中小企業
2030年問題が企業に与える影響と今後取るべき対策
掲載日:2025/02/04

約3人に1人が65歳以上の高齢者となる2030年に、予測されている諸問題を「2030年問題」と呼ぶ。企業は今以上に人手不足などのさまざまな課題に対応しなければならない。本記事では2030年問題を解説し、企業ができる備えについても紹介する。
2030年問題とは
「2030年問題」とは、日本の少子高齢化を背景に、人手不足や社会保障費の負担増大など、2030年により浮き彫りになるとされるさまざまな諸問題の総称だ。
内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、2030年の高齢化率(65歳以上人口割合)は、2025年比1.2%増の30.8%に上るとされ、約3人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が訪れるのである。こうした社会背景では、企業にはどんな影響が及ぼされるのだろうか。
企業が直面する2030年問題
企業が直面する諸問題の中でも最も深刻なのが「人手不足」であろう。パーソル総合研究所が2019年に公開した「労働市場の未来推計2030」によると、2030年に人手は644万人不足する推計だという。産業別で見ると、特にサービス業や医療・福祉、卸売・小売における人手不足が顕著となる予測だ。

人手不足がさらに深刻化すると、企業は従業員の賃金を上げたり、福利厚生を拡充させたりと、人件費の上昇を伴う施策を行う必要もあるだろう。それでも人手不足が常態化すると、十分な質のサービスを提供できず、顧客満足度の低下や業績への悪影響を及ぼす可能性がある。
そのほかにも少子高齢化に伴う人口減少により、国内市場の縮小も懸念される。高齢者は結婚や出産、住宅購入などのライフイベントを迎える生産年齢人口(15歳以上65歳未満)と比べて、支出が減少すると推測されるためだ。市場の縮小は企業の業績を圧迫することだろう。
2030年問題に対して企業ができる対策
人手不足や国内市場の縮小といった2030年問題に対して、企業はどのような対策を講じるべきだろうか。主な二つの対策を紹介しよう。
働く女性・シニア人材の確保
人手不足の解消には、働く女性やシニア人材の活躍が不可欠だ。政府も、主要な中小企業向け補助金において子育て支援・女性活躍推進企業に加点措置を実施しているほか、65歳超雇用推進助成金の支給も進めており、両者の労働市場への参入を推進していく考えだ。
具体的な人材の確保方法については、中小企業庁の「労働人材不足に対応するための、女性・シニア活用の実態」から参考例を見ることができる。例えば1日の勤務時間を4.5時間以上7.5時間未満の間で選択でき、かつ雇用保険・社会保険・時間当たり賃金などは正社員と同等の処遇とした「準社員制度(短時間正社員制度)」を設けたり、土日祝日&短時間勤務でシニア人材を募集したりすることで、人手不足の解消につなげている企業が見受けられる。
また同資料には「溶接作業は危険だから男性の仕事」という先入観から脱して、女性の活躍の場を広げることで、人手不足の解消につなげた製造業のケースも紹介されていた。既存人材のスキルアップによって活躍の場を広げる取り組みも人手不足の解消に貢献するだろう。
このように柔軟な働き方を提供することで、労働意欲はありつつも条件面で断念していた女性やシニア層の確保につなげられる可能性がある。
デジタル技術やロボットなどの活用による業務効率向上
このほかにも、人手不足に対する有効な対策として挙げられるのが業務効率化だ。デジタル技術やロボットなどの活用によって大きな効果が期待できる。
またシステムや製品を導入せずとも、身近な取り組みで効果を得られた事例もある。とある民間の経済団体では、新人スタッフへの教育を対面形式から、マニュアル動画として撮影した動画をYouTubeへ限定公開する形式に変更した。これにより教育担当者が直接教える時間を削減し、労働時間の短縮と効率化を実現している。
この他にも、チャットツールを導入することで、電話の行き違いをなくしたり、PCを開かずとも連絡を確認できるようになったりと、コミュニケーションのスピードアップを図る取り組みも有効だ。
またロボットなどの活用といっても、何を導入すれば良いのか分からない企業も多いだろう。そのような企業におすすめなのが「中小企業省力化投資補助金」である。同補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が選定した製品をカタログから選んで導入することで、導入費用の最大1/2の支援が受けられる。カタログには製品とその活用イメージ・効果、目安の導入費用などがまとめられており、導入製品に迷う企業には大いに参考になることだろう。
2030年問題はすぐそこに迫っている。ベンダーとしてクライアントの実情に沿った対策を助言できれば、顧客との信頼関係はさらに強化されることだろう。