IoT・AI

大注目のエッジAIを徹底解説!

掲載日:2024/08/06

大注目のエッジAIを徹底解説!

AIの活用範囲が広がる中、「エッジAI」に注目が集まっている。エッジAIとは、従来のクラウドサーバーで処理を行うクラウドAIとは異なり、クラウドサーバーで行っていた処理をデバイス上で直接実行する技術だ。今回は、エッジAIと従来のクラウドAIの違いはどこにあるのか、またエッジAIはどのような場面で活用されているのかを見ていこう。

エッジAIが注目される理由

現在、産業やIoTで用いられるAIプラットフォームのほとんどは、クラウドAIによって提供されている。

AIは基本的に、データを基に学習・解析し、アウトプットしたデータをデバイスに送る、という流れで動作している。

例えば工場の生産ラインで不良品を検出するために、クラウドAIが利用されることがある。この場合は、工場内のカメラで撮影されたデータを、ネットワークを通じてデータセンターへ送信。送られたデータはデータセンター内のクラウドコンピューティングのAIモデルに傷の有無などを推論させて、その結果をPCなどに出力するという流れだ。

しかしこの方法は、処理の遅延やネットワークを介したやりとりによる情報漏えいのリスク、ネットワーク通信量の増大によるコストの肥大化などの問題がある。

そこで注目されているのが「エッジAI」である。エッジ(edge)とは端を意味する言葉で、ユーザーが利用するデバイスで直接を行うAI処理を指す。

エッジAIは、デバイス上でAIモデルを実行することで、ネットワーク経由でデータを送信する必要がなくなり、クラウドAIで懸念されているリスクが低減できる。活用事例にはIoTデバイスや自動運転車に搭載されているデバイスなどが代表例として挙げられる。

エッジAIのメリットとデメリット

エッジAIのメリットは、デバイスに学習済みモデルを利用したAI推論を組み込んで処理できる点であり、これによりデータの秘匿性が向上することが期待できる。さらにリアルタイムで処理できることで遅延が生じず、別のデバイスにデータを出力する際は演算結果のみ送信すれば良いためデータサイズも抑えられる。

また、デバイス上で処理が完結するので、インターネットに接続していなくても、オフラインで処理が可能だ。

一方、エッジAIのデメリットとして、容量が限られ高速プロセッサーが搭載できないことが挙げられる。ほかにも複雑な処理を行うのが難しいケースもある。

導入や管理、運用に関するコストは、利用するデバイスにエッジAIを組み込み、そろえるハードウェアの台数が少なく収まれば費用は抑えられる。しかし、デバイス自体の購入やハードウェアの改修のために、かえってクラウドAIよりコスト高になってしまう可能性もある。管理や運用も、システムを導入すれば追加費用が抑えられることもあるが、専門の人材やメンテナンス費用がかさむことも考えられるため注意したい。

今後の展望と活用事例

インドの調査会社Fortune Business Insights社のレポートでは、エッジAIの市場規模は2021年に119億8,000万米ドルと評価しており、今後2029年までには1,074億7,000万米ドルに成長するという予測がされている。

特に期待されているのは、AIカメラや産業用ロボット、自動運転などでの活用だ。例えば監視カメラの用途では、侵入者の顔がシステムに登録されているか否か、不審な動きがないかなどを検出し、即時に管理人や警備員に知らせることができるため、認知症の方の徘徊(はいかい)が問題になっている高齢者施設などにも応用できる。

工場では、画像や音声データを基に不良品や機械の故障を察知したり、重機やロボットが人間に近づきすぎるのを防ぐためにアラートを流したり、といった活用方法がある。分析データは人間が確認できるだけでなく、ロボットやほかの機械に反映することも可能なので、これによりスマートファクトリーの実現が近づくことにつながる。

自動車や公共交通機関などの自動運転は、わずかな遅延でも大きな事故を引き起こしかねない。周囲に車や人が近づいたときに事前に認識してブレーキをかけるなどの対応が求められるため、車載のAIカメラへの搭載は必須と言える。

スマートフォンやPCでは、デバイス上でAI処理が行える製品が次々と発売されている。デバイスの小型化や高性能化が実現していることを考えても、エッジAI機器・ソリューションの市場拡大は今後も勢いを増してくだろう。