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持続可能な社会の実現に寄与するグリーンコンピューティングとは

掲載日:2025/06/03

持続可能な社会の実現に寄与するグリーンコンピューティングとは

ICTの活用により環境負荷の低減を目指す「グリーンコンピューティング(グリーンIT)」。環境問題への意識の高まりも背景に、昨今世界中で重要視されている考え方だ。本稿では企業がグリーンコンピューティングに取り組むメリットや実際の取り組み事例などを見ていこう。

グリーンコンピューティングとは

「グリーンコンピューティング」は「グリーンIT」とも呼ばれ、コンピュータ含むICTの活用によって環境への負荷を減らす取り組みのことを指す。この考え方は「ITのグリーン化(Green of IT)」と「ITによるグリーン化(Green by IT)」に大別される。

まず、「ITのグリーン化」とは、IT機器・ITシステム自体の消費電力を削減する取り組みを指し、IT機器導入によって消費電力を抑えることなどが該当する。

一方で「ITによるグリーン化」は、IT機器・ITシステムを活用して環境の負荷を減らす取り組みを指し、Web会議システムを活用したテレワークや文書管理システム導入によるペーパーレス化などが挙げられる。

これらを総括し、「テクノロジーによって実現する環境に優しい取り組み」の総称がグリーンコンピューティングであると認識しておいて相違はない。

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グリーンコンピューティングが求められる背景

グリーンコンピューティングは環境保全に寄与する取り組みであり、SDGsに基づく持続可能な社会の実現に不可欠な考え方だ。加えて、昨今はサステナビリティへの関心が高まっている。そのため環境への配慮に意識を向けられていない企業は、ブランド価値の毀損(きそん)や消費者から選ばれなくなるリスクがより一層高まっている。つまりグリーンコンピューティングは地球環境だけでなく、自社の存続に関わる取り組みと言える。

グリーンコンピューティングに取り組む二つのメリット

グリーンコンピューティングに取り組むメリットとして次の二つが挙げられる。

電気料金を削減できる

サーバーの仮想化や省エネ性能の高い製品へのリプレースを実現することで、消費電力の抑制につながり、結果的に電気料金を削減することができる可能性がある。

とはいえ、新たな製品・サービスの導入コストは一定量発生する。しかし、短期的なコストよりも電気料金削減、後述するブランド価値の向上というメリットの方が、中長期的に見た際の影響は大きいとも判断できる。

ブランド価値の向上

家電メーカーのパナソニックが2023年に行った購買行動の調査によると、15~24歳のZ世代では、82.5%が、環境や社会に配慮している製品・サービスを取り入れたいとの意向があることが判明した。このことからもグリーンコンピューティングを通じて、サステナブルにも取り組む企業であるとの印象を与えることは、年齢が若い層にも有効なブランディングであると言える。

グリーンコンピューティングの取り組み事例

最後に、グリーンコンピューティングの取り組みとして、IT機器・ITシステムを活用して環境の負荷を減らす「ITによるグリーン化」の事例を二つ紹介する。

空調制御システムの導入によって省エネを実現

エネルギー使用量の削減に取り組むある特別養護老人ホームでは、省エネ効果のある空調機器を導入。導入後3カ月で、空調の消費電力量について導入前から約26%の削減を実現した。

機器を提供するメーカーによると、一般的な事務所における消費電力の割合は、約半分が空調設備となっている。そのため空調設備の省エネ化は非常に効果が大きい。

自社のCO2排出量を可視化することで削減に向けて前進

ある警備サービスを提供する会社では、自社のCO2排出量の削減にあたり、2022年12月よりCO2排出量を可視化するクラウドサービスを導入した。以前は専門部署がCO2排出量を算定していたが、作業負担が大きく、精度にも課題があった。

同システム導入後は、電気・ガスなどの請求書をアップロードするだけでCO2排出量の算定が可能になった。同社にとってCO2排出量の正確な把握は、社内全体のCO2排出量削減の機運を高める大きな一歩となっている

グリーンコンピューティングの推進でDXとサステナブルを実現

グリーンコンピューティングは環境に優しい取り組みの一つであるが、実際には企業のイメージアップやDXの推進にもつながる可能性がある重要な取り組みだ。「ITによるグリーン化」は規模が大きく、実行まで一定の時間と準備が必要だが、「ITのグリーン化」は環境に配慮したIT機器やシステムの導入を通じて実現するので敷居も低い。自社のクライアントには、「ITのグリーン化」を契機に製品を薦めてみるのも良いだろう。

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