流通・小売業

小売業の課題はAIで解決!
実際の活用事例と合わせて解説

掲載日:2025/04/22

小売業の課題はAIで解決! 実際の活用事例と合わせて解説

情報通信総合研究所が実施した2024年11月の調査によると、「卸売業、小売業」の生成AIの導入・利用率は13.4%だった。30%前後の利用率がある「情報通信業」や 「金融・保険業」と比較するとまだまだ小売業でのAI活用は進んでいないことがわかる。そこで、国内の小売業界が抱える問題に対し、どのようにAIを活用できるのかを解説する。

先送りできない課題にこそAIを

昨今は物価上昇や人手不足などによって業界を問わず、非常に苦しい時期を迎えている。中でも小売業は長引く不景気やコロナ禍などの影響もあり、中長期で経営課題を抱えている事業者が多い。

「どうすればより商品が売れるのか」という悩みは、小売業界において永遠の課題だろう。近年の物価高騰による消費者の購買意欲の低下や、エネルギー価格の上昇による運営コストの増大などを踏まえると、この課題への難易度は年々高まっていると言える。

今後の小売業においては、変化する消費者の需要をこれまで以上に見極めていくことが不可欠となるだろう。

また、人手不足によって業務が回らず、需要分析を進める余裕がないという企業も多いはずだ。ここに「働き方改革関連法」の影響もあり、少ない人的資産でのやりくりが求められていることも状況の悪化に拍車をかけている。

小売業でのAI活用事例

AIの導入はこうした小売業の現状への有効な対応策となりうる。実際に小売業においてAIを導入し、課題解決をした事例を見ていこう。

仕入れの属人化を防止し本当の需要を分析する

九州地方を中心にホームセンターを展開するある企業では、AIを使用した販売数予測システムを導入し、仕入れ量の最適化に取り組んだ。同社が活用するAI予測システムの精度は非常に高く、取り扱う園芸用品の販売実績などのデータを分析して予測させたところ、98%の精度が得られたという。

また、AIによる仕入れ品のランク付けシステムを取り入れ、担当者の経験に依存しない判断基準を設けることに成功。さらに過去の販売実績や気象データをシステムに学習させることで、店舗の状況に即した施策の展開を実現している。

同社がAIのシステムを導入した背景には、在庫の過不足の防止、仕入れ作業の効率化などの課題を抱えていたことがある。従来は、仕入れ管理を各店舗の売り場責任者が担当しており、属人的な経験則による発注が多かったため、本来はより需要があった商品の商機を逃す場面が散見されていた。これらのAIシステムの導入によって極めて高いレベルの需要分析を実現したことで課題解決を達成。今後は活用範囲を拡大していくとのことだ。

広報戦略にAIを活用し時間とコストの両方を効率化

アパレル用品を販売するある大手企業は、商品の広告にAIが生成した実在しない人物をモデルに起用したことで注目を集めている。同社が起用する架空のモデルは、SNSでの情報発信に活用されているほか、新店舗の開店告知ポスターにも登場して存在感を発揮している。

同社はAIが生成した架空のモデルを起用するメリットについて、実在のモデルと異なりスケジュール調整や撮影に時間がかからないこと、移り変わりの早いファッショントレンドへの迅速な対応が可能であることを挙げている。

同モデルは2025年1月にとある県の警察の「サイバーセキュリティ広報大使」を委嘱されたことも発表されており、今後も注目を集めることが予想される。

接客に集中できる環境を目指す

AIは小売業界が抱えるさまざまな課題解決に大きな貢献をしてくれることが期待される。その一方で、小売業にとって不可欠な業務である接客は、AIでサポートすることは困難で、事例もあまり見当たらない。

AIには日常における事務的な業務や分析を担当させ、従業員が接客という代替できない業務に専念する環境を整えることが今後の小売業のスタイルとなっていくだろう。顧客との触れ合いを重視する企業こそ、AIを導入する効果は大きいと言える。