中小企業
新年度に知っておきたい!
最新のテクノロジートレンド
掲載日:2025/04/08

ガートナージャパン社が発表した2025年版の「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」では、最新のテクノロジーを大きく三つのカテゴリーに分けて紹介している。それぞれのテクノロジーは、今後10年程度で実現できると見込まれており、今後のビジネスへのヒントとなるだろう。
AIの最重要課題とリスク

2024年10月に開催された「Gartner IT Symposium/Xpo」にて、ガートナージャパン社は2025年に企業や組織が注目すべき「戦略テクノロジのトップ・トレンド」を発表。三つのカテゴリーに分けて紹介されている。
まずは、「AIの最重要課題とリスク」のカテゴリーから詳しく解説していく。
2022年11月にOpenAI社がChatGPTを公開して以来、対話型AIは加速度的に普及している。当初は精度やセキュリティの問題で、業務での使用を禁止する企業もあったが、現在は一定のルールを制定して導入する企業が増えている。
エージェント型AI
AIの導入が進む中、今後は「エージェント型AI」も台頭するとみられている。従来のAIはユーザーの質問に対しての回答や文章の要約・翻訳など、タスクごとにしか使用できないが、エージェント型AIは目標を設定すると、それに必要な情報を集めたり、コードを出力したりといった複数のタスクを自律的に行う。
エージェント型AIでは、より複雑で技術的なプロジェクトの開発管理や、より迅速なデータ分析と予測によって、組織の状況認識の改善を実現できるとされている。
AIガバナンスプラットフォーム
AIが進化するに伴い、巧妙なサイバー攻撃や悪質な偽情報の拡散なども簡単に行えるようになっている。そこで必要とされるのが、「AIガバナンスプラットフォーム」だ。
同システムは、AIによる法的リスクやプライバシー侵害などの被害を評価し、責任あるAI利用のための透明性、公平性、プライバシーなどを適切に管理する仕組みだ。ガートナーは、2028年までに企業がAIガバナンスプラットフォームを導入することで、競合他社よりも信頼度評価で30%、規制順守スコアで25%高い評価が得られると予測している。
偽情報セキュリティ
AIを活用するうえで不可欠なものとして「偽情報セキュリティ」も挙げられる。これはディープフェイクの検出、なりすましの防止、評判の保護を目的としており、生成AIで作成された映像、音声データなどを検索し、自社製品やサービスが偽情報で毀損(きそん)されないように監視を行う。
コンピューティングのニューフロンティア
二つ目はコンピューティングやストレージなど、DX関連のカテゴリーだ。
ポスト量子暗号
量子コンピューターが実現した場合、現在の暗号化技術では破られてしまう可能性がある。実際、サイバー攻撃者は既に、「Harvest Now, Decrypt Later(今収穫して後で解読)」という戦略を行い、将来的に解読ができることを見込んで、暗号化されたデータを収集する動きがあるという。その対策として「耐量子計算機暗号(PQC)」によるセキュリティ強化が期待されている。
環境に溶け込むインテリジェンス
ガートナーは「環境に溶け込むインテリジェンス」も新しいコンピューティングとして挙げている。これは、小売店などで、製品のタグに内蔵されたセンサーを用いて、顧客の行動に基づいた照明、音楽などの自動調整を行うものや、医療分野でウェアラブルデバイスなしで患者をモニタリングし、異常があった際はすぐに通知するといった内容だ。
エネルギー効率の高いコンピューティング
一方で量子コンピューティングの実用化やAIのさらなる高性能化に伴い、電力の消費量も大きくなり得る。環境に優しい業務システムの構築のためには「消費電力が大幅に抑えられるコンピューティング」の登場も期待される。
このコンピューティングを実現するためのテクノロジーとして複数の処理方法を組み合わせた「ハイブリッドなコンピューティング・パラダイム」も最新トレンドとして挙げられている。
人間とマシンの相乗効果
三つ目は「人間とマシンの相乗効果」のカテゴリーだ。
空間コンピューティング
AR(拡張現実)、MR(複合現実)などで、没入型のデジタル環境(空間コンピューティング)が注目されている。同技術は3D環境でのリモート会議や、現実を再現した状況でのシミュレーション、デジタルツインを実現している。
グローバルインフォメーション社が発表した「空間コンピューティングの世界市場(2025年~2032年)」によると、空間コンピューティングの市場は、2024年の約933億ドルから2032年には約5,115億ドルに成長することが予測されている。
多機能型スマート・ロボット
また製造業や流通での人手不足、人件費の高騰から「多機能型スマート・ロボット」も普及が進むとされている。倉庫でのピッキング、運搬など複数のタスクを行うほか、遠隔地、危険な場所での作業を人間に代わって行うことも期待されている。
神経系との融合
人間の脳を読み込むことができる「神経系との融合」も研究が進んでいる。ガートナーは、2030年までにIT部門の従業員の30%は、双方向型ブレイン・マシン・インタフェース(BBMI)などの技術で強化されると予測している。この技術を用いることで、学生向けの教材のパーソナライズ化や研修期間の短縮を実現できる。
次の技術トレンドの普及に備えてビジネスチャンスを探る

ガートナーが提唱するトレンドは、今後20年前後で実現するとされるテクノロジーが多い。しかし、生成AIが登場してから急速に普及している例からも、今から最新テクノロジーの動向を把握し、ビジネスチャンスを探っていきたい。