SDGs
カーボンニュートラル実現に向けて取り組むべきグリーンICTとは
掲載日:2024/11/26
IT周辺の設備、システムの消費電力量削減などによって、CO2排出量の削減を目指す取り組みであるグリーンICT。ICTを活用することでリユース、リサイクルの推進や資源利用の効率化を実現し、SDGsの実現にも貢献している。そんなグリーンICTの必要性や、取り組み方などを解説していく。
グリーンICTとは
そもそもICTとは、「Information and Communication Technology」 の略称で、日本語では「情報通信技術」と訳され、PCだけでなくスマートフォンやスマートウォッチなど、インターネットを通じてコミュニケーションを行う技術や端末全般を指す。
その中でグリーンICTとは、ICTを利用して脱炭素社会の構築を実現しようという取り組みだ。グリーンICTでは情報システム自体の環境負荷低減と、情報システムを活用した環境負荷低減の二つの側面がある。
2008年に当時の経済産業省(現:環境省)が発表した「グリーンITについて」によると、「ICT機器・システムの省エネ」では2025年までにデータセンターの消費電力量を50%削減と光技術を利用して通信電力を1/100にすることを目標として掲げている。また、「ICTを活用した社会の省エネ効果」では、ICTによる地域・コンビナート全体の最適制御、計測機器などのICTによる環境貢献の「見える化」の実現を目指している。
なぜグリーンICTが必要なのか
グリーンICTを推進する背景には、温室効果ガスの削減などの地球温暖化対策と限られた地球資源の有効活用が挙げられる。
実際、近年増加するゲリラ豪雨などの気象災害の一因には、温室効果ガスの増加による影響が指摘されており、温室効果ガスの削減は喫緊の課題となっている。
2024年10月に日本政府は「温室効果ガス実質排出量を2030年度に2013年度比で46%削減できる」とする報告書を国連に提出した。これは「パリ協定」で宣言した目標どおりに進んでいることをアピールする狙いもあるが、日本の対策に効果が出ているとも言える。
一方で、世界に目を向けると、石油や天然ガスなどの一次エネルギーの消費量は増加している。再生可能エネルギーの利用率も増加傾向ではあるが、さらに推し進めていかなくてはいけない状況だ。
【Green by ICT】ICTを活用したグリーン化
ICTを用いて環境情報を計測、予測し、エネルギー利用率の改善や、物の生産・消費の効率化などを図り、CO2の排出量を削減する。このような取り組みを「Green by ICT」という。
具体的には、BEMSと呼ばれるビルエネルギー管理システムやHEMSと呼ばれる家庭用エネルギー管理システムで照明や空調などを制御して省エネルギーにつなげる「エネルギー利用効率の改善」や、製品の需要量を生産者が把握して必要な量だけ生産・流通することでCO2排出量を削減する「物の生産・消費の効率化・削減」を行うほか、テレワークやWeb会議の推進によって「人・物の移動の削減」をすれば、交通機関の燃料消費が少なくなり、CO2排出量の削減にもつながる。
さらに、センサーネットワークやリモートセンシング、GPSなどの位置情報技術を活用することで、地球環境を観測するシステムの構築も可能だとされている。
【Green of ICT】ICT自体のグリーン化
「Green by ICT」でCO2排出を削減できることが見込まれる一方で、IT機器のデータ通信量の増大は、CO2排出量の増加を招くリスクもある。またクラウドを利用する場合も、データセンターでの電力消費が増加する可能性もある。
このような事態を避けるために、「Green of ICT」と呼ばれるICT機器自体の省電力化も求められている。また、メモリーやCPU、HDDなどの各メーカーが、省電力タイプの機器の開発・生産を進めている。
東京大学グリーンICTプロジェクト
「インターネット技術に基づいたオープン技術を用いた持続的イノベーションを実現する施設インフラの構築」を活動趣旨として、東京大学でグリーンICTプロジェクト(GUTP: Green University of Tokyo Project)が遂行されている。
東京大学で行われた実証実験を中心に、インターネット技術を用いた持続可能な社会の実現を目標に研究開発活動をしており、これまでも、インターネット経由で遠隔操作ができる「エネルギーデータ見える化システム」を構築するなどの研究成果を上げている。
同プロジェクトは、東京大学以外に18の企業や団体などが参加し、新たな参加者も募集中だ。
グリーンICTの推進はDX化にもつながる可能性あり
前述のとおり、グリーンICTを推進するためには、新たな機器やネットワークの導入が不可欠となり、それ自体が環境負荷になることも起こり得る。
しかし中長期的な視点で見ると、新たに増えるICTの負荷よりもグリーンICTの効果が大きければ、地球温暖化対策につながるほか、社内のDX化にも貢献できる。エネルギー消費量の見える化で、無駄を省くことを重ねていく動きが大切だ。