IoT・AI
AI PCの新規格「Copilot+ PC」とは
掲載日:2024/10/15
2024年5月、Microsoft社はAI機能を搭載するPCの新規格「Copilot+ PC」を発表した。特長は、AI を中心に据えてPC全体を完全に再構築した点だという。そこで今回は、AI処理に特化したCopilot+ PCの特長や新機能について解説する。
AI PCの最先端を走る「Copilot+ PC」
AI PCとはインテル社が提唱する新たなPCのカテゴリーであり、「『Microsoft 365 Copilot』に対応していること」「『Copilotキー』を有すること」「NPUを有すること」という三つの条件を満たしたPCを指す。AI処理に特化したプロセッサーであるNPUを搭載しているため、ローカル環境でも高速かつ省電力でAI処理が可能だ。
AI PCの条件を満たす製品は既に複数発売されているが、その中でも特に注目を集めているのが、Microsoftが提供するAI PCの新規格である「Copilot+ PC」だ。
「Copilot+ PC」として認証されるには、Windows 11の最小システム要件に加えてMicrosoft社が定めた基準をクリアしたプロセッサーやRAM、ストレージのハードウェア要件を満たしていることが条件である。
要件を満たしたデバイスでは高度なAI機能を利用でき、ほかのAI PCにはない複数の独自機能も搭載されている。
『Copilot+ PC』の新機能
ほかのAI PCにはない『Copilot+ PC』だけで利用できる機能を紹介する。
リコール
リコールとはPC上で表示・再生したコンテンツを検索する機能で、PC上で作業した情報がスナップショットとして自動的に保存され、AIによって整理されてインデックス化される。ユーザーは手がかりとなるキーワードを入力することで、必要な情報を検索可能だ。
ただ、有識者から第三者がリコールにアクセスできる可能性があるなど、セキュリティ面の不備を指摘する声が相次いだため、2024年6月に提供されたプレビュー版での提供を急きょ取りやめることとなった。同機能はセキュリティを強化したうえで、再度2024年10月からプレビュー版の機能として提供される予定となっている。
コクリエイター
コクリエイターとは、スケッチのような簡単な絵を描くだけでAIが高精度な画像を生成する機能で、Windows標準アプリのペイント上で利用できる。
例えば、コクリエイターのテキストボックスに作りたい画像を表すプロンプトを入力し、その後ペイントに簡単な線や色を描くだけで、AIが自動でプロンプトどおりの画像を生成してくれる。Microsoft社が公開したコクリエイターの紹介ビデオでは、木やロボットの簡単な絵を描いたところ、プロが描いたようなイラストへ変換されて表示される様子が紹介されている。
プロンプトから画像を生成することは従来の画像生成AIでも可能だったが、画像のタッチや構図、色使いなどといった特徴をその都度プロンプトで指定する必要があった。一方で、コクリエイターは直感的なイメージを読み取り、そのまま高精度な画像に変換してくれるためアイデアを容易に表現することが可能になったのだ。
ライブキャプション
ライブキャプションとは、PCから出力される音声をリアルタイムで翻訳し、画面上に表示する機能だ。従来のリアルタイム翻訳アプリは基本的にアプリ内の音声だけを翻訳するものだったのに対し、ライブキャプションはあらゆるアプリ、プラットフォームで翻訳が可能な点が特長だ。
なお、2024年10月現在、ライブキャプションは日本語を含む44の他言語から英語への翻訳にのみ対応している。翻訳の対応言語が限られるのは残念だが、英語でリアルタイム翻訳したものを字幕として表示する機能もあり、今後のアップデートでさらに活用の幅が広がることが期待されている。
ビジネスシーンでの利活用の展望
Copilot+ PC は2025年10月に予定されているWindows 10のサポート終了によって、今後さらに注目を集めると見込まれている。Copilot+ PCを含む多くのAI PCへの買い替えが進めば、ビジネスでのAI活用がより当たり前になる日が近い。
従来、AIのビジネス活用はハード面や性能面で制約があり、基本的にはクラウドかつ大企業での運用中心といった考え方が多かったが、Copilot+ PC をはじめとしたAI PCはこの状況を一変させる可能性がある。ベンダーとしては、今後はオンプレミス、そして中小企業といった環境に対してもAIソリューションの訴求に力を入れていきたい。