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スマートグラスの最前線&展望を探る!

掲載日:2023/11/28

スマートグラスの最前線&展望を探る!

2023年10月にアメリカやカナダなどで発売開始された、Meta社の『Ray-Ban Metaスマートグラス』。カメラやスピーカーなどを内蔵しており、「Hey Meta」と声をかけるとAIアシスタント「Meta AI」と会話ができる。進化を続けるスマートグラスのビジネス活用について、実際の活用例も含めてご紹介しよう。

AI機能搭載のスマートグラス発売!

Meta社が2023年10月に発売を開始した『Ray-Ban Metaスマートグラス』は、2021年9月に発表されたスマートグラス『Ray-Ban Stories』の2代目。初代と比較して音量が約50%アップし、搭載マイクも1つから5つに増えた。 AIアシスタント・Meta AIとも連携しており、電話やメッセージ送信、写真・動画撮影がハンズフリーで行える。

そもそもスマートグラスとは眼鏡型のウェアラブルデバイスのこと。眼鏡で実際に見ている光景に重ねて、また別の情報を確認できるのが特長だ。両手を空けた状態で操作でき、視覚から情報を取り入れられることから、遠隔支援やARなどの最新コンテンツ体験などの実現が期待されている。

ちなみに、Meta AIはInstagramやMessengerなどのアプリで利用できるほか、VRヘッドセット『Meta Quest 3』にも導入予定。 AIを搭載した『Ray-Ban Metaスマートグラス』がスマートグラス普及の起爆剤になるのか、注目が集まっている。

スマートグラスのビジネス活用シーン

スマートグラスのビジネスシーンでの活用例をいくつか見ていこう。

遠隔サポート

管理者は、作業員が装着したスマートグラスを通じて現場の様子を遠隔地からでも把握できるので、現場にいなくても状況に応じた指示を出すことが可能である。製造・建設、保守・メンテナンス業界などでよく見られる活用方法だ。

例えばICTインフラの設計・保守などを手掛ける企業では、スマートグラスを装着した現場のカスタマーエンジニアに対し、指示者が現場の様子をモニターで確認して遠隔地からサポート。経験が浅いエンジニアでも安心して作業でき、指示者側も指差し確認をリアルタイムで確認できるので、ミスの防止に役立っている。

このほかにも、作業員側はハンズフリーで作業ができる、管理者は現場へ移動する手間や時間を削減できるなどのメリットもある。

ビジュアルガイド

スマートグラスの装着者は、博物館や美術館で作品の解説を受けたり、旅行先で観光スポット情報を確認したりできる。

例えばあるギャラリーでは、スマートグラス上に作品を3D表示させる仮想アシスタントを表示させて、作品の解説を行っている。また別のバス会社では、スマートグラスを着けて散策する観光客に対して、バスガイドが遠隔から案内を行う実証実験も実施した。名所案内やおすすめのお土産情報などをグラス上で紹介すれば、観光客へインパクトを残せるだろう。

技術継承・遠隔教育

スマートグラスを装着して、講師が若手従業員や受講生に映像を共有することで、技術継承や遠隔教育を実現する。

例えばあるOA機器販売会社では、スマートグラスを活用して保守・メンテナンス担当者向けの研修を実施。研修を全国で同時開催し、その内容をスピーディーに提供しただけでなく、講師の出張コストも削減できた。また、作業の様子や研修内容を動画として保存すれば、教育材料としても活用できるだろう。

字幕表示

スマートグラス上に、会話の内容を字幕でリアルタイム表示させることで、聴覚に障がいを持つ人や海外の人とのコミュニケーションが効率化される。

例えば大手自動車部品メーカーでは、聴覚に障がいを持つ人にスマートグラスを装着してもらい、指示者の声をスマートグラス上に文字として表示させる取り組みを実施。これにより、月56時間かかっていた研修が月33時間にまで削減できた。外国人の従業員に対しては、字幕に表示させる言語を母国語にすることでより円滑なコミュニケーションを促進できる。

スマートグラス市場の展望

スマートグラス市場は今後大きく拡大するだろう。株式会社矢野経済研究所によると、スマートグラスの出荷台数は増加する見通しだ。

2022年~2025年の3年間で出荷台数は4倍以上に増加することが予測されている。

そして将来的には、現在行われている多くの実証実験が実用化される可能性がある。例えば、高知工科大学は地元のショッピングセンターおよび大手印刷会社とタッグを組み、スマートグラスを用いたスマート買い物サービスの実証実験を行った。同実験は、スマートグラスをかけた店員が見ている映像を遠隔地にいる購入者へ共有し、購入者には自宅にいながら買い物体験をしてもらう、というもの。人件費や配送費などの課題はあるが、さまざまな事情から買い物に行けない人にとっては実現が期待される取り組みだろう。ちなみに同実験は長野県飯綱町でも実施済みだ。

また大手通信会社では自動運転車の移動場所に連動してARコンテンツを表示させる実証実験を実施。同実験は、自動運転が一般的になった将来、走行中に車内で体験できる新たなコンテンツ創出を目指したものだ。今後もスマートグラスの進化に応じて、多くの実証実験が行われることだろう。

ビジネスシーンにおけるスマートグラス活用はまだまだ始まったばかりだ。スマートグラスによる遠隔サポートや遠隔教育などが普及すれば、多くの企業にとって業務の最適化が加速することだろう。

現在、産学官問わずに幅広くスマートグラスを活用した実証実験が行われ、新たな活用法が模索されている。積極的に情報収集をしていきたい。