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「人型」の利点とは!?
ヒューマノイドロボット活用の現状

掲載日:2024/06/18

「人型」の利点とは!? ヒューマノイドロボット活用の現状

近年のロボット技術の発展は目覚ましく、一般社会への普及もそう遠い未来ではないと予測されている。事実、介護現場や教育現場で活用されている例も報告されているのだ。そこで本記事では、人型ロボット、通称ヒューマノイドロボットにはどのような活躍が期待されているのかを見ていこう。

技術の進化がヒューマノイドロボットの追い風に

従来、ロボットが人型であることは大きなデメリットだと考えられており、ヒューマノイドロボットの実現は困難だという意見もあった。その理由としては、例えばロボットの二足歩行には高度かつリアルタイムのバランス調整が求められ、整備されていない道路を移動する場合は四輪型の方が優秀だと考えられること、そして工場や倉庫での作業は必ずしも人型の手で行われる必要はなく、従来の製造業用機械などでも十分に業務を進められるだろうことが挙げられていた。

しかし近年は制御技術が向上し、従来は不可能だと考えられていた作業を高いレベルでこなすヒューマノイドロボットが続々登場している。例えば、ロボット開発の先駆けとして有名なアメリカのとある企業が開発したヒューマノイドロボットは、砂利道や山道の歩行はもちろん宙返りやダンスも難なくこなす。

また、とあるロボット開発企業が制作したヒューマノイドロボットは、実際に倉庫の棚から荷物を取り出して運ぶ作業の様子が公開されている。同社の幹部は「このような作業は従来の車輪で動くロボットやベルトコンベヤーでも自動化できる範囲だが、その場合はスペースを確保するために作業場所の構造を見直す必要がある。一方、ヒューマノイドロボットは移動のために広いスペースを必要としないため、工事などを要さない」と利点をアピールしている。

さらに、近年は「人型であること」が利点となる状況での活用に注目が集まっている。例えば災害現場で倒壊した建物の中から人を救助する場合、がれきを解体するための車体の大きなショベルカーなどの重機では建物の中に入って作業することはできない。そこで小型のヒューマノイドロボットを活用すれば、がれきの下をほふく前進したり、建物内の階段やはしごを登ったりすることで人命救助ができる。もちろんこのような作業は人でも可能だが、危険な場所での作業をロボットに任せられるという利点がある。

ヒューマノイドロボットの価値向上のワケ

ヒューマノイドロボットの活用によって危険な仕事を避けられるという利点があるだけでなく、人手不足の解消も期待できる。

例えば、介護施設における健康体操のインストラクターを務めるヒューマノイドロボットの例も報告されている。このロボットは入居者の前で体操のお手本を見せるだけではなく、100人以上の顔と名前を覚え、時事ニュースや天気などの情報も交え、それぞれの入居者に適した話題で会話ができるという。施設の職員はロボットに業務を代行してもらうことで他の業務を進めることができたほか、コロナ禍では感染の心配がないコミュニケーション相手として、ロボットが入居者を大いにリラックスさせたようだ。高齢の入居者にも抵抗なく接することができた要因は、その高性能さとともに、人型であることが大きな影響を与えていると考えられる。

また、とある自治体では小学校の英語教育にヒューマノイドロボットが活用されている。このロボットは19カ国語をネイティブスピーカーと同様に話すことができるため、児童と英語でコミュニケーションを取ることが可能だ。小学校の英語教育では発音の間違いなどを気にして対人会話を避ける児童が多く見受けられるが、ロボット相手であれば積極的に接してくれるという。機械との会話はPCやタブレットを使用することでも代替可能だが、児童は人型ロボットだからこそ興味を持ち自主的に学ぼうとしてくれる。

小学校での英語教育は2020年から必修化されたが、多くの自治体で英語教員の数が足りず負担が増えていると報道されている。ロボットの活用は人員確保という面においても、効果を発揮する選択肢になり得るだろう。

ヒューマノイドロボットのこれから

人材不足の現状もあり、ヒューマノイドロボットはこれから当たり前の存在として受け入れられることだろう。それと並行して、日々進歩するAI技術がロボットの制御に活用されると考えられる。

ただ、懸念されるのがネットワークに接続されたヒューマノイドロボットに外部から攻撃をしかけ、悪用するという犯罪の発生だ。ヒューマノイドロボットが犯罪の温床になることは防ぐ必要があるため、新しいロボットに注目しつつそのセキュリティにも目を配ることは、来たるべき社会の実現において非常に重要なポイントである。