IoT・AI
通信大手が進めるAIを用いたデータ活用事例を紹介!
掲載日:2025/02/10

2025年は、AIによるデータ活用の勢いが増す年になるかもしれない。AIによるビッグデータの分析と迅速な意思決定は、今後のビジネスには不可欠なものとなるだろう。本記事ではAIによるデータ活用の試みとして、膨大なデータを保有する国内通信大手2社の取り組み事例を紹介する。
通信大手が取り組むAIデータ活用の最前線
既にビジネスシーンではAIの活用が本格化している中、それを支えるデータ基盤の整備の重要性が増してきている。AIによってどれだけ高度な予測ができたとしても、基にしているデータの品質が悪ければ、ビジネスや社会全体に負の影響を与えることとなるだろう。
そこで、膨大なデータを保有する通信大手では、さまざまなパートナー企業とデータ連携をすることで AIデータ分析を効果的に活用するための取り組みが進められている。
「インダストリーAIクラウド」で業界の社会課題の解決へ
日本電信電話株式会社(以下、NTT)では、企業の垣根を越えた共通のプラットフォームに高い専門性を持つデータを蓄積し、AIを活用することで業界共通の基盤とする「インダストリーAIクラウド」を提唱している。インダストリーAIクラウドでは、AIを活用しながら業界ごとに直面する社会課題の解決に貢献することを目指しており、NTTが保有する膨大なデータをさまざまな業界のパートナー企業と連携することで、新たなソリューションの開発に貢献する。

モビリティAI基盤
インダストリーAIクラウドを活用した新たなソリューションの一例として、NTTは2024年10月にトヨタ自動車と「交通事故ゼロ社会に向けた取り組み」を開始した。NTTは、ヒト・インフラ・車の状況などのデータを絶えず収集することで運転時の死角を減らし、その情報をAIに学習させることで、より高精度な運転支援が可能になるとしている。
この新しい取り組みを「モビリティAI基盤」と呼び、自動車業界の共有基盤として全国展開を目指している。近い将来にはモビリティAI基盤が普及することで、交通事故のリスクが格段に減少するかもしれない。
農産物取引の最適化
そのほかNTTでは、AIにより需給や配送計画のシミュレーションを行う卸売市場を仮想空間上に構築し、需要と供給が最適化された農産物取引を実現するための実証実験も行っている。
卸売市場では農作物をはじめとした取引情報などのデジタル化が進んでおらず、現在でも対面取引が多くを占めるのが現状だ。そのため需給の正確な把握ができず、輸送コストの増大やフードロスを引き起こす要因となっている。
AIを活用した仮想空間では過去の取引データはもちろん、気象データや市場の価格変動、消費者動向などのさまざまな情報から、精度の高いシミュレーションを行うことができるため、取引の最適化や品質向上にもつながる。
インダストリーAIクラウドはNTTとパートナー企業が連携し、企業の垣根を越えて共創する基盤である。同基盤はデータのAI活用で業界が抱える社会課題などの解決を実現する、象徴的なサービスになるかもしれない。
自社のアセットを用いて業界別プラットフォームを共創
KDDI株式会社(以下、KDDI)では2024年5月より、日本のDX推進に寄与するビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」の提供を開始している。
WAKONXは、業界ニーズに応じた最適な通信網を提供する「Network Layer」、企業間および地域間のデータをセキュアに蓄積・融合・分析する「Data Layer」、業界DXに必要なAIサービスを業界ごとに最適化して提供する「Vertical Layer」の三つのレイヤーにて、ソリューションを提供している。そして、これら三つのレイヤー全ての運用およびサービス提供にはKDDIの最新AI技術が用いられている。
またWAKONXにおけるパートナー企業は、KDDIが持つさまざまなアセットを活用して、KDDIと共に業界課題・社会課題の解決を図る業界別プラットフォームを構築することができる。つまりWAKONXは、KDDIのアセットで新たな価値を創造するプラットフォームを担う。

AIデータの利活用は、一社でできることは限られている。NTTやKDDIの業種・企業の垣根を越えたデータ連携の取り組みは、AIデータ活用が日本でより広まる契機になるかもしれない。