IoT・AI
近年、注目を集める「AI半導体」
その概要と今後の展望を紹介!
掲載日:2024/11/19
生成AIの用途拡大やAI処理の精度向上に伴い「AI半導体」という言葉を耳にする機会が増えたのではないだろうか。AI半導体はChatGPTや自動運転などのAI処理を効率化させることを目的に開発された半導体のことを指す。本記事ではそんな注目を集めるAI半導体の種類や特長、今後の展望について解説する。
AI半導体とは
AI半導体とは「AIの演算処理に特化して設計された半導体」のことである。また、AI半導体は役割に応じて大きく4種類に分かれており、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)とGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)に分類される。ここではこれら4つのAI半導体の特長を見ていこう。
CPUの特長
CPU(Central Processing Unit)とは日本語で「中央演算処理装置」とも訳され、コンピューター上の計算(演算)や制御などを司る装置のことである。CPUはコンピューター全体に指示を出す役割から、人間の頭脳に例えられることも多い。なお、高性能なモデルであっても8~10程度の少量のコアで動く仕組みであるが、後述するGPUやFPGAと比べても汎用性が高く、複雑な計算が得意な点や特定のタスクを集中して処理する能力が高い点が特長だ。
GPUの特長
GPU(Graphics Processing Unit)は「画像処理装置」の略称であり、画像や映像などの描写処理を得意とする装置である。少なくとも数百コア、場合によっては4000コアと大量のコアを搭載しており、単純な計算の並列処理能力に優れているため、CPUよりも処理速度が圧倒的に高速な点が最大の特長だ。GPUはその特長から、複雑かつ膨大な計算を高速で行うスーパーコンピューターにも搭載されているほか、AIによる推論の処理にも活用されている。
なお、これまでのPCはCPUとGPUがそれぞれ独立した装置として扱われてきていたが、近年ではGPUがCPUに統合され、処理性能の最適化と高効率化を図った機種も増えている。
FPGAの特長
FPGA(Field Programmable Gate Array)とは、論理回路の書き換えが可能な集積回路である。ユーザー側には影響を与えずに、開発者が目的に応じて仕様変更やカスタマイズを何度でもできる柔軟性が特長だ。またFPGAは並列処理にも特化させることができるため、大量の並列計算が求められるAIによる情報処理にも活用されている。
ASICの特長
ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とは、日本語では「特定用途向け集積回路」と訳され、半導体メーカーが顧客のニーズに応じて、特定のアプリケーションに特化して設計・製造する集積回路のことを指す。特定のタスク専用に回路を構成することで、そのタスクにおいて高速処理が可能になることが特長だ。AI領域では、深層学習モデルの処理を行う際に専用設計されたASICが活用されている。
AI半導体の用途と展望
AI半導体は私たちの身近な製品・サービスにも広がっている。例えば「ChatGPT」もその一つだ。ChatGPTは、まるで直接人間と話しているかのような自然な対話ができる点が特長であり、この対話を実現するために必要な大規模な会話データの処理にAI半導体が活用されている。そのほか、スマートフォンやPC、自動車などの分野にもAI半導体は活用されており、AI半導体の需要は急速に高まっている。
また、米国の市場調査会社のGartnerが公開した「AI(人工知能)半導体の市場についてのレポート」によると、2024年のAI半導体の世界市場は前年比33%増の710億ドル(約11兆円)になるとの見通しを発表しており、2025年も前年比29%増と高い成長率が見込まれている。
AI関連製品について顧客に紹介する際には、その製品やサービスの機能や利点の素晴らしさをつい説明したくなる。しかし、より製品に対して興味を持ってもらうためには、AI関連製品を支えるAI半導体の特長や市場規模などについても言及することが重要となるだろう。