流通・小売業

2024年問題を抱えるリテール業界
その解決策をご紹介!

掲載日:2024/03/05

2024年問題を抱えるリテール業界 
      その解決策をご紹介!

2024年4月から、働き方改革関連法によって自動車運転業務に年960時間の上限規制が適用される。これは「物流の2024年問題」と呼ばれ、大きな話題を呼んでおり、物流によって業務を下支えされているリテール業界も打撃を受けることになるだろう。直前に迫ったこの問題にどう対処すれば良いのだろうか。

リテール業界が抱える問題

2024年問題によって物流業者の一部は業務の縮小を余儀なくされると予測されており、これはリテール業界にとって商品の配送量が減少することを意味する。どの企業でも行える対策として一度に大量の商品を注文することが挙げられるが、在庫が増えて管理負担が増大するというリスクも考慮しなければならない。

また、リテール業界が懸念している物流業界の問題は2024年問題だけではない。物流業界では少子高齢化や業界離れが依然として続いており、歯止めがかからない人材不足も大きな問題だ。さらに、コロナ禍を経てEC市場が急速に拡大したこともあって配送への需要が増え、配送方式に多様な要望が寄せられるといった消費者行動の変化も見受けられる。従来の方法で物流業と連携していては、これらの問題に対処することは難しいだろう。

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DXによる解決策

そこで問題の解決策としてリテール業界にお勧めしたいのがDXの積極的な導入である。DXは諸問題に対しどのような効果があるのだろうか。それぞれの問題について具体的な事例を挙げながら紹介する。

AIの需要分析で過剰在庫を防ぐ

過剰在庫を防ぐためには消費者の需要を正確に分析することが重要だ。売上に対し適切な量の仕入れができれば在庫がかさむ心配はない。そこで活用したいのが、AIを活用した需要分析だ。

とある小売業者は商品の需要予測にAIを活用する取り組みを進めている。同社が使い捨てカイロの需要をAIで分析したところ、算出された売上予測と実際の売上の誤差を1日あたりわずか2個に抑えることに成功した。このような精密な予測ができた理由は、同社の過去3年間の売上データと気象データの関係を1日単位で分析したためである。AIを活用しなければ、これほど大量のデータを分析し精密な予測を算出することは困難だっただろう。また、データ分析を属人化させることなく運用するためには、AIのように高精度で明確に分析できるソリューションが必要である。

物流業界の将来も見据えた共同配送プラットフォームの活用

配送の回数が減少するという問題については、共同配送という方法を検討したい。共同配送とは複数企業の荷物を同一のトラックで運ぶことを意味し、これまで仕入元ごとに別々で運ばれていた商品を一度にまとめることによって、小売側が要求するタイミングで商品を入荷することが容易になる。しかし、共同配送をするにあたって仕入元の企業同士が配送前に商品の出荷数などを連携する必要があり、その連絡をリテール側が請け負うことは負担の増大となるため本末転倒だ。

そこで注目したいのがデジタル技術を活用した共同配送プラットフォームである。各社の物流データを段階的に開示することで、AIによる共同配送のグループ分けやプランの作成、各社の荷量状況の共有が可能になる。現在、大手電気メーカーなどが共同配送プラットフォームの運用実験を行っているが、これが本格的に稼働するようになれば煩雑な調整対応などが不要になるため、物流業者もリテール業者も負担が増えることはない。

物流業界は人材不足やEC需要の急激な拡大といった問題への対応が求められているが、共同配送はこれらへの対策としても期待されている。物流業界の負担軽減はリテール業界にとっても望ましいことであるため、早期から注目して積極的に活用することをお勧めしたい。

リテール業界における今後のビジネスチャンス

リテール業界でDXがなかなか浸透しなかった背景には、小売店舗や業種ごとに抱える悩みがさまざまであり、ソリューションを導入したとしてもその悩みを包括的に解決することが困難だったことも影響しているだろう。しかし、2024年問題をはじめとした物流業界の抱える問題はリテール業者にとって優先的に解決すべき問題で、ベンダーとしては広くリテール業界に貢献するチャンスだと言える。この機会を逃さず、まずは2024年問題の解決に向けた提案から行うことで、今後のビジネス拡大を狙っていきたい。