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無線通信技術「LPWA」がもたらす未来

掲載日:2023/12/05

無線通信技術「LPWA」がもたらす未来

主にIoTソリューションに利用される「LPWA(Low Power Wide Area)」。従来の通信規格と比較すると低コストかつ低消費電力で、長距離通信が可能な無線通信技術だ。日本ではまだ十分に浸透しているとは言えないが、IoT時代に欠かせないものになるだろう。本記事では、LPWAとIoTとの関係性や導入効果、そして今後の展望について解説する。

低電力・長距離通信・低コスト

「LPWA(Low Power Wide Area)」とは、低消費電力で数キロ~数十キロという長距離通信を可能にする無線通信技術の総称だ。LPWAN(Low Power Wide Area Network)とも呼ばれる。LPWAは消費電力が少ないため、一度の給電で長時間稼働が可能で、LTE並みの広域・長距離データ通信を低コストで運用できる。ただ、長距離・長時間稼働を実現するためにデータの通信量や通信速度は優れていないというのが事実だ。

「低電力」、「長距離通信」、「低コスト」といったメリットを持つLPWAは、スマート農業や物流管理、インフラ監視といったIoT領域の用途と相性が良い。

従来、多くのIoTデバイスはLTEやWi-Fiなどの通信規格を利用していた。ただ、これらの通信規格はLPWAと比較すると消費電力が高く、バッテリー交換を含むメンテナンスを頻繁に行う必要がある。

その点、LPWAはIoTデバイスでの利用を想定した設計なので、デバイスの消費電力を大幅に削減できる。メンテナンス頻度を下げ、低コストでの運用が可能だ。LPWAは一度に利用できるデータ通信量が少なく、データ通信速度も他の規格と比較すると遅い。ただ、データ通信量が少ないデバイスはLPWAで十分カバーできる。さらに広域・遠距離通信も可能なので、IoT領域におけるLPWA活用が注目されているのだ。

LPWAの導入効果とは

消費電力の少ないLPWAを利用すれば、危険な場所や基地局までの距離が遠い場所で運用する場合でも、頻繁にメンテナンスする必要がない。

また、LPWAは多くのデバイスとインターネット同時接続ができる。そのため、ビニールハウスの温度測定や、物流資材管理のために設置される多数のデバイスに同時接続をして運用することも可能だ。そのほか、通信距離の広いLPWAであればデバイスがオフラインになるリスクを軽減できるメリットもある。

LPWAの活用方法

LPWAは、実際にどのように活用されているのか見ていこう。例えば農業分野では、LPWA経由でビニールハウス内の温度・湿度をスマホやPCに送信するなどして、スマート農業の実現に向けて活用されている。

また、実証実験や試験導入も数々行われている。スポーツ分野ではモバイル回線の届かない山間部などを走る選手の位置情報を追跡する実証実験を実施。また、電源準備が困難な山間部にあるため池の水位データをLPWAで伝送して、ため池の水位確認をする実証実験も行われている。さらにとある地方水道局では、水道スマートメーターのデータ通信にも活用しているようだ。

LPWAの用途は、農業や防災、インフラなどジャンルはさまざまだ。高齢者や子どもの見守り、鳥獣害対策など、さらなる活用にも期待が集まる。

LPWAの可能性

LPWAは今後、新たな通信インフラとして着実に普及していくと考えられる。総務省の「令和5年版 情報通信白書|データ集」によると、2025年の世界のLPWAモジュール向けIC出荷数は2022年の約2.5倍にあたる7.2億個に、また2025年の世界のLPWA接続回線数は2022年の2倍以上にあたる19.6億回線に上る予測だ。

前述のとおり、LPWAはIoTデバイスでの利用を想定した仕様である。今後はIoTソリューションの浸透も相まって、LPWAの注目度も増していくことだろう。健康・医療やインフラ管理、物流、農業など、多様なIoT領域での活用が期待されているLPWA。現に自治体でもさまざまな実証実験が実施されており、LPWAの実用が現実味を帯びてきた。

IoTソリューションに関心を寄せるユーザー様への提案に備えて、LPWAの最新動向をキャッチしておきたい。