BCP対策

BCP策定率は過去最高を記録!
国内企業の策定状況と策定時のポイントを紹介

掲載日:2024/09/24

BCP策定率は過去最高を記録!国内企業の策定状況と策定時のポイントを紹介

昨今は自然災害だけでなくサイバー攻撃による企業への被害が話題になることが多く、企業のBCPに対する関心はますます高まっている。しかし、必要な作業の煩雑さから策定を先送りにしている企業も多いのではないだろうか。そこで、全国の企業を対象にした意識調査を基に、BCP策定が進まない要因と策定時のポイントを解説する。

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意識調査から分かる企業のBCP策定状況

2024年は能登半島地震や羽田空港での航空機着陸事故、某グループ企業への大規模なサイバー攻撃などが発生。このような未曽有の危機に瀕した際に自社を守るため、BCP策定の必要性を強く感じた企業は多いのではないだろうか。既に介護事業所では2024年4月からBCP策定が義務化されていることからも、企業のBCPに対する関心は高まっている状況だ。

介護事業所でのBCP義務化に関してはこちら!

実際のBCP策定状況はどのようになっているのだろうか。2024年5月に帝国データバンクが調査した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」のアンケート結果によると、「BCPを策定している」と回答した企業は全体の19.8%であり、過去最高の値を記録。さらに、「策定中」「策定を検討中」と回答した企業は30.2%となった。これらに「策定済み」という回答を含めた策定意向がある企業の合計が50%に達するのは2020年以来4年ぶりである。

また同資料からは、BCPに対する企業の意識も読み取ることができる。

中小企業は「替えの効かない存在」の喪失を懸念

BCP について「策定意向あり」とする企業に対して、事業の継続が困難になると想定しているリスクに関して尋ねたところ、約71%が「自然災害(地震、風水害、噴火など)」と回答し、割合が最も高かった。次いで「情報セキュリティ上のリスク(サイバー攻撃など含む)」が約44%、「感染症(インフルエンザ、新型ウイルス、SARSなど)」が約40%と続いた。

興味深いのは、「経営者の不測の事態 (経営者自身が被災し出社できないなど)」と回答した割合が、大企業では約12%なのに対し、中小企業では約20%とやや開きが大きい点である。また、「設備の故障」「取引先の倒産・廃業」「取引先の被災」といった項目についても、中小企業が回答した数字の割合の方が大きい。このことからも、中小企業が優先して対策すべきリスクは、経営における代替不可能な存在を失うことだと分かる。

BCP策定のリソース確保が急務

一方、BCPを「策定していない」と回答した企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」という回答が 約42%でトップだった。次いで「策定する人材を確保できない」が約34%、「策定する時間を確保できない」が約28%と続いた。

この質問では、大企業と中小企業の回答に大きな割合の差は見られない。企業規模にかかわらず、スキル・ノウハウや人的・時間的リソースの確保が難しいという意見が大多数を占めている状態だ。

BCP策定時のポイント

2024年3月にガートナージャパン株式会社が発表した資料「企業が事業継続計画 (BCP) の策定や見直しのために押さえておくべき3つのポイント」によると、BCPの策定には「事業を優先順位付けし、合意を形成する」、「事業の完全停止を避け暫定的に継続させるための手順の策定/見直しを行う」などが重要だと指摘されている。前述のBCPを策定していない理由を尋ねたアンケート結果を踏まえると、中小企業に求められるBCP対策はまず、事業の優先度を明らかにし、人的リソースを再配置することだ。

先に述べた某グループ企業への大規模なサイバー攻撃が発生した際も、同社は早急に事態を把握し、社内システムや社内ネットワークへのアクセスを物理的にシャットアウトしている。その影響でサービスが長期間停止するなどの問題が発生したものの、サイバー攻撃の被害拡大を防いだ点においては高い評価を得ている。事業の優先順位付けやそのための手順策定は、万が一の際に迅速な対応をするためには不可欠になるだろう。

BCP策定の際は、厚生労働省や自治体、各団体が導入している補助金や助成金を活用するのも良いだろう。実際に東京都や大阪府などでは、多くの自治体に中小企業を対象としたBCP策定の補助金が設定されている。また、能登半島地震の際には、雇用調整助成金の特例措置が実施されていることから、万が一損害があった場合でも雇用継続を手助けする措置が受けられる可能性があることも覚えておきたい。

多くの企業はBCP策定の重要性を理解しながらも、時間や人材の確保まで手が届かずに取り組みが進んでいないため、外部から第三者の目線でアドバイスできる存在は大きな意味を持つ。外部ベンダーとして企業のBCP策定に貢献し、ビジネスの足掛かりとしていきたい。