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経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」の内容とその対策方法

掲載日:2024/09/10

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」の内容とその対策方法

既存システムが障壁となり、競争力が低下することによって2025年以降に経済的損失が生じる可能性を示した「2025年の崖」問題。2025年が目前に迫る今、企業として何に取り組むべきなのか。本記事では2025年の崖の概要や要因、対応策についても考えていく。

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「2025年の崖」問題とは

「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(以下、DXレポート)で初めて使用された言葉である。DXレポートでは、今後DXが推進されず、日本企業の既存システムの複雑化・ブラックボックス化などの状態が解消されなかった場合、業務効率や国際競争力の低下を招き、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生する状況を「2025年の崖」と表現して警鐘を鳴らしている。

また、既存システムの保守や運用を行うIT人材の不足によって、システムトラブルやデータ流出、サイバー攻撃などのリスクが高まる点も課題として挙げている。

「2025年」とされている背景には、日本企業の多くで利用されている基幹系システムのサポートが2025年までに終了予定だった点や、これまでシステム保守を担ってきた世代が定年を迎え、人材が不足するタイミングと重なる点が挙げられている。基幹系システムのサポートについては、2027年までのサポート継続が発表されたものの、急ぎ対策が求められることに変わりはない。

DXが推進されないリスクと課題を示す「2025年の崖」問題は、多大な経済的損失を生む可能性があることからも、日本企業が喫緊で取り組むべき課題であると言える。

「2025年の崖」問題につながる要因

DXレポートでは、「2025年の崖」問題を引き起こすDX推進の課題もいくつか示されている。ここでは、その中から特に押さえておきたい二つの要因を紹介する。

既存システムのレガシー化

DXレポートの中で「2025年の崖」問題の特に大きな要因として挙げられているのは、既存システムのレガシー化である。DXレポートでは、技術面が老朽化したり、システムが肥大化・複雑化、ブラックボックス化したりしたシステムを「レガシーシステム」と定義しており、このシステムの置き換えがDX推進の大きな課題になっていると指摘している。実際、日本企業の約85%がレガシーシステムを抱えており、その中の約7割の企業で、レガシーシステムがDX推進の足かせになっていると感じているとのことだ。

またIT人材が不足する中で、レガシーシステムの保守・運用に人材を割くことで、貴重な「IT人材資源」の浪費になっている点も指摘されるなど、さまざまな面でレガシーシステムがDX推進の足を引っ張っているとされている。

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ユーザー企業とベンダー企業の関係

DXレポートではユーザー企業とベンダー企業の関係も、「2025年の崖」問題の要因として挙げられている。

具体的には、ユーザー企業がベンダー企業へシステム開発を全て委託しており、社内に開発ノウハウが蓄積しにくい構造が指摘されている。DX推進にはユーザー企業側がシステムの課題を把握し、強いコミットメントを持つことが重要であるが、そこまで取り組めているユーザー企業は多くないのが現状である。

「2025年の崖」問題への対応策

先述の内容から「2025年の崖」への危機感は持ちつつも、何から手を付けるべきか分からないという企業も多いのではないだろうか。そこで「2025年の崖」を引き起こす要因として紹介した二つの要因への対応策について、参考例を紹介していく。

レガシーシステムの刷新

「2025年の崖」の要因の一つに既存システムのレガシー化があることは先述したが、これを克服するにはレガシーシステムの刷新が不可欠だ。レガシーシステムを刷新する際のポイントはいくつかあるが、そのうちの一つが、「新たなデジタル技術の活用」である。DXレポートでも、ビジネスモデルの変化に迅速に追随できる新たなデジタル技術の導入は重要であると述べられている。

例えば、レガシーシステムの刷新に合わせてクラウドシステムを導入することで、常にシステムやセキュリティを最新の状態にするといった方法も有効であると言える。

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ユーザー企業とベンダー企業との新たな関係の構築

ユーザー企業とベンダー企業との、新たな関係構築もポイントとなる。DXレポートでは、ユーザー企業がDXを推進することで、新たなデジタル技術の活用によるビジネスモデル変革への投資が可能になる、と触れられている。ユーザー企業がデジタル技術に投資し、活用する余裕ができることから、ベンダー企業にも最前線のデジタル技術の分野に足を踏み入れることが求められるだろう。そのためベンダー企業はこれまでのように受託業務に特化するのではなく、AIなどの最前線の技術を活用した、クラウドアプリケーション提供型のビジネスモデルに転換していくことが必要だとされている。

「2025年の崖」の克服にはユーザー企業のDX化が大きな鍵となるが、DX推進のためにはベンダー企業側の変化も求められるのだ。

DX実現に向けた今後の取り組み

DX推進は、全ての企業が取り組むべき喫緊の課題ではあるが、すぐに実現できる内容ではないことは多くの企業が感じているはずである。そこで、まずはITシステムの現状と問題点を把握し可視化してみると良いだろう。それを踏まえてDXを実現するためのシナリオを策定し、問題を着実に解決する計画を立てるところから始めて「2025年の崖」問題に備えてみてはどうだろうか。