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AI機能を支える大規模言語モデルLLMの可能性

掲載日:2024/03/19

AI機能を支える大規模言語モデルLLMの可能性

先日、AIが有名人そっくりな返答をしてくれるサービスが発表されて話題となった。このサービスではチャットに文字を打ち込むと文章や音声で反応が返ってくるのだが、ここで活用されているのがLLMと呼ばれる言語モデルだ。LLMは生成AIと似た存在だが、どのような特徴があるのだろうか。

ビッグデータ活用にも有効なLLM

ここ数年でビジネスにビッグデータを活用するという概念が一般的になった。ビッグデータには構造化データと非構造化データの2種類が存在し、種類や特徴に合わせて整理したデータを構造化データ、そうでないものを非構造化データと呼ぶ。非構造化データはERPやSFAといったシステムで分析・管理が行えないため、ビジネスで活用することは難しい。

そんな非構造化データをビジネスで活用するための手段がLLMである。LLMは、膨大な量のテキストデータを学習することによって高度に自然な言語理解・生成を可能にした言語モデルだ。LLMを活用することにより、文章を非構造化データのまま分析できるほか、他の用途のため整理・変換するといったことも可能になる。

言語モデル自体は以前から研究が続けられていたが、精度に限界があり、人間とのテキストチャットによる自然な会話は困難であった。対して、LLMは学習に用いられたデータ量や計算量などがこれまでよりはるかに増加しているため、ビジネス用途にも耐えうる高度な文章を理解できるのだ。

LLMと生成AIの違い

LLMに似た存在として生成AIが挙げられる。LLMが文章の処理に特化しているのに対し、生成AIはテキスト以外にも画像や音声などの処理を行うことが可能だ。また、「ChatGPT」をはじめとした多くの生成AIは文章の処理にLLMを活用している。近年、生成AIの性能が急速に向上しているのは、LLMが発展したことが影響している。

LLMの活用事例

では、LLMは実際にどのような言語理解・生成が可能なのだろうか。具体的には、文章の作成や要約、校正といった処理ができる。また、文章から必要な情報を抽出してその内容を基に分類することも可能なほか、外国語の翻訳や、プログラム言語の修正作業もこなせる。

とあるEC系企業では、自社の提供するフリマアプリにLLMを活用したAIアシスタント機能を搭載している。これは、利用者が出品した商品の情報をAIが自動的に分析し、より早く・高い値段で販売するための改善点をアドバイスする機能だ。商品の紹介文や値段、特徴といった文章をLLMが分析することで、その内容をAIに理解させ、適切なアドバイスを生成してくれる。利用者にとっては専用の出品アドバイザーがいるようなものだ。利用者へ細やかなサービスを提供しながら、有人対応の場合と比較して大幅にコストを削減できることは、企業にとって非常に大きなメリットだ。

また、あるIT企業では、生成AIを活用した商談の自動化実験を進めている。この実験は、商談の音声データをAIが音声認識してその内容を要約・分析するというサービスの実現を目指すものであり、従来までの文字起こしサービスとは異なり、LLMが分析した内容をAIが理解・解析できる点が優れている。このように他のサービスを補完する形で用いられる例も多数存在する。

LLMの課題とベンダーが協力できるポイント

メリットの多いLLMだが、課題も存在する。例えば、LLMがたびたびハルシネーション(幻覚)という、未学習で答えが分からない質問に対して現実的なうそを回答してしまうことが指摘されている。顧客とのコミュニケーションをLLMが担うようなサービスでは、誤情報が伝わらないようにチェック機構を設けるなどの対応が求められる。

二重三重のチェックをフローとして組み込む際は、外部の人間による公平な目線が大きな役割を担う。LLMが社会に浸透する際にも、公平な目線でのアドバイスが重要になってくるだろう。