マーケティング
2040年までに約3倍に成長!?
市場拡大が予測される宇宙ビジネスを徹底解説
掲載日:2025/01/07
世界で競争が激化している宇宙ビジネス。経済産業省の資料では、2040年には市場規模が140兆円規模に上ることが予測されている成長産業である。今回は宇宙ビジネスの現在と課題、そして展望などについて解説していく。
宇宙ビジネスの現在
経済産業省が2024年3月に公表した「国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について」によると、2022年時点で世界の宇宙産業の規模は約54兆円(注)に上る。これは世界の在宅医療の市場規模とほぼ同規模だ。
一方、日本に限ってみると、その市場規模は2020年時点で約4兆円にとどまっている。長らく大手重工・電機メーカーが宇宙開発を先導してきたが、近年は約100社超の宇宙ベンチャー企業が宇宙ビジネスに参入しており、日本の宇宙産業に新しい風が吹いていると言えるだろう。
(注)1ドル140円で計算
近年の宇宙ビジネスで押さえておきたいポイント
近年の宇宙ビジネスの動向として押さえておきたいのが「ロケット打ち上げ数の増加」および「小型衛星コンステレーションの拡大」の二つだ。
前者については年々打ち上げ回数が増加しており、2023年には世界全体で過去最多の212回のロケット打ち上げが実施された。その前年には、イーロン・マスク氏が率いるSpaceX社の打ち上げ回数が年間61回を記録。世界中の企業がロケット開発に乗り出している。特に近年はベンチャー企業の小型・中型ロケット開発への参入が相次いでおり、日本でも和歌山県と北海道のベンチャー企業が2024年にロケット打ち上げを実施した。
また後者の「小型衛星コンステレーション」も拡大している。これは、小型衛星を大量に打ち上げて、それらを統合して運用を行うことで、地球観測や衛星通信の分野で新たな社会価値を創出する構想のことだ。小型衛星コンステレーションの用途はさまざまだが、例えば防衛システムとの連携やSpaceX社が運用する「Starlink」に代表されるインターネット網の構築などが挙げられる。
裾野が広い宇宙ビジネスの領域
宇宙ビジネスというと、ロケット開発や人工衛星などのイメージが先行するだろう。しかし、宇宙ビジネスの裾野は非常に広い。
衛星通信・衛星放送などの宇宙インフラを利用してサービスを提供する「宇宙利用サービス産業」や、GPSなどの機器を製造する「宇宙関連民生機器産業」、上記産業のサービスや民生機器を自社事業に組み込んでサービスを提供する「ユーザー産業」、人工衛星やロケットなどを製造する「宇宙機器産業」に大別される。
その中でも「宇宙機器産業」は、ロケット打ち上げ数の増加を背景に、今後も強い需要が予想される。また、「宇宙関連民生機器産業」および「ユーザー産業」が提供しているサービスについては、資源開発や農林漁業、環境観測など、私たちの生活に密接に関わっている。宇宙ビジネスは既に私たち生活に不可欠なインフラであると言えよう。
日本の宇宙ビジネスの課題と展望
超高品質かつ少量生産が求められる日本の宇宙ビジネスは参入障壁が高い。先述したとおり、近年日本では約100社超の宇宙ベンチャー企業が宇宙ビジネスに参入しているものの、海外と比べると新規参入企業が少なく、イノベーションが起きづらい構造となっている。また、日本の宇宙ビジネスは長年、国内の官公庁の需要に頼る構造であったため、海外需要を取り込めていない点も課題だ。そもそも宇宙ビジネスを展開している国内企業が、海外展開を前提としたビジネス戦略ではないケースも少なくない。先述した「世界の宇宙ビジネスの市場規模約54兆円のうち、日本の市場規模は4兆円にとどまっている」という現状も、日本が海外需要を取り込めていない根拠となるだろう。
こうした背景から、日本でも2023年6月に改訂された「宇宙基本計画」において、「2020年は約4兆円だった市場規模を2030年代の早期に2倍の8兆円に拡大する」ことが政府目標として掲げられている。
多様な活用分野があり、政府が国策として強く推進している宇宙ビジネスには、今後さらに多くの企業が携わることになるだろう。そうした事態に備え、宇宙ビジネスについて定期的に情報収集をしておくことで、いずれ来るビジネスチャンスを生かすことができるかもしれない。