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政府認定! セキュリティ・クリアランス制度を知ろう

掲載日:2024/06/04

政府認定! セキュリティ・クリアランス制度を知ろう

セキュリティ・クリアランスは、国家機密などの秘密にすべき情報にアクセスできる資格者を認定する制度だ。セキュリティ・クリアランス制度の創設に向けた法案が、2024年5月9日に行われた参議院の内閣委員会で可決した。本記事では、セキュリティ・クリアランス制度とはどのような制度なのかを見ていこう。

セキュリティ・クリアランス制度の必要性

セキュリティ・クリアランス制度とは、漏えいすると日本の安全保障に支障をきたす恐れがある情報を「重要経済安保情報(Classified Information=CI)」に指定し、その情報にアクセスできる人を限定する制度である。他国では同様の法律が定められていて、日本も足並みをそろえるかたちで創設に向けて歩みを進めている。

いまや、安全保障は防衛や外交のみならず、経済や技術分野にも不可欠だ。国家安全保障のための「情報」は一層重要なものであるため、国としてセキュリティ・クリアランス制度を含む情報保全の強化を図って情報漏えいのリスクに対応する必要があるだろう。

情報保全制度に関する既存の法律には「特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)」があり、これが施行されたことで同盟国や同志国との情報共有は円滑になった。しかし、日本政府が特定秘密として指定できる範囲が防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止に限定されていて、経済安全保障に関する情報は対象外だった。そのため経済安全保障上重要な情報について、特に経済関係省庁や防衛産業を超えた民間でセキュリティ・クリアランス制度などの情報保全の強化が必要とされていたのだ。

セキュリティ・クリアランス制度で定められること

令和6年1月17日に内閣官房が発表した『参考資料』を引用すると、次の二点がセキュリティ・クリアランス制度の概要となる。

● いわゆる「セキュリティ・クリアランス」とは、国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報に対して、アクセスする必要がある者のうち、情報を漏らすおそれがないという信頼性を確認した者の中で取り扱うとする制度。
● ①政府としての重要な情報を指定し、②政府の調査を経て信頼性の確認を受けた者の中で取り扱うという厳格な管理や提供のルールを定めた上で、③漏えいや不正取得に対する罰則を定めるのが通例。

経済安全保障上重要な情報の候補としては、以下のようなものが挙げられている。

上記の情報にアクセスする必要がある人は、信頼性が確認されたうえでアクセス許可される。信頼性についての調査では、本人と家族が特定有害活動やテロリズムに関係していないか、犯罪歴や懲戒歴がないか、情報の取り扱いでの違法行為はないか、といった経歴に加えて、薬物や飲酒での問題や精神疾患による影響の有無や、与信情報などが調べられる。

調査を受けた人のプライバシーは守られ、認定が下りなかったとしても評価の結果が外に漏れることを防ぐため、評価者は配慮を求められている。さらに、調査のために用いられた個人情報は長期保管が禁じられる。

一般企業への影響

ここまでの内容では一般企業との関係性は薄いように感じるかもしれないが、同制度はさまざまな企業のニーズも受けて制定されたものだ。

例えば、海外の企業から協力依頼があったにもかかわらず「機微に触れる」という理由で十分に情報を得られなかったというケースがあった。政府間の枠組みでセキュリティ・クリアランスを保有していればより踏み込めるのではないか、と議論されたのだ。

セキュリティ・クリアランス制度があれば、サイバーリスクやインシデントが発生した場合は政府や諸外国が保有している情報が共有され、セキュリティ・レベルの向上につながるのではないかと期待されている。また、将来的に衛星やAI、量子など次世代の技術を国家間で共同開発しやすくなるのではないか、という意見もあった。

つまり、経済や技術分野でセキュリティ・クリアランス制度を保有していれば政府に認定されて情報保護が行われているという「信頼の証」として、対外的に通用できるようになるだろうということだ。

違反者には罰則も

まだ具体的な内容は周知されていないが、情報漏えいをした者に対する罰則も定められるようだ。

現行の法律で情報漏えいに関する罰則には以下のようなものがあり、セキュリティ・クリアランス制度でも同様の罰が与えられることになりそうだ。

● 不正競争防止法:10年以下または2,000万円以下
● 特定秘密保護法:10年以下または1,000万円以下
● マイナンバー法:4年以下または200万円以下

具体的な法案内容は現在のところ発表されていないため、報道や政府広報をチェックし、セキュリティ・クリアランス制度について知識を深めていきたい。