中小企業

今からでも間に合う
「年収の壁・支援強化パッケージ」を解説!

掲載日:2023/12/26

今からでも間に合う
      「年収の壁・支援強化パッケージ」を解説!

年末年始など、繁忙期の人員調整に頭を抱える中小企業の方は多いことだろう。人手不足の本格化が予測されるため、企業としては早急に対策をしておきたいところだ。そこでチェックしておきたいのが、政府が打ち出した施策「年収の壁・支援強化パッケージ」だ。2023年10月から手続きが開始されている施策の内容を、本記事で確認しておこう。

人手不足に影響を与える「年収の壁」

2023年に帝国データバンクが発表した調査によると、全国の企業に従業員の過不足状況を尋ねたところ、約30%が「非正規社員の人手が不足している」と回答したという。2020年に行われた同調査での同回答は約17%であったことを踏まえると、人手不足がより深刻化していることが読み取れる。

このような状況が続く背景には、いわゆる「年収の壁」が影響している。「年収の壁」とは、家族の扶養に入りながらパートやアルバイトなどで働く際、一定以上の年収を得た場合に社会保険料の負担が生じて手取りが減少するため、多くの人々が意図的に労働時間を制限することを指している。

人手不足の中小企業におすすめしたいパッケージ

多くの中小企業にとって、パートやアルバイトの従業員は貴重な要員だ。労働時間を制限されることは事業主にとっても雇用者にとっても望ましくない。そこで注目したいのが、2023年10月より厚生労働省が開始した「年収の壁・支援強化パッケージ」という支援策だ。

年収の壁には年収額に応じて4段階ほどの障壁があるとされている。年収の壁・支援強化パッケージでは、特に影響の大きい「106万円の壁」と「130万円の壁」という2種類の障壁に絞り、対策が実施されることとなった。それぞれの具体的な内容を見ていこう。

106万円の壁対策(キャリアアップ助成金)

従業員の年収が106万円を超える場合、厚生年金および健康保険に加入する必要があるため、保険料負担が発生する。この106万円の壁対策として、2023年10月以降は「手取り収入を減らさない取り組み」を実施する企業に対し、労働者1人あたり最大50万円の助成金が支援(中小企業の場合)されることとなった。

「手取り収入を減らさない取り組み」とは、年収106万円を超えた従業員に対し、保険料相当額となる賃金の15%以上を追加支給することを指す。ただし、1人の従業者に対し連続して助成金を受け取る場合は、3年目のみ条件として賃金の18%以上を追加支給することが必要だ。

なお、106万円の壁対策の助成金は厚生労働省の資料などでは「キャリアアップ助成金」と呼ばれている。実際にキャリアアップ助成金を活用する場合、原則として厚生労働省に「キャリアアップ計画書」を提出する必要がある。これは人手不足の現状や労働待遇などの問題を、助成金で解決するための計画をまとめたものだ。この計画書を提出した翌年度より、助成金が支給される。

130万円の壁対策

従業員の年収が130万円を超えた場合、家族の扶養から外れ、厚生年金および健康保険に加入するか、国民年金および国民健康保険に加入する必要があるため、保険料負担が発生する。この 130万円の壁対策として、2023年10月以降は条件を満たした場合のみ家族の扶養にとどまることができるようになった。

なお、家族の扶養にとどまる条件とは、職場の人手不足など一時的な事情による労働時間の増加で年収が130万円を超えた場合、かつその内容を事業者が証明した場合を指す。あくまでも「一時的な事情」として労働時間が増加した者を対象とした制度であるため、原則的に同一の従業員への認定は連続2回までとすることに注意が必要である。

2025年に向けた対応

「年収の壁・支援強化パッケージ」は中小企業向けの政策であるため、対象になる企業の数は多い。ぜひ活用をおすすめしたいところだが、この施策が2025年の年金制度改正へ備えることを目的とした一時的な対応であることも覚えておきたい。

2025年には現在の保険料を引き下げ、パートやアルバイト従業員が年収の壁を超えて働くことを容易にすることも検討されているという。企業には将来を見据え、従業員に対しメリットや重要性について理解が得られるように説明することが求められるだろう。