金融業

金融DXの現状を分析!
金融業界ならではの課題とDX事例を紹介

掲載日:2024/04/23

金融DXの現状を分析! 金融業界ならではの課題とDX事例をご紹介

昨今は業務の効率化やサービスの質向上を目的に、DX推進に取り組む企業が増えている。同時にその業界ならではの課題に直面し、なかなかDXを進められない企業も多い。今回は金融業界にスポットを当て、業界特有のDXの課題や取り組み事例を紹介していく。

金融業界のDXに関する取り組み

金融業界のDXは他業界よりも比較的早くから進んでいる。

「情報通信白書令和3年版(2021年7月公表)」によると、金融・保険業界の約45%が2020年度以前からDXに取り組んでいる。実際に、同文書によると運輸・郵便業界では約17%、医療・福祉業界では約9%しか2020年度以前にDXに取り組んでいなかったようで、金融業界のDXの取り組みが比較的に進んでいることが分かる。

一方で、DXに向けた取り組みについて「実施していない、今後も予定なし」と回答した金融・保険業は35.7%にも上ることが明らかになっている。あくまで2021年時点のデータではあるが、3分の1以上の金融・保険業がDX未実施かつ実施予定もないという回答だったのだ。

金融業界が抱えるDX課題

金融業界が抱えるDX課題の一つがレガシーシステムの存在だ。レガシーシステムとは古い技術や仕組みで構築されているシステムのことで、運用コストの肥大化や、他システム・データとの連携が困難になるといった問題を抱えている。特に金融業界は取り扱う情報の機密性が高く、一回のエラーやミスも許されない。そのため、使い慣れた現行のシステムから新システムへの移行に踏み出せず、レガシーシステムに依存している企業が多い。

実際に、2017年に行われた「デジタル化の進展に関する意識調査」では、「既に老朽システムはない」と回答した企業の割合が金融業だけ0%だった。このことからも金融業界特有のDX課題が見て取れる。

強固なセキュリティや顧客からの信用が特に重要な金融業界において、既存システムの改修は大きなハードルであると考えられるため、現在も金融業界におけるレガシーシステムの利用率は決して低くないことが推測される。また、DX人材、IT人材の不足なども課題となっている。

「レガシーシステム」についての詳細はこちら!

金融業界のDX取り組み事例

さまざまな課題を抱えつつも、金融業界はDX推進の取り組みを進めている。ここでは金融業界におけるDX取り組み事例を見ていこう。

生成AIによる業務効率化

個人、企業問わず幅広い金融ソリューションを展開する大手金融機関では生成AIを用いた業務効率化の動きを加速させている。同企業では2023年6月に社内向けテキスト生成AIを導入し、同年7~8月には生成AIのアイデア創出・募集のための短期プログラムを実施した。さらに2023年末から生成AIアプリの開発を進め、事務手続照会および与信稟議作成の効率化に取り組んでいる。

デジタル人材の育成

大手の都市銀行ではグループ全体で定めた方向性に沿ったDXの取り組みを進めている。同社では、DXスキル学習プログラムを全従業員向けに展開しており、役員を含む同社グループ従業員3万人超が受講。企業風土の改革からDXを進めている。そのほか、データサイエンティスト育成を目的に研修やイベントも実施している。

DXによるサービスの質向上

DX人材育成や顧客との接点、業務プロセスにおけるデジタル活用を進めているある大手保険会社。同社はDXに関するさまざまな取り組みが評価され、経済産業省などが選定する「DX銘柄」に2年連続で選定されている。

DX銘柄選定で評価されたDXの取り組みの一つが、ドライブレコーダーのデータ活用による事故削減の取り組みだ。同社の子会社では、通信機能付きドライブレコーダーを貸与する自動車保険を販売。ドライブレコーダーから得られた150億km超の運行データを活用して、さらなる事故削減に寄与する新サービス開発を進めている。

金融業界の課題解決に役立つ提案を

金融業界はさまざまな課題を抱えつつも着実にDXを推進中だ。こうした金融業界のDX推進の動きは多くの企業、そして他の業界に影響を及ぼす可能性が高い。また、今回取り上げた事例はやや大掛かりなものだったが、紙文書の電子化やWeb商談の導入など、比較的導入ハードルの低いDXの取り組みも存在する。金融業界のDX動向に目を向けつつ、企業の課題解決に資するDX提案を積極的にしていきたい。