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事業者とユーザー双方にメリットをもたらす
本人確認の仕組み「eKYC」とは

掲載日:2024/11/12

事業者とユーザー双方にメリットをもたらす本人確認の仕組み「eKYC」とは

「eKYC(electronic Know Your Customer)」とは、本人確認手続きをオンライン上で完結できる仕組みのことである。日本では、2018年11月に犯罪収益移転防止法が改正され、全ての手続きをオンラインで行うことが可能になったことで導入が認められた。今後導入する企業が増えることが見込まれるeKYCのメリットやリスクなどを紹介していく。

eKYC(electronic Know Your Customer)とは

「eKYC(electronic Know Your Customer)」とは、オンライン上でも本人確認手続きが完結できる仕組みだ。eKYCには、犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)により定められた4種類の認証方法が定められている。

「ホ」方式は本人確認書類の画像と本人の容貌の画像送信、「ヘ」方式は本人確認書類のICチップ情報と本人の容貌の画像送信、「ト」方式は本人確認書類の画像またはICチップ情報の送信、「ワ」方式は公的個人認証サービス(マイナンバーカードのICチップ)に保存された電子証明書情報によって、それぞれ認証が行われる。

このようにオンラインで本人確認ができる仕組みという点は共通でありながらも、その方法には大きく4つの種類に分けられる点をまずは押さえておきたい。

日本でのeKYCの導入背景

日本では2018年11月の犯収法の改正により、eKYCを用いた本人確認が認められた。

それまでの本人確認方式は、対面での「本人確認書類の掲示」や、非対面の場合は「本人確認書類の郵送+転送不要郵便」の組み合わせなどで実施されており、事実上オンラインで本人確認を完結させることはできなかった。

一方で、世間でのオンラインサービスの普及を背景に、従来の本人確認方式では利便性の低さや効率面で課題があった。ほかにも日本がeKYCを認める以前から、海外ではテロやサイバー攻撃対策の観点からもオンライン上で本人確認が行えるeKYCの整備が進んでおり、こうした諸外国の動向も受けて日本でもeKYCが認められることになった。

eKYC導入後は、事業者側にも書類管理コストの低減が見込める点や、コロナ禍を契機とした非対面取引の拡大などの背景も重なり、株式会社矢野経済研究所が実施した「eKYC/当人認証ソリューション市場に関する調査(2023年)」では、eKYC市場の規模は2026年度には2021年比で約3倍の約197億円規模になることが予測されている。

eKYCが活用される場面

具体的にeKYCが活用される場面は、例えば金融機関における口座開設やクレジットカードの発行、携帯電話の回線契約など多岐にわたる。いずれの場面においてもeKYCを導入したことによりオンライン上で完結するスムーズな本人確認を実現している。例えば、金融機関における口座開設では、郵送手続きなどを行わずに、スマートフォン上で本人確認書類の読み込みや顔写真を撮影するだけで、簡単に本人確認を完結させることが可能だ。

事業者視点でのeKYC導入

事業者視点でのeKYCを導入するメリットとリスクについて以下で紹介する。

事業者視点でのeKYC導入のメリット

事業者視点でのeKYC導入のメリットとして、本人確認手続きの効率化やコスト削減が挙げられる。具体的には、書類の確認やコピーなどの事務作業の時間が短縮されることで、人件費の抑制にもつながるほか、ペーパーレス化の実現により、郵送料や書類管理コストを抑えられる点もポイントだ。

また、eKYCの導入は、ユーザーにとっても本人確認作業の負担軽減やサービス活用のハードルが下がる効果も期待できる。

事業者視点でのeKYC導入のリスク

eKYCのリスクとして、まず個人情報の漏えいが挙げられる。個人情報をオンライン上で取り扱う以上、情報漏えいへの対策も不可欠となる。そのためeKYC導入にあたってはセキュリティ管理の厳格化や社員向けセキュリティ教育の徹底など、情報漏えいリスクを少しでも下げる取り組みが重要だ。また、場合によっては、本人ではないにもかかわらず本人と認証されてしまう「誤判定」も起こり得る。誤判定リスクに対しては、デジタルでの判定だけでなく、人間の目による目視のダブルチェックを行う対策も導入する際には検討したい。

eKYCには前述のようなリスクはあるものの、対策を行うことでリスクを低減することは可能である。一方でeKYCを導入しないことによって、本来削減できるはずのコストを抱え続けてしまうことや、ユーザー離脱が起きてしまうといった多大な機会損失につながる可能性もある。ベンダーとしてはeKYC導入のメリットやリスクなどについて、顧客へ積極的に情報提供をしていきたい。

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