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現在の医療業界におけるDX推進状況をチェックしよう!

掲載日:2024/12/03

現在の医療業界におけるDX推進状況をチェックしよう!

2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」では、「2025年の崖」という言葉が登場した。これは日本企業のDXが推進されなかった結果、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生するという問題を指す。2025年が間近に迫った今、さまざまな業界でDX推進の必要性が語られているが、今回は政府が先導する医療DXについて3本柱として掲げられている内容や取り組みなど、2024年12月時点での最新情報を交えて解説する。

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政府が進める医療DXの3本柱の詳細

2022年5月に自由民主党政務調査会より提言された「医療DX令和ビジョン2030」では、医療DXの3本柱として「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化等」「診療報酬改定DX」が掲げられ、医療DXの取り組みが進められている。

全国医療情報プラットフォームの創設

全国医療情報プラットフォームとは、これまで医療機関や介護事業者、自治体などで管理していた各種医療関連情報を一つに集約して、互いに共有・交換できる全国的なプラットフォームのことだ。

同プラットフォームは、各医療現場の課題やニーズに合わせた情報を迅速に取得することができるため、業務効率化や医療サービスの質の向上が期待されている。なお、共有・管理される医療関連情報には、レセプトや特定健診情報に加え、予防接種、電子カルテ情報などが挙げられる。

電子カルテ情報の標準化等

電子カルテ情報の標準化とは、医療機関ごとに異なる電子カルテ情報を厚労省が定める形式に統一する施策のことだ。形式を統一することで医療機関同士の情報共有が実現すると、医療ビッグデータを扱えるようになるため、より質の高い医療へとつながる可能性を秘めている。なお、電子カルテ情報の標準化には、診療記録や管理業務などのデータの交換がしやすい「HL7FHIR」が採用される見込みだ。

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診療報酬改定DX

診療報酬とは、診療行為などの対価として、病院や薬局に支払われる費用のことだ。診療報酬は原則として薬価は一年に一度、その他の報酬は二年に一度改定される。診療報酬改定時は医療機関や薬局などにとって大きな業務負荷がかかっているのが現状であり、診療報酬改定DXではそうした現状に対して、デジタル技術を用いて診療報酬やその改定作業の効率化を目指す施策のことを指す。具体的には、診療報酬および患者負担金の計算を行う「共通算定モジュール」の提供も同施策に含まれる。

医療DXの3本柱に関する政府の動向

先述したとおり、2022年6月に提言された「医療DX令和ビジョン2030」において医療DXの3本柱の取り組みの推進が打ち出された。その後、「医療DX令和ビジョン2030」は厚生労働省推進チームが設置され、現在進行形で医療DX3本柱の取り組み強化を図っている。

2023年6月に厚生労働省が公表した、3本柱を含む医療DXの工程表では、「全国医療情報プラットフォームの創設」については2023年度より連携や共有などのための仕組み・基盤の整備などが順次進められていることが読み取れる。また「電子カルテ情報の標準化」についても、2023年度より電子カルテ情報の標準化の普及が進められている。そして、2025年度以降には3本柱の大半の領域で医療DXが普及する計画だ。

医療DX推進が「2025年の崖」問題の解消や新たな商機につながる可能性

2025年度には多くの領域で普及が見込まれる医療DXは、医療機関の業務効率化を促進し、来年に迫った「2025年の崖」問題の解決に大きく貢献するだろう。

例えば、「診療報酬改定DX」が進み、診療報酬や患者負担金の計算を行う「共通算定モジュール」の計算プログラムが全国で統一されれば、診療報酬が改定されるたびにベンダーが対応していた計算ソフトウェアの改修作業が一本化されるため、作業負担の大幅軽減が期待できる。また医療機関側にも、ベンダーへ支払うメンテナンスコストを削減できるメリットが見込まれる。

政府は「2025年の崖」問題の解決に向け、現在進行形で医療DXに取り組んでいる。国が取り組む医療DXの内容を医療機関などへ分かりやすく解説することで、新たな商機をつかむキッカケになるかもしれない。