医療

4月から介護事業所でBCP策定が義務化
策定手順とポイントを紹介!

掲載日:2024/02/13

4月から介護事業所でBCP策定が義務化 策定手順とポイントを紹介!

2024年の幕開けは誰もが防災対策を見つめ直す機会になったことだろう。そうした中、2024年4月から介護事業所でのBCP策定が義務化されることになった。BCPとは災害はもちろん、あらゆる緊急事態に際しても組織が事業を継続するための計画のことを指す。本記事ではBCPに関して、策定の手順やポイントを紹介する。

BCP義務化にどう対処すべきか

2024年4月より、介護施設におけるBCP策定が義務化される。厚生労働省が「災害や感染症の流行等が発生してもサービスを継続できる準備が重要である」と説明しているように、多くのご利用者を預かる介護事業者にとってBCPの策定は必要不可欠と言えるだろう。では、具体的に介護事業者にはどのような対策が求められるのだろうか。一般的なBCP策定の流れから説明しよう。

まず必要なのは、BCP策定の目的を設定することだ。具体的には、組織が事業を継続するにあたり、失われてはいけないものを決めることが必要だ。一般的には「顧客・従業員の安全」「取引先の信頼」「基幹システムの機能」などが該当する。

次に、目的を達成するために必要な業務とリスクを洗い出す作業が求められる。一般的には組織にとって中核的な事業が何かを想定し、それを脅かす問題を中心にリスクを挙げていく流れになるだろう。

続いて、洗い出したリスクについて対応の重要度ごとに順位を付けていく。ただし、リスクは多角的に評価されるものであり、簡単に比較できるものではないだろう。判断に悩んだ際は、発生頻度や影響力といった、組織へのダメージに直結する評価軸で順位付けすることが望ましい。

最後に、リスク回避のための実現可能な具体策を設定する。また、組織は脅威が去った後も継続するため、資金や人的リソースを確保し迅速に元どおり、または損害を最小限にして事業を再開する計画の設定も求められる。

また上記以外にも、BCP策定における介護事業特有の課題や注意点も存在する。具体的な内容については厚生労働省が公開しているガイドラインを参考にすると良いだろう。本記事では喫緊の課題として注目度の高い感染症対策と災害対策を例に解説していく。

出典:介護事業者における業務継続計画(BCP)について

感染症対策

感染症対策において最も重要なポイントは職員確保のスキームだ。有事の際は職員が感染者・濃厚接触者になり、オペレーションに必要な人材が不足することも考えられる。業務を分散させて感染の拡大を防ぐことや、万が一の場合は関連団体や自治体から応援を要請できるシステムを構築しなければいけない。

また、入居者に感染者、もしくはその疑いがある者が出た場合、初動対応から検査を経て医療機関への入院に至るまで対応をあらかじめ想定しておき、トラブルなく実施するためのスキームを考えることも必要だ。日頃からこのスキームを組織間で共有し、研修や訓練を続けることも不可欠である。

災害対策

災害対策においてまず注力すべき点は、発災時のリスク予測である。具体的にはハザードマップを確認し、津波や液状化などの影響を想定する必要がある。そのうえで重要な業務を判別し、災害が発災した場合でも優先して継続する手段を考えることが重要だ。さらに、電気や水道などのライフラインが止まった場合の対策として、緊急でも代替が可能な設備(自家発電機や備蓄の飲料水など)がそろっているかを確認する。

さらに、避難経路や施設の確認とその手順に問題がないか検証することも重要だ。有事の際は職員・ご利用者(とその家族)の安否確認も困難になる可能性がある。万全の体制で避難できるとは限らないため、何を優先すべきかを常に念頭に置いて対策を練ることが重要だ。

継続的な運用のために

BCP対策は策定して終わりではない。新型コロナウイルス感染症の流行など想定外の事態が起こる可能性があるほか、社会意識の移り変わりに伴って「対策成功」の判断基準も変化していくだろう。さらに職員も都度変化するため、運用方法もその時期に合わせたものでなければ効果は薄い。すなわち、継続的な見直しやその内容を研修にフィードバックするなどの工夫がなければ、BCP対策が形骸化することは避けられないのだ。

しかし、BCP対策の形骸化を防ぐための工夫を組織内で完結させることは難しい。だからこそベンダーには、第三者的な目線で冷静にその達成を見極める役割を担うことが期待される。ある種組織内では扱いにくい弱点に踏み込めることも外部ベンダーの特権だ。このようなベンダーならではのメリットを理解したうえで、ビジネスの足がかりとして組織のBCP対策を大いに活用していきたい。