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押さえておきたい 生成AIのリアル活用法

掲載日:2023/11/21

押さえておきたい 生成AIのリアル活用法

OpenAIの生成AI「ChatGPT」が2022年11月に公開されてから1年。当初は、ChatGPTを含め生成AIを業務に用いることを禁止した企業もあった。しかし、生成AIを組み込んだ業務アプリがリリースされ、セキュリティ面などで注意すべきことが明確になったことで、積極的に業務に取り入れる企業が増えている。本記事では、実際に生成AIがどのような業務に用いられているのか、また利用する際にはどのような点に注意すべきなのかについて解説していく。

従来のAIと生成AIは何が違うのか

生成AI(ジェネレーティブAI)について厳密な定義はないが、従来のAIと大きく違うのは「コンテンツを生成できる」ことにある。

従来型のAIは、主に特定や予測に用いられていた。製造工場で不良品を検出する、植物を撮影しその名前を調べる、などがその例だ。決まった工程を自動化できるため、人材不足に悩む業界での利用が増えている。

一方、生成AIは新しい文章や動画、音楽などを創造できる。もちろん基になる学習データは必要で、全く何もないところから何かを生み出すことはできないが、データがあれば人間の想像を超えるものを生み出す可能性すらある。

生成AIには何ができるのか

現在の生成AIサービスは何ができるのかを見ていこう。

対話型AI

OpenAI「ChatGPT」、Google「Bard」、Microsoft「Bing」など、チャット形式で質問をすると回答してくれるもの。

自然な文章を作り出すのが得意なので、企画書・報告書や、メール・挨拶状などの文章、HPのコピー・SNSの投稿文などを作成するのに便利だ。長い文章の要約や翻訳といった使い方もでき、コンテンツ生成以外にもExcelの関数、簡単なコーディングなども得意とする。ただし、計算、特に文章問題は正しい答えにならないこともあるため注意が必要だ。

画像生成AI

テキストの指示で画像を生成するAI。簡単に質の高いイラストが作成できることから人気を集めているが、細部に誤りがある場合や、学習データによっては誰かの著作物に類似することもあるため、そのまま製品や広告などに用いるレベルに至るサービスは少ない。

商用で使いやすいのが、スタンドアロンのWebアプリ『Adobe Firefly』だ。学習データに、Adobe Stockなど使用許諾を受けたコンテンツや著作権が切れた一般コンテンツを用いているため、生成した画像が著作権に抵触するリスクが極めて低い。

そのほか画像生成AIで有名なものに、OpenAI『DALL·E 2』、『Midjourney』、『Stable Diffusion』がある。

音楽生成AI

大量の楽譜を学習させて、新たな音楽を生成する。テキストでコンセプトを伝えればイメージに合った曲を作ることも可能である。 現在はまだオリジナリティに富んだ曲の作曲は難しいが、動画のBGMなどの用途で期待できる。

主な音楽生成AIにGoogle『MusicLM』、『Amper Music』などがある。

動画生成AI

画像生成AIの技術を発展させたもの。動作が不自然なものができてしまうなど、技術的に確立できているとは言い難いが、将来的には手間要らずの動画ができるようになりそうだ。

有名なものに『Runway Gen-2』などがある。

以上挙げたもののほかに、翻訳に特化したもの(『DeepL』や『Mirai Translator』など)、記事要約、音声合成などの生成AIもリリースされている。

生成AIの活用事例

一部の新聞では、試験的にAIが作成した記事を掲載している。国内株概況のようにデータがしっかりある記事なら、生成AIでも問題なく文章を作成できる。しかし、生成AIの作成する記事は文章こそ整っていても、内容については誤りが少なくないため、人間に代わって報道記事全てを担うことは現状ではまだ難しいだろう。

今後、記事のタイトルやリード文などの作成から徐々に取り入れられていくことは十分に考えられる。 本文がオリジナルの記事であれば、その要約をAIに担わせても著作権を侵害することはないからだ。

また、社内文書などの作成には、生成AIが積極的に用いられるようになってきている。社外に出さない限り、著作権の問題が起こる可能性は低い。また、内容を把握した従業員がチェックすれば誤りのある文書にはならないはずだ。さらに、広告のドラフト作成に生成AIの画像や音楽を用いて、そのイメージでクリエイターに依頼することも考えられる。

生成AIはコンテンツを生成できるが、例で挙げたように今のところは業務に用いられる範囲は限定的になってしまう。著作権の問題と、セキュリティ面でのリスクがまだクリアになっていないためである。本格的に利用されるためには、国や世界単位でのルールが確立されてからになるだろう。

会話型AIは、業務アプリのプラグインとして用いられるようになってきている。これによって業務の自動化が実現し、業務負担を減らすことができる。具体例として、サイボウズ『kintone』ではChatGPTが利用できるプラグインが発表された。アプリ内に登録されている会社名や製品情報などを利用し、『kintone』内でトークスクリプトやメルマガ案などを作成できるというものである。

今後生成AIの精度が高まり、法整備が行われれば、生成AIの利用は一気に加速して広がるのではないだろうか。チップメーカーやOS含むソフトメーカーでは次々とAIを意識した製品を発表している。この先、生成AIの利用は飛躍的に広がっていくだろう。