ワークスタイル改革

進化を続けるVR市場
最新の注目製品を探る!

掲載日:2024/11/19

進化を続けるVR市場注目製品を紹介!

2024年秋にVR市場はさらなる進化を遂げ、革新的な新製品が続々と登場している。2024年秋発売の注目のヘッドマウントディスプレイを中心に、最新のVR業界動向とともに紹介する。

VRの歴史と現状

VR(バーチャルリアリティ)は日本語で「仮想現実」とも呼ばれ、コンピューター上の仮想的な空間を現実のように疑似体験できるものだ。Virtualという英単語は、「実体・事実ではないが『本質』を示すもの」「仮想の、虚像の」などの意味をもつ。

VRの起源についてはいくつかの説があるが、現代のVRにつながるものとしては、1962年に発表されたVRマシン『Sensorama』が挙げられ、1960年代には既にVRを実現する装置が実用化していたことになる。

VRに近い概念にAR(拡張現実)、MR(複合現実)、メタバース、デジタルツインなどがあるが、細かい違いはあるものの現在VRとして呼称されている技術は、VRとARの要素が組み合わされたものや、VRとデジタルツインの融合などがあり、VR単体のことを指すとは限らない。

話題のヘッドマウントディスプレイ

VRにおいて代表的なデバイスのひとつがヘッドマウントディスプレイだ。

Apple Vision Pro

2024年6月にApple社の『Apple Vision Pro』が日本でも発売されて話題を呼んだ。「デジタルコンテンツを現実の世界とシームレスに融合しながら、実世界や周囲の人とのつながりを保つことができる革新的な空間コンピューター」と発表され、2,300万ピクセルの超高解像度のディスプレイや先進的なオーディオなどが特徴である。

Meta Quest 3S

Meta Questは、もともとOculus VR社がOculus Questシリーズとして展開していたヘッドマウントディスプレイだ。その後同製品はリブランドが行われ、現在は「Meta Quest」として販売されている。最新の『Meta Quest 3s』は、『Meta Quest 3」シリーズの廉価版モデルであり、片目あたり1832×1920ドット(773PPI)の解像度、プロセッサーはSnapdragon XR2 Gen 2を採用し、価格も40,000円台からと手ごろなものとなっている。

MeganeX superlight 8K

Shiftall社がパナソニックグループと共同開発したVRヘッドセットだ。片目あたり4K解像度(3552×3840ピクセル)でありながら、重量は185g未満という超軽量タイプだ。10月から予約が開始されており、2025年1月~2月から発送される予定である。

産業分野に活用されるVR

VRやAR、MRの技術はあらゆる分野で利用されるようになった。チームラボやライゾマティクスのようにエンターテインメントやアート系、ゲームなどの分野でも技術が飛躍的に発展しているが、産業分野ではどのような業界で活用されているのかに注目していく。

製造業

製造業では、熟練者の動きをモーションキャプチャで再現し、VR空間で再現することで教育用コンテンツとして活用できるほか、モックアップや実物大モデルを、バーチャルで作成し確認する。また、現実世界のモノを仮想空間上で再現するデジタルツイン技術を活用し、実際の工場のシミュレーションを行う計画もある。

建築・建設業

建築・建設業界では、作成した設計データを仮想空間でリアルに再現し、完成イメージの確認や不備の事前把握などができる。また、危険を伴う現場では、VR空間で経験してから実際の作業に移ることで、事故リスクを減らすことができるといった活用方法が期待されている。

VRに必要なソフトウェア

仮想空間を作成するには、3Dデータを出力するソフトウェアが不可欠だ。主に、3D CADと呼ばれる立体のオブジェクトやモデルを設計するソフトやゲーム用ソフトウェアなどが用いられている。

Autodesk Revit

建物やインフラの設計を3D出力できるBIM(Building Information Modeling)ソフトウェアだ。例として、橋梁工事の際に同ソフトを活用して、事前に3次元モデルを作成して完成時の景観や橋の形式比較ができたことで、近隣住民や関係者間での合意形成に役立った事例がある。

Siemens NX CAD/CAM

製品開発における設計や製造、シミュレーションまでサポートする、Windows専用のデジタルエンジニアリングソフトウェアである。主に金型の設計や複合航空機の開発、自動回路基板の振動解析に用いられている。

Unreal Engine

1998年にEpic Games社によって開発されたゲームエンジンだ。ゲームエンジンとは、ゲーム開発において不可欠な機能やツールをまとめたソフトウェアのことで、『Unreal Engine』は、『Unity』と並んで、世界で最も使用されていると言われている。アニメーションなどの映像系仮想世界のレンダリングなどが行えて、プログラミング経験がなくても扱いやすいことも特長だ。

VR業界の将来展望

インドの市場調査会社Fortune Business Insights社によると、2023年のVR市場は251億1,000万ドルと評価されているが、2032年までに2,448億4,000万ドルにまで成長すると予測されている。

ただし、現状ではまだヘッドマウントディスプレイなどのデバイスが高価であることやコンテンツ数の不足のほか、没入型のVRでは目の疲れや画面酔いなど課題も多い。このような課題が今後クリアされれば、ビジネス、コンシューマーともに需要の拡大が見込まれる。一方で、『Apple Vision Pro』や『HoloLens 2』の生産中止の情報も流れており、進化を続ける中でも先行きの不透明さがあるVR市場は、今後の動向を注視する必要がある。