IoT・AI

デジタルの恩恵を全国へ 「デジタルライフライン全国総合整備計画」とは

掲載日:2023/12/26

製造業へのAI予知保全の導入について知るべきこと

2023年度末頃に閣議決定が予定されている「デジタルライフライン全国総合整備計画」。同計画では、自動運転やドローンといったデジタル技術を活用したサービスの社会実装により、社会課題解決や産業発展などの実現を目指すとしている。約10年にも及ぶ同計画は、社会や企業にどのような影響を及ぼすのだろうか。

デジタルライフライン全国総合整備計画とは

デジタルライフライン全国総合整備計画とは、ドローンやAIなどデジタル技術の恩恵を全国各地に行き渡らせることを目的とした計画である。同計画では、人手不足や災害の激甚化などの社会問題を、デジタルサービスの社会実装によって解決することを目指している。約10年の計画として2023年度内に策定し、2024年度から社会実装を開始する予定だ。

デジタルライフライン全国総合整備計画が社会に与える影響

デジタルライフライン全国総合整備計画の実装により、社会や企業にどのような影響があるのだろうか。同計画がもたらす恩恵をいくつか見ていこう。

社会問題の解決

経済産業省は、デジタルライフライン全国総合整備計画を通じて物流クライシスや災害激甚化、人手不足などの社会問題解決に取り組み、「デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成に貢献する」としている。

例えば、人流クライシスや災害激甚化といった問題に対しては、ドローンを活用した生活必需品の配送や自動運転を用いた予約制の交通サービスなどを、持続的に運営することで解決を図る方針だ。

また、物流分野における労働力不足を懸念して、物流効率化を図る共同輸配送システム「フィジカルインターネット」の実現にも取り組む予定である。「フィジカルインターネット」とは、デジタル技術により物流情報を可視化したうえで、複数企業が倉庫や車両などをシェアして貨物を輸送するなどして持続可能な社会を実現するための物流システムのことで、物流の将来像として期待されている。

産業の発展

デジタルライフライン全国総合整備計画は、社会問題解決と産業発展の両立に力を入れている。経済産業省は、自動運転やAIなどを活用できる環境を全国的に拡大することでデジタル産業の発展を促し、生産性の向上や所得拡大につなげていく考えだ。

加えて、同計画に関する会議の中間とりまとめ資料には「重複を排除した官民による集中的な投資を行う」という記載も確認されるなど、国を挙げて自動運転車やドローン、AIなどへの投資、さらにそれらテクノロジーを活用することで、関連企業および産業を活況化することが期待される。

デジタルライフラインの整備

デジタルライフライン全国総合整備計画では、ハード(高速通信網・IoT機器など)・ソフト(データ連携基盤・3D地図など)・ルール(認定制度・アジャイルガバナンスなど)のデジタルライフラインの整備を行う。デジタルライフラインとは、ドローン航路や自動運転支援道などで構成される、デジタル時代における社会インフラの総称である。

デジタルライフラインの整備により、さまざまな恩恵を受けられるだろう。例えばドローン航路が設定されれば飛行コストの低減やイノベーション促進に貢献でき、自動運転支援道が整備されれば、運行リードタイムの低減も実現する可能性がある。

なお、同計画では「ドローン航路」・「自動運転車用レーン」・「インフラ管理のDX」の3つのデジタルライフラインを、2024年度より「アーリーハーベスト(先行)プロジェクト」として進める方針だ。

デジタルライフラインは、先に記載した「社会課題の解決」や「産業の発展」をもたらす土台と言えるだろう。

デジタルライフライン実装によるIT機器需要拡大に期待

デジタルライフライン全国総合整備計画は約10年にも及ぶ計画であり、その間に大規模な官民投資が行われる見込みだ。既に2023年10月には同計画における「自動運転支援道とドローン航路の実現にむけた支援業務に係る一般競争入札」が行われている。

社会のデジタル化が進むにつれ、企業におけるIT機器の増加・更新も盛んになるだろう。「点の実証」から「線・面の実装へ」をコンセプトにしているとおり、今後はデジタル技術普及に向けた取り組みがより活発になると予測される。ベンダーとして企業のニーズの変化に合わせた最適な提案ができるように、同計画はもちろん、デジタルサービスの最新動向も常に把握しておきたい。