製造業
実用化に向けて前進中!
国内メーカーの自動運転ビジネスの取り組みを紹介
掲載日:2024/10/08
2018年12月、Waymo(ウェイモ)社が世界で初めて自動運転タクシーを商用化したことを機に、世界中で自動運転ビジネスが加速している。そこで今回は自動運転のレベル分けについて解説し、日本の自動車メーカーの自動運転ビジネスの取り組みを紹介していく。
自動運転のレベル分け
国土交通省が発表している自動運転のレベルは0~5の6段階で区別されている。
レベル0は「運転自動化なし」、レベル1は「運転支援」、レベル2は「部分運転自動化」、レベル3は「条件付運転自動化」、レベル4は「高度運転自動化」、レベル5は「完全運転自動化」となっている。レベル1~2の運転操作は人間主体であり、レベル3~5はシステム主体となる。
前述したWaymo社の自動運転タクシーは、自動運転レベル4に相当する。日本でも2023年5月に国内初となる自動運転レベル4での自動運転移動サービスが開始されたほか、2025年に開催される「EXPO 2025 大阪・関西万博」で予定されている、会場内外での自動運転レベル4でのバスの運行も注目を集めている。
国内メーカーの自動運転ビジネスへの取り組み
それでは、国内の自動車メーカーはどのような自動運転ビジネスに取り組んでいるのか。大手4社の取り組みを紹介していく。
トヨタ自動車株式会社
2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックの選手村内での送迎では、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)の自動運転レベル2で走行するシャトル『e-Palette』が導入された。『e-Palette』にはオペレーターが同乗しているが、車内に運転用のアクセルやハンドルは存在せず、3Dマップやセンサーなどによって自動運転を実現している。
また同社の取り組みとして注目したいのが、建設が進む実験都市「Woven City」だ。トヨタはこのWoven Cityを「「街」の形をしたトヨタの新しいテストコース」と呼び、今後は自動運転の技術開発を加速させる方針だ。
そのほか、トヨタが出資するMONET Technologies株式会社は、2024年度後半に東京の有明地区などで自動運転レベル2での移動サービス事業を開始するプレスリリースを発表。将来的にはレベル4での展開を目指すとされている。
本田技研工業株式会社
本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)は2021年3月に自動運転レベル3の技術が搭載された市販車『LEGEND(レジェンド)』を世界に先駆けて発売した実績を持つ。レベル3は一定の条件下で全ての運転操作を自動にできるレベルであり、『LEGEND』でも高速道路などが渋滞したときなど一定の条件下であれば、ドライバーがハンドルから手を離した状態でもシステムが運転操作する機能を搭載している。
また2024年2月には、自動走行する搭乗型マイクロモビリティ『CiKoMa(サイコマ)』の一般向け実証実験を行った。『CiKoMa』にはホンダ独自の協調人工知能「Honda CI」が搭載されており、目的地やおすすめの観光地などについて『CiKoMa』とコミュニケーションを取りながら、気軽かつ自由に移動体験ができる点が特長だ。
ホンダは、2025年中に『CiKoMa』をレベル4に相当する無人自動走行へ移行することを目指し、遠隔監視システムの確立を進めている。
日産自動車株式会社
日産自動車株式会社(以下、日産)では2023年に自動運転レベル2相当の機能を持つ「Pro PILOT(プロパイロット)2.0」を搭載した自動車『セレナ』を発売した。『セレナ』では、高速道路でのハンズオフドライブや車線変更追い越し支援などが可能である。
また日産は2024年5月に、レベル2の段階での自動運転の実証実験の様子を公開している。メディアの報道によると、実証実験に使用された車両には14個のカメラと10個のミリ波レーダーなどの機器が搭載されており、周囲約150mの状況を検知しながら自動走行するという。なお、日産は2027年度に自動運転レベル4での移動サービスの事業化を目指すロードマップを公表している。
株式会社SUBARU
株式会社SUBARU(以下、スバル)では、渋滞時のハンズオフアシストや渋滞時の発進アシスト機能などを搭載する高度運転支援システム「アイサイトX」を搭載した自動車を販売している。同システムは自動運転レベル2に相当する。
また2024年8月には、協調型自動運転の実証実験を開始した。協調型自動運転とは、通信を通じて車載センサー検知外の情報を入手することで、より高度な自動運転を実現する仕組みのことである。自動運転システムを構築するためには各種先進技術のほか、大量のデータのスピーディな送受信を可能とする通信設備が求められるため、スバルは国内自動車メーカーとしては初めて、テストコースにローカル5G設備を導入した。今後のスバルの自動運転システム開発にも注目したい。
国内自動車メーカーは着々と自動運転ビジネスを進めており、政府が推進する「Society5.0」の実現に向けても重要な役割を担うだろう。自動運転ビジネスが発展すると下請け企業にも影響が及ぶ可能性は十分にあり得るため、今後数年の間に来る可能性が高いビジネスチャンスに備えておきたい。