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今のうちに知っておきたい「Wi-Fi 7」

掲載日:2024/03/12

今のうちに知っておきたい「Wi-Fi 7」

2013年12月に総務省告示第426号および同第427号が公布・施行され、日本国内で320MHzの帯域幅とWi-Fi 7による通信が可能になった。Wi-Fi 7対応のルーターが国内で発売されるなど、Wi-Fi 7は徐々に実用化に向けて動き始めている。そこで、Wi-Fi 7の特長や期待できる用途などを見ていこう。

Wi-Fi 7とは

Wi-Fi 7は、Wi-Fi 6の技術をベースにした無線規格だ。これまでのWi-Fi規格と比較すると通信効率が上がり、遅延が改善されることが大きなメリットである。これまでは「IEEE 802.11be Extremely High Throughput (EHT)」という名称で策定が進められていた。

Wi-Fi 7では1チャンネルあたりの占有周波数帯幅が広域化するので、データを電波として伝送する際、適した電気信号に変換する「変調方式」が多値化する。さらに、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯といった異なる周波数帯にまたがって、データを伝送する技術「マルチリンクオペレーション」により、高速通信が実現することにも注目したい。

Wi-Fi 7の性能をWi-Fi 6/6Eと比較!

それでは、Wi-Fi 7でアップグレードされる性能を見ていこう。

まずは最大通信速度だ。Wi-Fi 7の理論値での最大通信速度は46Gbpsで、Wi-Fi 6/6Eの4倍以上となる。また、一度に無線通信できる帯域幅が320MHzまで追加されたことで(6GHz帯のみ)、従来と比較して2倍速い高速通信が可能になった。

次に変調方式も変化する。Wi-Fi 6/6Eで採用されている1024QAMでは変調1回にあたり10ビットを伝送できるが、Wi-Fi 7で採用された4096QAMでは変調1回にあたり12ビット伝送できる計算になる。つまり、通信速度が1.2倍に増加するということだ。

さらにWi-Fi 6EとWi-Fi 7の周波数を比較すると、2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯と変わりはないが、マルチリンク機能が加わると周波数の利用効率が大きく向上する。

従来の方式ではそれぞれの周波数が独立しており、PCやスマホなどの端末からWi-Fiに接続する際、用途や環境によってどの周波数を使用するかを用途や環境によって選ぶ必要があった。しかし、マルチリンク機能では複数の周波数に同時接続することが可能なので通信速度と安定性を両立することができる。

加えて、一部の帯域を切り離して通信することができるプリアンブル・パンクチャリング機能も追加されている。近くで他のWi-Fiを使用している際、チャンネルの一部の周波数に干渉源が存在するとWi-Fiの速度が遅くなるが、この機能によって干渉が生じている一部の帯域を切り離して通信することで、広帯域での伝送を実現できるようになる。道路に例えると、工事中や事故があった際、全ての道路を通行止めにするのではなく、一車線のみを閉鎖するイメージだ。

Wi-Fi 7で実現できること

オフィスでは複数ユーザーの同時通信能力が上がるため、社内で同時にWeb会議が行われても、伝送遅延による映像・音声の乱れなどは少なくなるだろう。オンラインで授業を行う塾などでも通信のストレスが軽減されるほか、工場や建設・建築現場で人手不足を補うために導入されつつある遠隔操作もWi-Fi 7によって動作が安定するだろう。また、IoT機器やスマート家電は今まで以上に安心して利用可能になると考えられる。

高画質のストリーミングにも大きな期待ができ、4K、8Kの動画を複数視聴しても滑らかで高精細な映像が楽しめるようになる。Wi-Fi 7はVR・ARにも対応しているので、超高速かつ超低遅延な仮想現実・拡張現実をリアルに体験できるようになるかもしれない。

Wi-Fi 7対応のルーターは2024年2月にバッファローから発売されており、他の通信機器メーカーもこれに続くと見られる。さらにインテルは、Wi-Fi 7対応のデバイスをWi-Fi Alliance の認定スケジュール (2023年~2024年の期間) に合わせてリリースすると発表している。Wi-Fi 7が日常生活に浸透するのはまだ少し先になりそうだが、将来、Wi-Fi 7が標準になる可能性は高いため、今のうちから備えておきたい。