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需要拡大! SD-WAN市場の将来

掲載日:2023/11/14

需要拡大! SD-WAN市場の将来

国内のSD-WAN市場が拡大を続けている。IDC Japanのレポート「国内SD-WAN市場予測、2023年~2027年」によると、2022年には前年比で34.8%成長し、2023年以降、成長率は鈍化するものの2027年には2022年比1.9倍に拡大すると見込まれている。この市場成長の背景や理由はどこにあるのだろうか?

SD-WAN市場の拡大

SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network、以下SD-WAN)は、ソフトウェアで定義された(SD)広域通信網(WAN)。物理的なWANを外部のソフトウェアから制御するテクノロジーを指す。

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SD-WAN市場は2026年に190億円にまで拡大すると見込まれている。その理由として、SaaSやPaaSなどクラウドの利用が増え、従来型WANに限界がきていることやワークスタイルの変化によってあらゆる場所から組織のネットワークにアクセスするケースが増えていることなどが挙げられる。

従来のWANは業務サーバーが設置されたデータセンターと本支社店などを結び、通信の宛先はデータセンター向けが基本だった。しかしSaaSの採用が増えるにつれ、通信の宛先はインターネット向けのものが増えている。そのため、従来型のWANではファイアウォールやプロキシが大量の通信を抱えることになり、限界を超えてしまう。

また働き方改革やコロナ禍の影響で、勤務場所が自宅やサテライトオフィスなどさまざまな場所に広がっている。通常、WANは拠点ごとに1台ずつ設置するため、多くの場所に従来型のWANを設置しようとするとコストがかかり、回線導入にも時間を要するため現実的ではない。拠点を増やすとエンジニアがそれぞれ設定する必要があり、管理も複雑になる。これを解決する方法の一つがSD-WANだ。

SD-WANはSASE(Secure Access Service Edge)の要件の一つであることから、大企業では既に浸透しつつある。

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SD-WANを導入するメリット

SD-WANは、エンジニアが「コントローラー」という機器で各ルーターの設定を一括制御できるという利便性がある。

Withコロナでオフィス回帰する企業が増えても、SaaSの利用は今後も拡大していく可能性が高い。セキュリティ面を考えると、仮に拠点数が増えなかったとしても、SD-WANを導入するメリットは大きいと言える。

SD-WANはベンダーごとにサービス内容が異なっている。それぞれの代表的な機能とメリットを見ていこう。

管理機能

管理コントローラーによりSD-WAN全体を一括管理する機能。ポリシーの設定・変更ができ、ネットワーク全体の状況をリアルタイムでモニタリング可能。従来のWANと比較してエンジニアの負担を削減できる。コントローラーは、データセンターや、パブリッククラウド上に配置するほか、ベンダーがサービスとして提供しているものを使用しても良い。

セキュリティ

SD-WANには、セキュリティ機能を適用することも可能だ。UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)を活用すれば、ネットワーク全体を包括的に保護することもできる。

マルチパス

用途や通信品質に合わせ、通信経路を自由にコントロールする機能。通信が混雑した場合は、トラフィックの経路を振り分けて通信を安定させられる。

ローカルブレイクアウト(インターネットブレイクアウト)

各拠点からSaaSなどのサービスやインターネットにアクセスする際、企業のWANを経由するのか、直接インターネットに接続するのかを選択する機能のことである。従来であれば、外部ネットワークサービスを利用する際、必ずデータセンターなどのゲートウェイを経由しなければならず、社内WANのトラフィックを圧迫していた。SD-WANのローカルブレイクアウト機能があれば高速インターネットが実現可能だ。

マルチテナント

物理的な1つのWANの機器を論理的に分割して複数のWANを構築する機能。目的・権限などのポリシーが異なる場合でも複数のWANを運用できる。

ゼロタッチプロビジョニング(ZTP)

拠点側にアプライアンスを設置するだけで、ネットワークスイッチなどの設定作業を自動化する。導入現場では、ネットワークに接続して起動するだけで使用できるようになる。

多様なSD-WANサービス

現在、国内ではさまざまなベンダーがSD-WANサービスを展開している。そのサービス内容を見ていこう。

あるネットワーク機器開発会社が提供するSD-WANサービスでは、どこからでも柔軟にアクセス可能なWANが構築できる。統合型のマルチクラウド機能や堅牢なセキュリティ、予測インテリジェンスにより面倒な管理作業も低減。インターネット、ブロードバンド、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)、5G/LTE、サテライトなどさまざまなタイプの通信が接続可能で、強固な基盤の上にSASEへのパスが構築できる。

またアメリカに本拠を置く会社が提供している別のSD-WANサービスは、常時稼働のゼロトラストセキュリティで脅威から保護。事後学習型のプラットフォームで、どのようなネットワーク状況下でもアプリケーションパフォーマンスを落とさない。SD-WAN、セキュリティ、ルーティング、WANの最適化を、統合した単一プラットフォームで一元管理できる。

仮想マシンやソフトウェアを提供している会社のSD-WANは、高性能WANの高い信頼性、転送効率、柔軟性を実現。オンプレミスとクラウドに仮想化サービスをシームレスに挿入し、連結させることも可能である。またパブリックやプライベートのクラウドに最適化されたダイレクトパスを通じて、拠点を安全にクラウドに接続させる。モニタリングは一元管理することが可能。

多様な働き方と、ゼロトラストネットワーク、SASEといった最近のトレンドにSD-WANは不可欠なものとなり、需要はさらに増えるだろう。既存サービスと併せて、新しく発表されるサービスにも注目して、適切なサービスを選択したい。