ワークスタイル改革

働き方改革に取り組む企業支援!
「働き方改革推進支援助成金」とは

掲載日:2023/11/21

働き方改革に取り組む企業支援!
      「働き方改革推進支援助成金」とは

2023年10月、厚生労働省が働き方改革関連法の効果を検証する有識者会議を立ち上げる予定だと報道された。この会議では、有給休暇の取得率向上や労働時間の削減などの課題を洗い出すという。この報道から読み取れるように、働き方改革が十分に実現しているとは言い難い状況だ。だからこそ紹介したいのが、中小企業の働き方改革を支援する助成金である。この制度がどのような効果をもたらすのかを見ていこう。

働き方改革の実情

2016年に「働き方改革実現会議」が発足してから7年が過ぎた。ただ、日本で働き方改革が実現しているのか、疑問が残る。

リクルートワークス研究所は、Works Indexという指標で日本における個人の働き方を可視化し、就業の安定やワークライフバランスなど、5つの項目から分析・評価した資料を公開している。「Works index 2020」を見ると、2016年から2020年にかけて、コロナ禍で働き方が見直された影響で「ワークライフバランス」の指標が大きく改善されるなどの動きがあった。ただ、全体的には横ばいの数値が続いており、好ましい状況とは言えない。

働き方改革が進まない背景には企業の資金不足があると指摘されている。特に中小企業にとって、資金不足は深刻な問題だ。実際、内閣の関係省庁連絡会議で中小企業関係のワーキンググループが開催された際の資料を見ると、働き方改革に対する中小企業・小規模事業者の声として「働き方改革や生産性向上のための機械化を進めたいがそのための資金がない」「設備投資による生産性の向上も考えているが、必要な資金の確保が困難で困っている」などの意見が上がっている。

働き方改革推進支援助成金とは

そこで注目したいのが、働き方改革推進支援助成金だ。これは、生産性を高めながら労働時間の削減などに取り組む中小企業・小規模事業者や、傘下企業を支援する事業主団体を支援する補助金のことである。労務管理担当者に対する研修や、就業規則・労使協定などの作成・変更、労務管理用ソフトウェアの導入・更新などの取り組みに対し、経費の一部が支給される。

働き方改革推進支援助成金には5つのコースが定められており(2023年11月現在)、労働の改善内容に応じて適切なものを選択する点が特長だろう。

適用猶予業種等対応コース

建設業や運送業、病院などの業種は、働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」の適用外とされていた。しかし、適用猶予業種等対応コースはこれらの業種における働き方改革への対応を推進するものとして設定されている。

労働時間短縮・年休促進支援コース

2020年4月より、中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されている。これにより、中小企業であっても基本的に労働者1人あたりの時間外労働は月45時間・年360時間までに制限されることとなった。労働時間短縮・年休促進支援コースは、さらに年次有給休暇や特別休暇の促進に取り組む中小企業を支援する。

勤務間インターバル導入コース

「勤務間インターバル」とは、勤務の合間に一定時間以上の休息時間を設けることで労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るものだ。勤務間インターバル導入コースは、就業規則などで勤務間インターバルの活用を定めている中小企業を支援するものである。

労働時間適正管理推進コース

2020年4月より、賃金台帳などの労務管理書類の保存期間が5年(当面の間は3年)に延長されている。労働時間適正管理推進コースは、この延長措置に対応して、労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む中小企業を支援するものだ。

団体推進コース

団体推進コースは、労働者の労働条件の改善のために時間外労働の削減や賃金引き上げに向けて取り組む事業主団体等を支援するものである。このコースのみ、中小企業ではなく中小企業事業主の団体やその連合団体を支援の対象としている。

働き方改革推進支援助成金の活用事例

働き方改革推進支援助成金は既に支給が始まっており、成功事例が多数報告されている。

例えば、ある農業を営む企業は助成金を活用して土壌分析装置を導入し、作業における無駄な時間を削減したことを報告している。同社ではこれまで、作付けに必要な土壌分析を外部の機関に委託していたものの、結果が判明するまでに2~3週間ほどかかっていたという。作付けのタイミングは調整できないため、タイミングによっては作業が切迫し、時間外労働が多発するなど従業員の負担が増えてしまっていた。しかし、自社で土壌分析装置を導入して以降は分析時間が1時間に短縮。負担も軽減された。

また、ある外食産業企業は助成金を活用して店内設備を改善し、人手不足を解消するとともに賃金アップも実現している。同社ではこれまで店舗スタッフのうちレジ要員や給仕要員などをそれぞれ配置していたものの、人手不足に悩まされていたという。そこで、POSシステムやセルフレジ、給茶機といった設備を導入することで労働効率の改善を図り、店舗全体の生産性向上に成功した。さらに、従業員の時間給を引き上げることにも成功している。

このように、働き方改革推進支援助成金は業務用機器やITへの投資につながりやすい制度であることにも目を向けておきたい。ベンダーとしては、助成金の使い道として最適な製品を紹介できるようあらかじめ注目しておきたい。