IoT・AI

ChatGPT Edu登場!
加速するChatGPT活用の実態に迫る

掲載日:2024/07/23

ChatGPT Edu登場!加速するChatGPT活用の実態に迫る

2023年、文部科学省は「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」や「大学・高専における生成 AI の教学面の取扱いについて」といったガイドラインを発表しており、これからの教育においてAIの活用が不可欠であることが示されている。そんな中、より教育に特化した新サービスのChatGPT Eduが登場し注目を集めている。

教育機関用にカスタムされたChatGPT

2022年11月にOpenAI社からChatGPTがリリースされて以降、企業や行政でもAIを活用する動きが進んでいる。さらにOpenAI社は2024年5月、新しいAIモデルとしてChatGPT Eduを発表した。これは大学生や教職員向けにカスタマイズされたAIモデルであり、従来のChatGPT以上に教育機関での活用が期待されている。

最新モデルの機能を安価に利用可能

ChatGPT Eduの特長としてGPT-4oを搭載していることが挙げられる。このGPT-4oはChatGPTの最新版有料モデルであり、無料版のGPT-3.5よりも音声や画像の情報を高速かつ複雑に処理することが可能だ。また、GPT-3.5の学習期間が2022年1月までであるのに対し、GPT-4oでは2023年10月までの情報を学習しており、最新情報についても回答が可能であることが特長である。

ChatGPT Eduの料金は2024年7月末時点では公開されていないが、GPT-4oよりも安価であることが発表されているため、高性能なGPT-4oを安価に活用したい教育機関にとっては最適なサービスである。

教育機関での利用を前提とした強固なセキュリティ設計

ChatGPT Eduには、SSOやSCIMといったログインID管理システムに加えてアクセス権限をグループ単位で管理できる機能が搭載されており、これまでOpenAI社が提供してきたサービスよりもセキュリティが強化されている点も特長の一つだ。

イギリスのある企業が2023年に発表した調査によると、世界の高等教育機関のうち、ランサムウェアによる攻撃を受けたのは2022年では約64%だったものの、2023年には約79%に増加している。そのため強固なセキュリティが搭載されているChatGPT Eduは、サイバー攻撃が深刻化する教育機関にとって適した機能と言える。

参考資料:教育機関におけるランサムウェアの現状 2023 年版

OpenAI社が発表しているChatGPTの活用事例

ChatGPT Eduは教育機関で活用されることを前提に、利用状況に応じて機能のカスタムが可能だ。実行できるカスタムに関しては未発表であるが、OpenAI社はChatGPT Edu開発の基になった教育現場でのカスタム事例を紹介している。

ビッグデータ分析を瞬時に終わらせる

アメリカのとある大学の教授は薬物の過剰摂取を減らす取り組みを行っており、地域住民の膨大な健康データの分析を進めている。同教授はこの分析にChatGPTを活用して、データセットを統合・分析するシステムを構築。結果的にそれまで数週間かかっていた作業を数秒で実行することが可能になった。

対話型の機能を生かし語学テストを補助

別のアメリカの大学では、ChatGPTを活用して学生のドイツ語学習をサポートするチャットボットを開発した。このチャットボットは、学生がドイツ語で話しかけるとその内容を分析し、修正点を指摘してくれる。このフィードバックデータは、教員が学生の語学力をテストする際の基準にも用いられており、成績評価の時間短縮にも役立っているという。

参考資料:Introducing ChatGPT Edu

ChatGPT Eduとこれからの教育機関

既にChatGPTがさまざまな分野で活用されていることを踏まえると、ChatGPT Eduはその安価なコストとセキュリティによってこれまで以上に教育機関で活用されるだろう。一方で生成AIが出力する情報は不確実なものも多く、学生に誤った知識を教えてしまう可能性も考えられるため、その際に求められるのが教員の知識や経験に基づいた適切な修正だ。

これからの教員など教育機関のスタッフには、AIのミスや誤情報などを把握して正していく能力も求められることになるだろう。そのためにはAIの特性を理解し、常に最新の情報を収集しておく必要がある。ベンダーは、これらの情報やテクニックを提供するなどして教育分野に貢献していくことが求められる。