マーケティング

人の話を聞く際にはパーソナルなキーワードが重要
思考を深めて話を聞き出す「セカンドクエスチョン」
~フリーアナウンサー 笠井信輔氏~

掲載日:2024/12/17

笠井信輔氏

人から話を聞く際にインタビューの専門家である笠井 信輔氏は、何に気を付けているのだろうか。常にお客様の声に耳を傾けるパートナー様のヒントになるような「人に話を聞く」ことについて聞いた。また、インタビューの後半は、がんとの闘いで精神の支柱となった「引き算の縁と足し算の縁」について聞いた。

アイスブレイクに必要なのは相手のことを調べ尽くすこと

BP:これまで数々の著名人をインタビューされてきた経験から、「人に話を聞く」ときに気を付けていることはありますか。

笠井 信輔氏(以下、笠井氏):人に話を聞くときの難しさは、初対面の方やあまり親しくない方の場合にあります。会った瞬間は、お互い緊張状態にあるからです。そのため「素直に言葉が出てこない」、あるいは「コミュニケーションが取れない」ということが起こります。また初対面で、いきなり本題に入っても脳の思考が追いつきません。この緊張状態をほぐすのがアイスブレイクです。まさに氷を砕いて溶かすようにお互いの関係性を良くしてから本題に入るわけです。

このアイスブレイクで必要なのは、相手を和ませることですが、自分が面白い話をして盛り上げればいいわけではありません。どんなに話が盛り上がっても、相手は聞いて笑っているだけなので、実はエンジンがかかってない状態です。相手はまだアイドリング状態なのです。アイスブレイクでは、相手に話をさせながら緊張状態を解くことが求められます。そのために必要なことは、相手の情報を理解しておくことです。

例えば、俳優さんや企業のトップなどの著名人であれば、出版された書籍を読む、Webサイトで情報を集めるといったことが有効です。いちばん効果的なのはインスタグラムやフェイスブック、あるいはブログなどのメディアを調べることです。最近は、SNSで自分の情報を発信している人が多いので、調べることで相手のパーソナルな部分が見えてきます。

「先日、大きな魚を釣ったみたいですね」と聞くと「どうして知っているんですか?」というように会話が弾んできます。雑談のような会話がコミュニケーションでは、とても大事です。このようにパーソナルなキーワードを出すことで、相手は単なる他人ではなく、個人として認識してくれるようになります。

このような雑談をする時は、自分が気分よく話すと逆効果となり相手にひかれてしまいます。穏やかに相手の話を聞く姿勢を見せることで、「この人は話を聞いてくれる人」だと理解してもらえます。一方的に自分のことをしゃべりに来たのではなく、話を聞きに来たとわかってもらうことが大切なのです。

いわゆる準備段階、トークの前段階で相手に話しやすい雰囲気を作るための雑談は重要です。話を続けようと思ってもらえれば、本題に入りやすくなります。

インタビューの面白さは思いもよらない話が出てくるところ

笠井氏:インタビューをするときに、事前に質問をすべて送ってくださいという話がよくあります。当日は、その質問と答えを全部覚えて、その通りに答えが出てきます。これは我々にとってはありがたい話なのですが、そのインタビューは成功に見えても7割しか成功していません。インタビューの面白さとは、思いもよらない話が出てくるところです。その3割を聞き出せるかどうかがインタビューの面白さになるわけです。質問に対して、想定内の答えしか返ってこないのであれば、わざわざインタビューしなくても書面のやり取りだけで完結できるからです。

仮に5つの質問を想定しているのであれば、5つの答えをもらうだけでは、面白くありません。1つ目の質問で、その答えが返ってきたら、2つ目の質問に移るのではなく、相手の答えの中にあるキーワードをとらえて、さらに質問する「セカンドクエスチョン」を投げかけます。キーワードがない場合でも、相手の答えを「こういうことですか」と聞き返すことで、より理解が進み深い話になるわけです。

一通りの答えが出たと思っても、その人が潜在的にしか分かってなくて、言葉にできていないキーワードがあります。インタビューでは、それを読み解く力が必要です。最初に返ってくる言葉は、表層的な言葉の場合が多く、本質に深く入り込む答えではありません。人間の思考は、段階的に深まるので1回のやり取りでは足りないですね。質問を順番に聞くだけでは、得られないことを引き出すためにもセカンドクエスチョンを投げかけて、まだ何か引っかかりがあったらそこからサードクエスチョンへと続けていきます。

相手が話したことの少しのひっかかり、自分の中にちょっと残る疑問などを聞くことはもちろんですが、面白いと感じたことは、セカンドクエスチョンでどんどん聞いていく。相手が言語化できていない思いや感覚を聞き出すことでインタビューの成功は10割になるのです。

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