クラウド
社内クラウドサービスの最適化へ
「FinOps」がもたらすメリットとは
掲載日:2024/11/05
クラウドサービスの全盛期とも言える昨今のビジネス環境において、注目を集めているのがクラウドサービス利用の最適化を図る「FinOps(Financial Operations)」だ。本記事ではFinOpsの概要や導入のメリット、押さえておきたいポイントについて解説する。
FinOpsとは
「FinOps」とは、クラウドサービス利用の最適化を図る手法のことである。具体的には、IT部門や財務部門などの各部門と経営層が連携し、クラウドサービスによる効率化とコスト削減を目指すことが主な取り組みとなる。
総務省が2024年6月に公表した「令和5年通信利用動向調査の結果」によると、クラウドサービスの利用企業はすでに約8割に及ぶ。しかしこれらの企業の中には「サービスが乱立して無駄なコストがかさんでいる」、「むしろ手間が増える一方で一元管理ができていない」などの問題を抱える企業も少なくない。
こうした課題に向き合いつつ、企業を取り巻く環境の変化や社内の経営方針に合わせて、利用サービスの縮小や投資拡大を柔軟に行うことで、ビジネス価値の最大化を目指すのがFinOpsである。
FinOps導入が企業にもたらす3つのメリット
FinOpsの導入は企業にどのような影響をもたらすのだろうか。ここではFinOps導入による主な3つのメリットを解説する。
クラウドサービスにかかるコストの最適化
FinOpsでは、ビジネス価値の最大化を目的に、現行のクラウドサービスの利用コストの見直しを行い、コスト削減の効果も期待されている。具体的なコスト最適化の例を挙げると、長期間の利用を前提に大幅割引が受けられる『リザーブドインスタンス』のプランに切り替えることや、サーバーレスの運用形態を採用することが挙げられる。
サーバーレスとはサーバーの運用管理を専門企業に一任し、システム開発者がサーバーを意識せずに構築・運用できる運用形態のことだ。サーバー運用に割いていた人員や時間を削減することができるほか、サーバーの稼働時間に応じて課金される仕組みのため、運用コスト削減にも有効である。
セキュリティリスクの把握
FinOps導入チームとセキュリティ部門が連携することで、クラウドサービスに関するさまざまなデータから、使われていないクラウドサービスや過剰なリソースを割いているデータを把握することができる。セキュリティ部門は、無駄なコストのかかっているクラウドサービスのデータが共有されることで、適切な対策を講じられるだろう。このように、FinOps導入チームとセキュリティ部門との連携により、クラウドセキュリティの強化にも寄与する。
社内連携の強化による事業の加速
先述のとおり、FinOpsはIT部門や財務部門などの各部門と経営層が連携して実施される。この連携を通じて組織全体の行動指針やゴールを統一することで、事業のさらなる加速が期待できる。
FinOps導入時のポイント
FinOps導入には、クラウドサービスの利用状況の可視化や部門間と経営層の連携などさまざまな業務が発生するため、相応のリソースを割く必要があることは覚えておきたい。
一方で、FinOps導入が遅くなるほど、機会損失が大きくなるのもまた事実である。実際、現在の日本企業ではまだFinOpsの考え方は浸透していないため、今の段階からFinOpsを導入することでクラウドサービス活用の面で競合他社と差別化を図ることができる。ベンダーとして、クラウドサービスを数多く使用している顧客へは、ぜひFinOpsの概念やメリットを丁寧に伝えておきたい。