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設立2年を迎えたデジタル庁 これまでと今後を解説!

掲載日:2023/11/21

設立2年を迎えたデジタル庁 これまでと今後を解説!

デジタル庁は2021年9月の発足当初、「デジタル時代の官民のインフラを今後5年で作り上げることを目指す」と表明していた。発足から2年が経過した今、2年間の歩みを振り返るとともに、課題や今後の展望について解説していく。

デジタル庁の役割

デジタル庁は、日本のデジタル社会形成に向けた司令塔として2021年9月に発足した。これまで問題視されてきた日本のデジタル化の遅れがコロナ禍で露呈し、デジタル庁の設立が後押しされたという。

デジタル庁は、社会全体のデジタル化を主導する。例えば、行政サービスにおいては引っ越しや子育てなど行政諸手続きのオンライン化・ワンストップ化を推進中。また、中小企業における事業環境デジタル化のサポートも行う。

このように、さまざまな領域でデジタル化を推進するのがデジタル庁の役割だ。

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これまでの施策の振り返り

デジタル庁が発足して約2年。これまで、さまざまな施策や活動を展開してきた。

代表的なものがマイナンバーカードで利用できるサービスの拡充だ。2023年2月には、引っ越しのオンライン申請を全自治体で開始。申請数は約38万件に上る(2023年9月現在)。加えて、子育て・介護関連の手続きをオンライン化した自治体も増加している。

事業に関する行政手続きのデジタル化も推進している。例えば、デジタル庁が運営する補助金の電子申請システム「Jグランツ」の利用が加速しており、2022年8月~2023年7月に延べ約7万人の事業者が同システムを利用した。

また行政向けの施策としては、行政事務の生産性向上を目的に、業務の自動化や情報共有の円滑化などを実現する、ガバメントソリューションサービス(GSS)の導入を推進中だ。人事院やこども家庭庁を含む4府省庁がGSSを導入している。

発足して2年の間、このように国民・事業者・行政問わず、多様な施策を推し進めている。

デジタル庁が抱える課題

このような取り組みの一方で、厳しい現状があるのも事実だ。

デジタル庁が2023年7月に実施した「デジタル行政サービスに対する意識調査」によると、以下の認識が明らかになった。

  • 社会のデジタル化を良いと考えている人:48%
  • 社会のデジタル化に関心がある人:41%

一方、デジタル化への適応意識・満足度については以下の結果が出ている。

  • 社会のデジタル化に適応できていると思っている人:28%
  • デジタル行政サービスを利用したことがある人の中で満足している人:29%

つまり、71%の人が、デジタル行政サービスに満足していないことになる。

デジタル庁には、社会のデジタル化に対する認識のギャップを埋めつつ、多くの人が簡単かつ快適に利用できるデジタルサービスを提供することが求められている。

現在の取り組みをチェック

もちろん現在も、デジタル庁は施策の計画・実行を進めている。エンタメ領域におけるマイナンバーカードの利活用がその一つだ。デジタル庁では、マイナンバーカードを酒類販売時における年齢確認や、特設エリアへの入場時の本人確認に活用する実証実験を2023年9月に行っている。

加えて、チケット不正転売防止のためのマイナンバーカード活用実験も調整中だ。具体的な実験内容は検討中だが、転売時にマイナンバーカードによる本人確認を求めることで、不正転売の抑止が期待される。

そのほかにも、2023年10月には、神奈川県小田原市とデジタル庁とで自然災害などが発生した際、避難者の情報をスピーディーに把握するための実証実験が行われた。実験は紙とマイナンバーカードを含むデジタル技術、それぞれで避難者の情報を収集した結果を比較するというもので、後者の方が1/10程度、避難者の把握にかかる時間が短縮された。

今後の展望

前述の実証実験も含めて、今後もデジタル庁はデジタル化推進をけん引していく。

事業者に関わるものとしては、中小企業のDX推進や政府調達におけるスタートアップ⽀援、Jグランツの刷新などが実施される予定だ。

さらに、受発注から請求、決済にわたる企業間取引全体のデジタル化も推進している。将来的には、個別の取引先との煩雑な振込・入金作業がまとめられ、資金繰りのアドバイスも受けられるという仕組みづくりも検討されている。

デジタル庁は、今後もデジタルの力で官民のインフラを作り上げていく予定だが、その取り組みには中小企業のデジタル化支援も含まれる。デジタル庁の動向をとらえ、時流に乗れる中小企業と乗れない中小企業とで、大きく差がつく恐れがある。

デジタル庁の描く未来を見据えた製品提案をすることが、企業の競争力強化につながることだろう。