セキュリティ
2025年5月施行予定!
セキュリティ・クリアランス制度がもたらす影響とは
掲載日:2025/04/08

2025年5月に施行予定の「重要経済安保情報の保護及び活⽤に関する法律」により、経済安全保障分野において「セキュリティ・クリアランス制度」が適用されることとなる。本記事では同制度の概要と中小企業に及ぼす影響を解説する。
セキュリティ・クリアランス制度とは
セキュリティ・クリアランス制度とは、政府の調査により信頼性を確認できた人物に限り、政府が保有する「安全保障上重要な情報」にアクセスを認める制度のことだ。「安全保障上重要な情報」とはサイバー脅威やその対策に関する情報、インフラや物資のサプライチェーンに関する情報のことを指す。また同制度では情報漏えいが発覚した際には罰則も科せられる。

セキュリティ・クリアランス制度の意義
セキュリティ・クリアランス制度の意義は、「情報保全の強化」である。昨今は安全保障の概念や外交領域に加え、経済・技術領域にも拡大している。一方で従来の日本の法制度では、経済安全保障分野の情報が必ずしも保全の対象となっていないケースも存在する。そこで経済・技術分野における情報保全を強化することで、両分野における諸外国とのさらなる強化を図ることが可能になる。同制度は日本の安全保障全体に寄与することだろう。
セキュリティ・クリアランス制度が中小企業に及ぼす影響
セキュリティ・クリアランス制度が中小企業に及ぼす影響について、内閣府が2024年に公開している「いわゆる『セキュリティ・クリアランス』について」を参考に説明していく。
入札・政府調達の促進
特に防衛や次世代技術などの分野で事業展開している中小企業にとっては、セキュリティ・クリアランスの保有の有無がプロジェクト参画への前提条件となるだろう。実際に内閣府資料には「宇宙分野の海外政府からの⼊札に際し、セキュリティ・クリアランスを保有していることが説明会の参加要件になっていた」という企業の声が紹介されている。セキュリティ・クリアランスを保有することで、機密性の高いプロジェクトの入札に参画できる可能性が高まる。
より踏み込んだ共同開発の実施
前述の内閣府の資料では「協力依頼を受けた海外企業から『機微に触れる』という理由で十分な情報を得られなかった。セキュリティ・クリアランスを保有している企業や組織同士であれば、もう少し踏み込めた可能性がある」という趣旨の声も紹介されていた。国際的な共同開発においては、セキュリティ・クリアランスの有無で相手企業から共有される情報の種類および情報量が異なる場合が考えられる。より有効な共同開発の実施およびビジネスチャンスの拡大にはセキュリティ・クリアランスの保有が不可欠である。
サイバーセキュリティの強化
セキュリティ・クリアランスの保有によって、政府や諸外国が持つサイバーセキュリティ関連の情報共有を受けられる可能性が高まる。内閣府の資料では「政府側や諸外国が保有している様々な情報が共有されれば、個々の企業のセキュリティレベル向上につながる」という声が掲載されている。セキュリティ・クリアランスの保有はサイバーセキュリティの強化にも寄与し得るのだ。
一方で、セキュリティ・クリアランスの取得・維持のためには施設の設備費用などのコストが発生する。クライアントにはセキュリティ・クリアランス取得によるビジネスチャンス拡大と取得・維持のためのコスト、両者を丁寧に説明していきたい。