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AIの特性を生かしたDXとは

掲載日:2024/04/16

AIの特性を生かしたDXとは

2018年に経済産業省が「2025年の崖」を提唱しDXの必要性を訴えてから、DX推進に向けた動きが活発になっている。しかし、IMD(国際経営開発研究所)が2023年に発表した「世界のデジタル競争力ランキング」を見ると、日本は32位と過去最低の順位を記録。さらなるDXの推進が求められる中で注目したいのが、AIの積極的な活用だ。

DX推進におけるAI活用の重要性

2023年7月に有限責任あずさ監査法人が発表した調査によると、DXに取り組む企業の約80%が「DX推進のために重要と考えているデジタル技術」にAIを挙げている。

変化の速い現代のビジネス環境で、市場の変化を察知しサービスを改善していくには、今まで以上のスピードと正確性が求められる。そのためにはDX推進が必要だが、DXをより効果的に進めるに当たって、AIの活用が重要視されているのだろう。

AIの得意・不得意分野とは

確かにAIの活用はDX成功の鍵になり得るが、必ずしも期待する効果が得られるとは限らない。AIを効果的に活用するためには、AIの特性を把握することが不可欠だ。

AIが得意とするのは、ディープラーニングによってビッグデータを学習し、大量の情報を取り扱うことだ。統計データの学習により数値予測することも可能で、売上予測や商品の需要予測などを高精度で算出できる。またルール化された単純作業を人間より速いスピードで、正確に処理できるため、AIを活用することで製品の検品や在庫管理などを効果的に行うことが可能だ。

一方で、AIが苦手としているのは少ないデータを基にして推論を出すことである。学習量が少ないほど、AIが出す推論には正確性に問題が生じてしまう。また、漠然とした指示で行動することや感情や感覚、文脈の理解が必要なコミュニケーション、クリエイティブな作業もAIにとって苦手な業務だとされている。近年は絵や音楽を生成するAIに注目が集まっているが、これは過去の作品データを学習したうえで生成しているに過ぎない。

AIの特性を把握できれば、既存システムとの連携や組織内のDX体制の整備を最適に行うことに役立つほか、人間の力だけでは発想できない回答を導くことも可能になる。自社のIT環境や課題にマッチしたAIについて、専門企業に相談するのも良いだろう。

AIを活用したDXの取り組み事例

ここからは、AIを活用して効果的なDXに取り組んでいる企業の事例を紹介していこう。

ある廃棄物処理業を営む企業では、収集車の効率的な配車ルート設計のために、2014年からAIを活用している。同社では以前、ベテラン社員の経験を頼りに配車ルートを作成していたが、この方法は時間がかかるうえに属人的で、ブラックボックス化しやすいという問題があった。そこでAIを導入したところ、属人化の解消だけでなく、車両の追加や配車ルートの重複を防げたことから、二酸化炭素の排出量を従来と比べて10%以上削減する効果も得られたという。

同社の取り組みは、まさにAIを活用したDX化に成功し、そのうえで「人間の力だけでは発想できない回答を導く」というAIの特性を発揮することができた例である。

また、ある金属加工メーカーでは、製品の製造体制を柔軟にするため、AIを活用したスマートファクトリーへ移行する計画を進めている。製造物の品質管理にAIカメラによる検査システムを導入したところ、従来は2人で担当していた業務を1人に人員削減することに成功した。

同社の取り組みは、AIの得意分野である自動化を生かした事例だ。人員削減を実現させただけでなく、不良発生率を計画開始前と比較して60%削減するという大きな効果を得ている。

AIはDX推進において補助的な役割を担うだけでなく、DXを加速させる中心的な存在になり得る。またAI活用のためには業務の仕組みや組織体制を見直す必要があるため、その過程で従来の無駄や非効率を発見するきっかけにもなるだろう。