IoT・AI
AIが生成したデータに著作権はある?
生成AIを活用するうえで注意すべきポイントを解説
掲載日:2025/02/18

昨今では急速に生成AIが普及しているが、AIが生成した文章や画像などには基となる参照データが必ず存在する。そのため意図せず既存の作品に類似してしまうことがあり、著作権侵害の恐れもある。生成AIの安全な活用のためにAIと著作権の関係性や法律を確認し、注意ポイントを確認しておこう。
生成AIによる著作権侵害の事例
2025年2月時点では、日本で生成AIによる著作権侵害が認められた事例はないが、海外では実際に訴訟になったケースが存在する。
中国での訴訟事例
2024年2月に中国で、生成AIの提供事業者による著作権侵害を認める判決が出た。
日本のプロダクション企業から中国国内でのキャラクターの複製権などを付与されている現地企業が、AI画像生成サービスを提供する企業に対して、キャラクターと同一、または類似する画像が生成されている点を著作権の侵害として訴えた。この裁判では、生成された画像の類似性が高く、著作権を侵害していると認められている。
アメリカ・カナダでの訴訟事例
2024年にアメリカの八つの地方紙は、生成AIの学習データに許可なく記事を使用されたとして、生成AIアプリの開発元であるOpenAI社とマイクロソフト社の二社を提訴している。
原告側のメディアは、著作権で保護された数百万の記事内容をAIが無許可で盗用していると主張しており、二社に対して損害賠償を求めている。
同訴訟の判決はまだ出ていないが、判決内容が今後のAIと著作権物の関係性に影響を及ぼす可能性があるとして注目を集めている。
著作権侵害となり得る三つの観点
生成AIが著作権侵害となり得るのは、「生成AIの開発時とデータ学習時」「生成・利用時」「AI生成物が著作物に当たる場合」がある。
アメリカ、カナダで提訴されている問題は、上記の「生成AIの開発時とデータ学習時」に該当する。日本の著作権法第三十条の四でもデジタル方式の複製について定められているが、「特定侵害複製であることを知りながら行う場合」は、著作権法違反となることが述べられている。
多くの生成AIサービスは、著作物を学習用データとして収集・複製しており、同法に抵触する可能性がある。現在の法律では、生成AI開発時のデータ収集に著作権者の許諾は原則として不要だが、明確な基準が定まっていないためトラブルは起こり得る。また、著作者が生成AIの学習データへの使用を認めていないにもかかわらず、学習に利用されているケースも考えられる。
生成・利用段階では、前述した中国での事例のように著作物が既存の作品に類似している場合、著作権侵害に当てはまる可能性がある。実在の人物やキャラクターに似ているとの認識はなくても、著作者が「自分の作品に似ている」と主張すれば、トラブルに発展するリスクがある。
生成AIを活用する際の注意点
海外で訴訟になっている事例では、著作者が生成AIサービスを提供する会社を訴えているケースが多い。
生成AIであっても、著作権は従来の法律に準拠することになる。著作権法では「著作物性」「依拠性」「類似性」の三点に抵触すると、著作権違反とみなされる可能性をユーザーは意識しておく必要がある。

生成AIを使用する際には、著作権法にも目を通して、必要に応じて弁護士や法務担当と検討しておくと良いだろう。
前述したように、日本での生成AIによる著作権侵害は発生していないが、内容が既存の作品と類似している指摘を受ける可能性は十分にある。
具体的には「(作家名)のイメージで、小説を書いてください」「(イラストレーター名)の作風で、イラストを描いてください」のように、具体的な著作者や実在の人物名を入れて生成を行うと、類似した物が出力される可能性が高い。それらをSNSなどで公開したり商用利用したりすると、著作者から訴えられるリスクは十分に考えられる。
商用利用が認められているサービス

アドビ株式会社が提供する『Adobe Firefly』のように、自社サービスである「Adobe Stock」内の画像データのみを学習に用いていると明記されており、商用利用を認可しているサービスも存在する。これらを利用すれば、既存作品に類似し著作権侵害に抵触するリスクは低減される。
生成AIに関する著作権法に関しては法改正の可能性も考えられるため、最新の情報を常に確認しておきたい。