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次世代ビジネスキーワードを先取り!
GPSよりも高精度なGNSSとは

掲載日:2025/03/18

次世代ビジネスキーワードを先取り! GPSよりも高精度なGNSSとは

「GNSS」は地上のものの位置を正確に測位する機能を有する、衛星測位システムの総称だ。その精度は、スマートフォンやカーナビなどに搭載されている「GPS」以上とも言われている。本記事では今後のビジネス発展に不可欠なGNSSの概要や活用事例などを解説する。

GNSSとGPSとの違い

GNSS(Global Navigation Satellite System、以下GNSS)とは、世界各国が運用する衛星を用いた測位システムの総称で、日本語では「全球測位衛星システム」と訳される。

一方でGPS(Global Positioning System、以下GPS)はアメリカが運用している衛星測位システムを指す。1980年代に軍事目的として開発されたが、今では飛行機やスマートフォン、カーナビなどさまざまな製品に搭載されている。GNSSがGPSを含む複数の衛星管理システムの総称であるのに対し、GPSはアメリカが運用・開発を行うGNSSの一部という位置付けだ。

そんな両者の大きな違いは測位精度である。GNSSはGPS単体よりも多くの衛星測位システムが用いられるため、遮蔽(しゃへい)物が多い場所でも高精度かつ安定した計測が可能である。

GNSSが注目を集めている背景

昨今GNSSの注目度が増している背景には、IoTや自動運転など、GPSよりも高精度の測位が求められる技術の台頭が挙げられる。それらの技術は数センチメートル単位の位置情報が必要であるため、より高精度な計測ができるGNSSに注目が集まっているのだ。

日本においてもGNSSへの注目度は高く、内閣府が公表した「衛星測位に関する取組方針2024」によると、2000年代後半よりGNSSの開発・整備・運用を主要な政策として位置付けており、現在日本が独自で運用をしている衛星システム「みちびき」の運用体制を、現在の4機から将来的には11機にすることを目指している。

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GNSSの一つである日本の「みちびき」の活用事例

最後に日本が運用しているGNSS「みちびき」の活用事例を通じて、GNSSの可能性を見ていこう。

なお、下記の「SLAS(サブメータ級測位補強サービス)」および「CLAS(センチメータ級測位補強サービス)」とは、高精度な測位を可能とする「みちびき」で利用できる機能である。

自律航行水上EVタクシーへの導入

とある自動車メーカーが開発した一般旅客向け水上タクシーでは、誤差数センチで測位可能なセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)を活用して位置情報を取得する小型船舶向け自律航行プラットフォームを導入した。同車両は実際に2023年1月に、全国初の自律航行船による水上タクシーとして、期間限定で営業運転も行われている。

こうしたGNSSによる自動運転支援は、船だけでなく自動車などにも用いられている。例えば、前述した水上タクシーを開発した自動車メーカーでは、全方位安全運転支援システムにGNSSを活用することで、自身が運転する自動車の位置を特定し、ハンズオフでの運転を支援する機能を実現している。このように、GNSSは自動運転領域においても今後は活用が期待されている。

漁船の航跡データ収集への導入

みちびきには誤差1メートル以下で測位できるサブメータ級測位補強サービス(SLAS)という機能もある。この機能を活用して漁船の航跡データを記録し、AIで操業中の情報を分析した事例も存在する。操業情報の解析によって漁獲努力量の高精度な推測を実現し、操業効率の向上やより正確な資源評価ができるようになる。この仕組みにより「操業時間がいつもより短くても漁獲量が多い場合、その漁場は資源が豊富である」という判断が可能になった。こうしたデータ分析はSLASとAIを組み合わせることで初めて実現した。海洋分野におけるみちびき×AIの可能性を示唆する事例と言える。

GNSSの一つである日本の「みちびき」だけでも、さまざまな活用事例が見受けられる。また各種レポートで予測されているとおり、GNSSの市場規模は今後ますます伸びることだろう。GNSSに関する情報は意識して追っておきたい。