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競争に勝つための「攻めのDX」とは

掲載日:2024/07/30

競争に勝つための「攻めのDX」とは

多くの企業が推進しているDXは、業務の効率化やリスク管理などをメインとした「守りのDX」の傾向がある。ただ、市場で差別化を図って競争力を強化するためには「攻めのDX」の実践が鍵となるだろう。今回は、日本のDXの現状とともに「攻めのDX」についても考えていこう。

日本企業のDXはどこまで進んでいるのか

IPA(情報処理推進機構)が2024年6月27日に公開した「DX動向2024」を見ると、日本企業のDXへの取り組みは比較的順調に進んでいるようだ。DXについて、一部または全社的に取り組んでいると回答した企業の割合は2021年度調査時の55.8%という数値から73.7%に上がっている。

さらに同内容を従業員数別に調査したところ、従業員数が多いほどDXが進んでいるという結果も明らかになっている。

ただ、DXの取り組み段階をデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3段階に分けた調査からは「デジタイゼーション」こそ進んでいるが、「デジタライゼーション」や、真の「デジタルトランスフォーメーション」の実現にはまだ届いていない企業が多いことが分かる。

さらに、同調査で「DXに取組む予定はない」「DXに取組むか、わからない」と回答した多くは中小企業だ。その理由としては、DXに関する知識や情報、人材の不足やDXのメリットが分からないことなどが挙げられており、中小企業をはじめ、より多くの企業がDXの実現にはいまだ課題が残されていることは理解しておきたい。

「攻めのDX」とは

DXが目指すのはデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革することであり、その取り組みの中で自社の業務効率化を目的にしたものや、リスク対策を行うものなどは「守りのDX」と言われている。それに対して、既存事業に加えて新たな価値を創出したり、新規事業を含めたビジネスモデルを改革したりするのが「攻めのDX」である。

ただし、守りのDXと攻めのDXは方向性が全く逆というわけではない。例えばDXの3段階の取り組みのうち、デジタイゼーションからデジタライゼーションまでは「守り」で、その先のデジタルトランスフォメ―ションが「攻め」だと考えることもできる。まずは守りのDXからスタートして徐々に攻めのDXに移行する、という進め方ではなく、初めから攻めのDXを計画し、その過程として守りのDXとして社内システムのデジタル化などを進める、という考え方が良いだろう。

攻めのDXの柱となるのは、マーケティングとデータ活用である。ITシステムの刷新はあくまでもデータを最大限に生かすための道具にすぎないことは意識しておきたい。

「攻めのDX」の進め方

攻めのDXの推進には達成するべきビジョンを定めるところから始めるのが良いだろう。

利益の向上を目指すのか、競争力を強化するのか、競合他社との差別化をどう図るのか……。定めたビジョンに向けて、市場調査の結果や競合との状況を考慮したうえでDX推進のプロセスの策定を行う。ただ、データの整備やDXのためのITシステム刷新には時間も費用もかかるため、中長期的な視点で取り組む必要がある。

次に行うのは人材の確保だ。ITシステム刷新はアウトソーシングしても構わないだろうが、DXを進めるうえで重要となる、戦略の立案やデータ分析などのプロジェクトを進める人員は社内で確保したい。

それができたらシステムの導入と開発の段階に入る。「DX動向2024」によると、DXが進んでいる企業はシステムを内製化している傾向にあるという。これは内製化することが重要という意味ではなく、必要なシステムを無駄なく社内で開発できる環境であるということが理由だろう。ただし中小企業では新たなシステムを社内で開発することは難しいため、DX推進に有用なSaaS製品などを導入することでカバーしよう。

システムが整備されたら実行のフェーズに移る。攻めのDXはシステム導入後にすぐ成果が目に見えるものではないため、PDCAを繰り返しながら試行錯誤をしていくことになる。近年のAI技術からも見て取れるようにIT技術は日々進歩しているため、最終目的に向かって柔軟に対策をしていくことが大切だ。

コロナ禍や大災害のように、予想できない事態が発生することは今後も十分に考えられる。そのような事態により、市場に潮目の変化が起こることもあり得るだろう。不測の事態への対策も考えておくと良いのではないだろうか。