービスの開発、またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善を行っていることなどが設定されている。

ものづくり補助金の活用事例

ものづくり補助金は2012年より実施されており、既に数千件の成果が公開されている。

例えば、ある製造業者はものづくり補助金を活用し、生産物の袋詰めを手作業から機械による自動化へ移行するための設備を整えた。同社は業務の性質上重量のある商品を扱うことが多く、従来は従業員の身体的負担が大きかったという。自動化が進んだことで負担が減っただけではなく、作業時間短縮によって社員研修を実施する余裕が生まれたり、新規取引先の開拓に割く余力が生まれたりといったメリットを享­­受できたことが報告されている。

また、ある自動車賃貸業者はキッチンカーのレンタル事業立ち上げにものづくり補助金を活用した。レンタルキッチンカーは、コロナ禍で飲食業界が打撃を受けた際に打開策として盛んに利用されただけではなく、「多様なニーズに対応するレンタカー会社」としてイメージアップの効果を実感できたという。

これらの事例を見ると、資金的援助によって事業がうまく進んだというだけではなく、当初は想定していなかったような、副次的な効果が得られたことが分かる。これは、申請要項にも含まれている言葉でもある「革新的な」要素を含む事業であるからこそだと考えられる。ブレイクスルーの機会を探る企業ほど、活用してもらいたい補助金だと言えよう。