IoT・AI

激化する開発競争
世界の生成AI勢力図を解説!

掲載日:2024/09/17

激化する開発競争世界の生成AI勢力図を解説!

総務省が発表した「令和6年版情報通信白書」によると、2023年に約670億ドルだった世界全体の生成AI市場規模が、2032年には約 1.3 兆ドルに成長することが予測されている。各社から提供されるさまざまなサービスがしのぎを削っている昨今、その勢力図はどのような状況になっているのだろうか。

業界トップランナーのOpenAI社

ChatGPTを提供するOpenAI社は、2024年5月に発表した最新モデル「GPT-4o」の普及に力を入れている。同モデルは特に視覚・聴覚分野での理解力が高く評価されているため、画像や動画コンテンツから情報を収集するなど、多様で高度な活用法が期待されている。

また2024年8月には、利用者向けに GPT-4oのファインチューニング(タスクやユースケースに応じて学習済みモデルの一部または全部を追加学習させ、独自に調整すること)を可能にする機能が追加された。これにより業務内容に応じてGPT-4oをより最適に使用できるようになったため、従来の生成AIでは業務補助が困難だった業種でも導入のハードルが下がることが期待されている。

米メディアの報道によると同社の売上高は年換算で34億ドルに達し、前年度の倍以上の数字を記録している。生成AIブームの火付け役であるChatGPTを提供する企業であるだけに、今後も業界のトップランナーとして注目を集めることが予測される。

Amazon社からの資金投入で注目を集めるAnthropic社

OpenAI社のライバルとしてたびたび名前が挙がるAnthropic社は、2024年6月に最新モデルの「Claude 3.5 Sonnet」を発表した。Claudeシリーズは文章生成や推論に強いとされており、同モデルはその特長を引き継ぎつつ高度な理解や処理を備えているほか、魅力的な新機能が追加されている。

特にArtifacts(アーティファクト)と呼ばれる新機能では、利用者がAIと対話するだけで画像やプログラミングコードを生成できるため、従来は作成のために専門的な知識や経験が必要だったコンテンツを誰でも作成可能になるとして注目を集めた。

Amazon社はClaudeシリーズの生成AIを高く評価しており、2023年9月に約12.5億ドル、2024年3月に約27.5億ドルをAnthropic社に投資している。またAWSのサービスをはじめ、法人向け生成AIサービス「ChatSense」でも利用できることから、今後も勢力をさらに拡大する可能性が高い。

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クリエイティブ系のサービスが魅力のGoogle社

Google社は2024年8月、同社が提供している生成AIモデル「Gemini」について、アップロード可能なPDFの最大容量を従来の300ページから最大1,000ページもしくは2GBまで拡大したと発表した。従来は容量不足で分析ができなかったデータも取り扱えるようになるため、書籍や行政文書の要約などでも活用機会の増加が見込まれている。

また、同社は高性能かつ高速度な画像生成AI「ImageFX」や、DJモードと呼ばれる機能でリアルタイムに音色を編集可能な音楽生成AI「MusicFX」なども無料で提供している。ただし2024年9月現在、これらのサービスの商用利用については利用規約に明記されていないため、今後の動向を見守る必要がある。

国内の生成AI動向

ここまで海外発の生成AIについて紹介してきたが、2024年終盤は国内企業が提供する大規模言語モデル(LLM)にも注目したい。例えばNTTデータは、 11月から国産LLM「tsuzumi」をMicrosoft Azure上で提供することを発表した。「tsuzumi」は日本語理解力が高いうえに学習や推論に必要なエネルギー消費量が低いなど、国内での活用に適したサービスとして注目を集めていたが、利用には専用の環境が必要だったため普及が進んでいなかった。しかし、国内で広く使われるMicrosoft Azureへの対応をきっかけに活用の広がりが期待されている。

生成AIの活用に必要な基盤整備も進んでいる。2024年1月には産学連携で生成AI活用のルール作りや実装支援を行う一般社団法人「GenAI」が発足。また2月には経済産業省主導で生成AIの開発力を強化することを目的としたプロジェクト「GENIAC」が発足した。

「GENIAC」については、開発事業者とユーザー企業のマッチングイベントを開催するなど精力的な活動が続いている。AIの活用や開発を考えている企業は、知識を深めておくのが良いだろう。今後も変化の激しい生成AI市場の動向を注視し、ビジネスチャンスを探っておきたい。