組織改革

レガシーシステム脱却へ! 現状と対策をご紹介

掲載日:2023/11/28

レガシーシステム脱却へ! 現状と対策をご紹介

DXの妨げとなっているものの一つにレガシーシステムが挙げられる。レガシーシステムから脱却できなければ大きな経済損失が生じる可能性があるが、現状では順調に進んでいるとは言い難い。レガシーシステムが抱える膨大なデータの移行方法など、脱却に向けてどのような対応をするべきなのだろうか。

2025年の崖

経済産業省は「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を2018年に発表した。同レポートでは、DXの妨げになっている理由としてレガシーシステムの存在を挙げている。2017年時点で、日本企業の約8割がレガシーシステムを抱えており、約7割の企業でレガシーシステムがDXの妨げになっていると答えていた。

レガシーシステムの問題は、システムを構築している技術が古いため対応できるIT人材が少ないこと、システムが肥大化・複雑化し、ブラックボックスになっていることにある。その結果、管理・運用費用がかさみ、経営・事業戦略上の妨げになってしまう。また2025年までに複雑化、ブラックボックス化したレガシーシステムが残存した場合、IT人材の引退、サポート終了などのリスクの上昇に伴う経済損失は1年で最大12兆円にも上ると試算されている。

DXレポートから5年経った現在でも、依然としてレガシーシステムを抱えている企業はまだまだ多い。調査方法が異なるため2017年と正確な比較はできないが、「日経コンピュータ 2023年8月3日号」に掲載された読者アンケートで、レガシーシステムが自分の勤務先に「かなり残っている」が27%、「やや残っている」が25%、「わずかに残っている」が20%という結果が出ており、約7割の企業でレガシーシステムが残っているということになる。

データ活用とレガシーシステム

既存のシステムが老朽化、複雑化、ブラックボックス化すると、保有しているデータや情報資産の利活用も限定的になる。 従来は、業務やシステム構築を進める際、事業部ごとに個別最適化を優先することが多かった。そのためシステムが複雑化し、企業全体でのデータ管理が困難になって、多くの情報資産を保有していても全社最適に向けての活用ができない。

現在、IoTやAIなどの最新テクノロジーの浸透により、レガシーシステムが構築された最初期とは比較にならないほどデータ量は急増した。有効にビッグデータを取り扱うためにレガシーシステムから脱却し、新たな体制を整えることは喫緊の課題となっている。

レガシーシステムからの脱却

レガシーシステムからの脱却には、マイグレーションまたはモダナイゼーションのいずれかを実施する事が不可欠であろう。

マイグレーション

既存システムと構造を変えずにシステムやデータをほかのIT環境に移行することを意味する。オープンシステムに移行したり、オンプレミス環境からクラウドに移行したりする。移行の対象になるのは、ストレージのほかアプリケーションやデータベース、BPM(ビジネスプロセス管理)などである。

アプリケーションは、現行のアプリケーションと同等またはそれ以上の機能をもつ新たなアプリケーションへの移行となる。レガシーシステムのマイグレーションで一番多いのは、このアプリケーションの移行だ。

データベースの移行は、アプリケーションの移行に伴って発生するため、データ形式の変換が必要なこともある。

BPMは現行の業務プロセスを整理・分析して業務効率化を図る。BPMを移行する場合、アプリケーションやデータベース、ストレージの移行も同時に行う必要がある。

モダナイゼーション

現在稼働しているハードウェアやプログラムを新しいIT資産に置き換える方法のことを指す。モダナイゼーションは主に3つの方法がとられる。

使用しているハードウェア、アプリケーションを新たなものに置き換える「リビルド」、新たな環境に合わせて現行のプログラムを最適な言語などに書き換える「リライト」、サーバー・OS・ミドルウェアなどを新たな環境に構築して、アプリケーションやデータなどを移行する「リホスト」の3つである。レガシー脱却に一番効果が期待できるのは、アプリケーション・プログラムを刷新するリビルドだが、その分コストも時間もかかる。

なお、各用語の定義は明確ではなく、上記のモダナイゼーションを含めてマイグレーションと呼ぶこともある。

レガシーシステム脱却で目指すもの

中には、「システムを刷新させる」ことを目的としてしまう企業があるだろう。しかし最終的な目的は、過去にレガシーシステム内に保管してきたデータや新たに取得したデータを利活用して、新たなビジネスを創出すること、そしてビジネスモデルや業務スタイルを改革していくことにある。

レガシーシステムからの脱却は簡単なことではなく、コストもかかる。それ故、お客様にしっかりヒアリングを行い、何を目指すのか、それに向けて行わなければならない改修は何なのかを見極めていきたい。