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これからのDXを支える 5G通信をあらためて解説

掲載日:2024/03/26

これからのDXを支える 5G通信をあらためて解説

日本での5G通信商用化が始まったのは2020年3月のことだ。4年が経った現在、企業のDX推進とともに5G通信の活用が広がっている。ここでは5G通信のメリットやコスト面での問題を確認し、DXにどのように活用されているのか、また今後どのような可能性があるのか見ていこう。

5G通信のメリット

5G(第5世代移動通信システム)には、超高速大容量、高信頼低遅延、多数同時接続という特長がある。

超高速大容量(eMBB)

4Gでの通信速度は100Mbps~約1Gbpsだったが、5Gでは最大20GBでの通信が可能になる。

日本では5G用に、Sub6帯とも呼ばれる3.7GHz帯と、4.5GHz帯、ミリ波と呼ばれる28GHz帯という3つの周波数が割り当てられている。特にミリ波は、周波数が高いため超高速大容量での通信が実現する。ただ、その一方で電波の届く範囲が狭く、障害物の影響を受けやすいというデメリットもある。

Sub6帯はミリ波と比較して速度こそ落ちるが、広域まで電波が届きやすく障害物に強いというのがメリットだ。ちなみに5G搭載のスマホを利用して高速通信を実感できない場合は、ミリ波が届いていないかスマートフォンがミリ波に対応していない可能性がある。

高信頼低遅延(URLLC)

5G通信では、最小送信単位を短くし、送信や復号などの時間を抑えることで通信時の遅延の減少を実現している。具体的には遅延が1ミリ秒(1/1000秒)となり、4Gの約10分の1に抑えられた。

多数同時接続(mMTC)

1台の基地局あたりでの同時接続できるデバイス数が大幅に増え、1平方キロメートルあたり100万台の端末に同時接続が可能になった。これは4Gの実に10倍の値である。スマートフォンやPCなどのデバイスのほか、IoTによりさまざまな物がネットワークにつながるようになった今、同時接続できる台数が増えたことは大きなメリットだ。

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DX×5G通信で実現できること

5Gはキャリア5G、ローカル5Gに分けられる。前者は通信各社と契約して利用する一般的な5G。ローカル5Gは、企業や自治体などが独自に5Gネットワークを構築し、利用するものだ。設備の整備や無線局免許の取得が必要になるが、他者の通信量が増えても影響なく高速通信が行え、閉域網での通信でセキュリティも確保できる。では、実際に5Gがどのような業界で活用されているのかを見ていこう。

製造業

製造業では、自律走行搬送ロボット(AMR)や無人搬送車(AGV)などを工場に導入して、工程を自動化・高度化させている。AMRの位置情報をリアルタイムで把握するために安定した通信が必要になるので、ローカル5Gも併せて導入した。

建設・土木

大手建設会社は、建設中のダムで自律運転重機を複数台連携させて、自動施工の実証実験を行い、実用化させる計画を発表している。工場や建物などでローカル5Gを導入することで、重機の制御・稼働をスムーズにすることが可能になる。

農業

産学官が連携して東北をタマネギ産地にするプロジェクトが進んでいる。GPSを利用してタッチパネルから操作できる大型トラクターの導入や、現地の生産者が装着するスマートグラスを通して遠方にいる研究者や専門家が遠隔で指導する試みが行われている。このプロジェクトでもローカル5Gが活用されている。

スポーツ中継

とあるケーブルテレビ局は、AIとローカル5Gを組み合わせて野球場での試合の撮影・放映を自動化する実証実験を行う予定だと発表している。

空港

成田空港では、自動運転レベル4での遠隔監視型自動運転の導入に向けて、通信冗長化設計のためにローカル5Gの実証実験を行っている。

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導入しやすいローカル5Gの開発も進む

ローカル5Gを導入するには、基地局やネットワークの構築、免許取得、保守管理、5Gデバイスなどで数千万円の費用が必要になるため、大企業以外は導入が難しいという現実がある。

そのため、多くのメーカーが低価格でローカル5Gを導入できるソリューションを発表している。2023年に発売されたとあるローカル5G用アンテナシステムは、従来と比較すると約4割の費用を削減できるほか、電波を光ケーブルで分配するシステムであることから基地局を大がかりに配備する必要がない。ほかにもローカル5Gを試験導入できるレンタルパックが提供されるなど、比較的導入しやすいソリューションの開発が進んでいる。

今後もさまざまなサービスが登場するのは間違いない。5Gに興味をもつお客様に対して、適切なソリューションを提供できるように新たな情報に注目したい。