製造業

2024年は復活の年!
半導体の最新動向をチェックしよう

掲載日:2024/06/04

2024年は復活の年! 半導体の最新動向をチェックしよう

半導体不足や在庫超過などを乗り越え、2024年は半導体復活の年になると言われている。そこで今回は半導体業界の最新動向とともに、半導体需要の増加が見込まれるAIやスマートフォン、自動車産業などの分野について解説する。

2024年 半導体業界の最新動向

2023年11月に世界半導体市場統計(WSTS)が行った市場予測によると、2024年の半導体市場規模は前年比13.1%増の5,884億ドルに上るという。2023年の市場規模は5,201億ドル(前年比9.4%減)のため、2024年の市場拡大規模は600億ドル以上になるだろう。

日本では、熊本県菊陽町で世界的な半導体ファウンドリーTSMCの工場が始動したことが大きな話題を呼んでいる。第1工場は既に2024年2月に開所式が行われ、2024年末から本格稼働する予定だ。さらに第2工場の建設も決まっており、日本政府は総額最大1兆2,000億円を補助する方針を決めている。

海外に目を向けると、アメリカでは政府が半導体メーカーへの支援強化に乗り出しており、インテル社に85億ドル(約1.3兆円)の補助金と最大110億ドルの融資を、TSMCのアメリカ子会社へは66億ドルの補助金を出す方針だ。対中国も念頭に、アメリカ国内では半導体の生産能力を強化する動きが出てきている。

一方、その中国については「2024年の半導体生産能力は860万wpm(前年比13%増)となり、2024年世界の半導体生産における中国のシェアが拡大する見通し」と報告するレポートが発表されている。このように各国における半導体業界の動きは活発2024年も活発になるのは間違いないだろう。

半導体需要の増加が見込まれる分野

今後、半導体需要の増加が見込まれる分野を紹介する。

AI

ある大手半導体メーカーでは、2027年にAI半導体市場規模は4,000億ドルを超えるという見方を示した。近年の生成AIの躍進は半導体需要が増している要因の一つとなっている。

AIの半導体需要で大部分を占めるのは、データセンター向けのGPUである。そんなAI半導体業界で抜群の存在感を示しているとある企業は、GPUの需要に応えることで、生成AI市場の80~90%前後の市場シェアを占めている。また同社は2024年3月のイベントで、自社の従来製品より最大30倍に及ぶ回答作成能力を持つGPUを発表した。今後もAI半導体市場に大きな影響を及ぼすことだろう。

自動車分野(電気自動車・自動運転)

半導体は自動車にとっても不可欠な部品の一つだ。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に半導体不足によって大きな打撃を受けた自動車業界だが、現在は生産の回復が確実に進んでいる。

今後の自動車業界における半導体需要は、普及が進むだろう電気自動車および自動運転領域で伸びると見られる。電気自動車には電子機器を制御する半導体が不可欠であるし、自動運転技術においても半導体の性能は重要で、予測・計算の精度や処理のレベルやスピードが求められている。また、経済産業省が2024年3月に自動運転などに向けた半導体技術の開発に対して約10億円の支援を表明したことからも、半導体の進化は電気自動車・自動運転の発展に直結していると言えるだろう。

スマートフォン

携帯電話半導体市場について「2024年~2029年の携帯電話用半導体市場のCAGR(年平均成長率)は7.49%と予測される」という調査結果があり、今後もスマートフォン向け半導体需要は旺盛であることが予想される。

スマートフォン向け半導体で注目したいのが、画像や映像を撮影する半導体であるイメージセンサーだ。日本のある大手電機メーカーが発売しているイメージセンサーは、グローバルNo.1のシェアを誇る。今後の日本の半導体産業を語るうえで、国内のスマートフォン向け半導体は見逃せない。

IoT

IoTの市場規模は年々拡大しており、「2024~2031年のCAGR(年平均成長率)は23.3%に上る」とするレポートも確認される。

IoTは家電製品や自動車など、さまざまなモノとインターネットをつなぐ技術である。モノには通信技術を備える必要があり、その際に欠かせないのが半導体だ。IoT技術の進展によってインターネットにつながれるモノが増加すれば、その分IoTの半導体需要も増加することが予想される。

今後の半導体業界の展望

半導体業界は今後も拡大を続け、2030年には市場規模が2022年の2倍の1兆ドル超とも予想されている。

半導体業界拡大の要因の一つと予想できるのが、やはりAIの進化だ。2045年にはAIが人間の知能を超えると呼ばれる転換点である、シンギュラリティが起こるとささやかれるなど、AIが発展すればするほど半導体へのニーズも高まるはずだ。

コロナ禍での半導体不足が需要の増加に対しての供給遅延につながったり、半導体の進化がAIやPCなどの製品の性能に直結したりするように、半導体業界の動きはITサービス・ソリューションにも影響を及ぼす。ベンダーとして半導体業界の動きは注意して見ておきたい。