組織改革

ダイバーシティというチャレンジが未来に開いた価値創造を可能にする
~人財育成コンサルタント 組織変革ファシリテーター
株式会社グロウス・カンパニー+ 代表取締役
山岡仁美氏~

掲載日:2024/06/18

「山岡仁美氏

人手不足が常態化する中、浮上したのが多様な人材の獲得・活躍を実現するダイバーシティ経営だ。とはいえ、ダイバーシティ概念の理解も含め、実現への道筋は不透明な部分も多い。早くから多様性という観点に基づく人材育成、組織作りに取り組んできた山岡 仁美氏に取り組みのポイントをお聞きした。

サステナブルとダイバーシティの関係

BP:性別や年齢、人種や国籍、障がいの有無や性的指向、宗教や信条、価値観などを問わず、多様な人材を活かすダイバーシティ経営が近年大きな注目を集めています。早くから多様性を重視した人材育成、組織作りに取り組んでこられた先生は、こうした動きをどうご覧になっていますか。

山岡 仁美氏(以下、山岡氏):ダイバーシティという言葉自体は十数年前から聞かれはじめていますが、真正面からダイバーシティに取り組む企業が目立ち始めたのはここ数年のことですね。それに伴い、人材確保などの観点で成果を挙げている企業もダイバーシティでは、平等ではなく公平であることを目指し、行うべきは、価値観に応じて多様な働き方を選べる制度の整備増え始めている状況です。

BP:企業がダイバーシティに目を向ける背後には、やはり人材不足、人手不足という大きな課題があると考えていいのでしょうか。

山岡氏:確かに人材不足や人手不足もその理由の一つです。しかしそこだけに目を向けると、企業がダイバーシティに取り組むべき理由が見えにくくなってしまう懸念があります。これまで職場の問題に気付いても見て見ぬ振りをする、あるいは不利益を被った当事者が我慢するほかないという企業文化、組織風土は決して珍しくありませんでした。しかし、近年の重要な経営課題の一つであるサステナビリティ(持続可能性)において最重要視される変革や新たな価値創造において、こうした組織風土は実はデメリットでしかありません。変革や新たな価値創造の前提となる、現状理解や問題認識の見落としにつながりかねないからです。積極的にダイバーシティに取り組まれる企業の担当者の方々とお話しすると、やはりサステナビリティに関する問題意識を強くお持ちであることが多いですね。

一方で、求職者の価値観も近年大きく変わりつつあります。企業の規模ではなく、「自分を活かし社会に寄与できるのか」「その組織文化に共感できるのか」など、企業の規模などよりむしろ企業文化や組織風土を重視する求職活動が注目されています。ダイバーシティ実現に向けた組織改革は、若い世代の価値観にもマッチしています。こうした変革が人材確保においても大きな役割を果たすという言い方はできると思います。

BP:なるほど。ダイバーシティの追求が結果として人材や人手の確保にもつながるというわけですね。とはいえ中小企業の場合、ダイバーシティに本気で取り組んでいる企業はまだ少ないように思います。

山岡氏:たしかに着手できていない、推進できていないという企業も多いのですが、優れた事例も出始めています。一例が障がい者雇用の取り組みです。私が知るある事例では、地域の障がい者を目にした従業員の発案で障がい者雇用の取り組みがスタートし、その受け入れに先立ち、業務フローの全面的な見直しを実施しています。見直しは結果として誰もが働きやすい職場の実現につながっています。これも新たな価値創造の一つですよね。

難民人材の雇用も注目したい取り組みの一つです。さまざまな事情から日本で暮らす難民には、母国の弁護士資格や高度なITスキルを持つ優秀な人材もいます。外国籍の人材で、まだ日本語が上手に話せない方を採用する場合、社内コミュニケーションまで含めた業務の見直しが求められます。難民人材の採用は、日本人にはない彼らの発想が得られるだけでなく、硬直化した企業文化を変えていくことにもつながるわけです。

DE&IからDEIBへ強く求められる本質の理解

BP:次にダイバーシティを企業はどのように捉え、実践していくべきかお聞きしたいと思います。

山岡氏:ダイバーシティは近年、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)というワードで説明されることが増えています。インクルージョンとは包括的にという意味ですが、ここで注目いただきたいのは、イコーリティ(平等)ではなく、エクイティ(公平)という言葉が使われている点です。

イコーリティを一口に言えば、背の高い人も低い人も、女性も男性も同じ条件を適用しますよという考え方です。ところが、体力がある人とない人や、日本語が上手に話せる人とそうではない人に同一ルールを適用すれば多様性の確保は難しくなります。それに対しエクイティは、一人ひとりが力を発揮できるよう取り組んでいるという考え方になります。

さらにグローバルでは2年ほど前からビロンギングを加えたDEIBという言葉が一般化しつつあります。ビロンギングとは直訳すると帰属意識になりますが、この言葉から「社訓の唱和」や「社歌の合唱」などを連想してしまうと明らかに意味を取り違えてしまいます。

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